橿原神宮では、さい銭箱脇の石畳にも液体の痕が残っていた=奈良県橿原市で2016年11月21日午後5時47分、塩路佳子撮影
興福寺(奈良市)で国宝の仏像などに液体が付着していた事件で、現地調査した文化庁の担当者は21日、液体は甘い臭いのする油状で、まき散らすようにかけられていたことを明らかにした。一方、新たに橿原神宮(奈良県橿原市)と東大寺(奈良市)でも液体がかけられる被害が判明。県警は成分を分析するなどして関連を調べている。
興福寺や文化庁によると、被害に遭ったのは境内の国宝館と東金堂に置かれていた中国唐代の楽器「銅造華原磬(どうぞうかげんけい)」(国宝)や「木造千手観音菩薩(ぼさつ)立像」(同)など計6件。華原磬は本体に液体が付着していたため修復することになった。国宝館と東金堂は22日から拝観を再開する。
寺によると、国宝館には防犯カメラが16台、東金堂には2台設置されている。拝観ルートと仏像などは1メートル程度離れており、県警は不審な動きをする人物が映っていないか調べている。
橿原神宮では21日午前8時40分ごろ、関係者がさい銭箱などに液体がかけられているのに気付いた。20日午後6時半ごろに警備員が巡回した際は異状はなかったという。神社側は取材に「油のような液体で甘い臭いがした」と説明。県警は絵馬を掛ける柱や鳥居、石灯籠(とうろう)など計8カ所で液体を確認し、器物損壊容疑で捜査を始めた。
東大寺でも21日午前11時40分ごろ、大仏殿内の巨大な金属製花瓶(けびょう)などで液体の痕が見つかり、県警が採取した。
奈良県内では昨年、橿原神宮や東大寺、長谷寺など19寺社が油のような液体をかけられる被害を受け、一部寺社の液体については甘い臭いが確認されていた。この時期に奈良県内を訪れていた形跡がある米国在住の宗教団体幹部の男(54)について、千葉県警が昨年4月、同県の香取神宮に液体をまいた建造物損壊容疑で逮捕状を取ったが、男は帰国せず逮捕に至っていない。【皆木成実、郡悠介、塩路佳子】