カメラマンはWEBマーケティングができないと仕事が失くなるのではないか
現在カメラマンをやっている、写真で稼ぎたいならこれからはWEBの時代。少なくとも私の仕事で撮影した写真をWEBに使用しないということはなくなりました。
日本の写真の仕事にも慣れてきて、多くのカメラマンさんと意見交換する機会が多くなりました。彼らと話していると、これからフリーカメラマンの仕事内容が大きく変わっていくと感じています。
その中で強く感じたのはBtoBにおいて写真が撮れるだけのカメラマンは通用しなくなるということです。これからは写真を使ってクライアントの利益に貢献するマーケティング能力が必要になってきます。
私自身は山岳写真が専門でクライアントがほとんど外国の企業さんなので安定していますが、色々な縁があり旅館撮影・料理撮影・観光などを写真撮影で支援しています。その中で感じたカメラマンの仕事のあり方の変化をまとめます。
この記事の目次
写真の上手い下手は関係ない。利益を出す写真を撮れるかどうか。
プロとアマチュアの明確な線引ができるクオリティの分かれ目です。ぶっちゃけてしまうと綺麗な・美しい写真を撮るならプロではなくアマチュアを雇った方がコストパフォーマンスが高いです。
それほど今のアマチュアのカメラマンのレベルは高いです。【自分の好きな写真を撮る】という技術に特化しているためマッチングすればお互いに幸せになれます。
クライアント目線でいい写真を撮り、利益に貢献できる技術があるのがプロカメラマンです。この技術とマインドを持っていることがフリーカメラマンとして生計を立てるスタートラインです。
利益の出せる写真って何?
では利益を出す写真を撮影する技術とはどういうものなのか。例を出してみます。
たとえば料理撮影ならばライティングよりもレイアウトが重視されます。会席料理は業界として配置ルールがあり、遵守すると見た目のインパクトが欠けるため写真撮影専用に不向きです。
売上で年間数億円を出すようなところだと、業界ルールに固執して出された料理をそのまま撮ってしまうと、料理目当ての宿泊客の減少につながります。
自分の中に美的意識や業界のルールを一切考えずに「第三者が見て行きたい / 買いたいと思える写真か」という撮影ができるのが利益を出すための技術です。
以前はここまでがプロカメラマンとして生計を立てるためのスキルととマインドセットだと感じていましたが、それも通用しなくなってきていると考えを改めました。
その写真、紙媒体への広告に使用すると思っていますか?
「お客さんをたくさん呼べる写真が撮れた」と、そこで満足するカメラマンは将来的に仕事がなくなるかもしれません。その写真を使用した集客方法が以前とはまったく異なるからです。
インターネットが普及する前は、広告費を支払い紙媒体への入稿が基本でした。よってリーチ数(読者数)が安定していたためカメラマンは写真の良し悪しだけでクライアントからの評価を受けることができました。
それも終わりを迎えようとしています。
プロカメラマンが撮影したその写真、誰が見るの?
紙媒体の出版数・発行部数は減り、一般ユーザーはまずWEBでの情報収集をする時代です。マーケティングの基本であるAIDMAの法則の最初、Attention(興味を引く)はほぼWEB上で行われます。
このことから大手企業から飲食店、宿泊施設に至るまでWEBサイトを運営しています。
目的はユーザーに閲覧してもらい集客する、つまりは売上を出すことです。そのためにFacebook、Twitter、ブログ、Instagram、様々なメディアを使用するのが今の集客のスタンダードです。
印刷媒体売上が減りWEBでの情報収集が増え続ける限り、「お客さんをたくさん呼べる写真」だけでは売上が落ち続けます。なぜなら誰もその写真にたどり着くことがないからです。
WEB掲載に最適化した写真撮影していますか?
Instagramの画像は5:4の比率になり、一眼レフでの撮影ではベストな構図を作ることができません。
手間がかかりますが、キチンと撮影しレタッチした写真をスマホに取り込んで日常的に投稿すればブランディングと集客に結びつく良策だと思います。
私の身近な旅館業を例に上げると、楽天トラベルのサムネイルは1:1の正方形フォーマットです。宿泊施設一覧で表示されるものですから、ここで写真をよい構図でまとめることは売上に直結します。
このようにWEB上で訴求力のある写真を撮る技術がこれからのカメラマンには必要になります。これが今の時代のプロカメラマンが撮影すべき「利益を出す写真」の1例です。
その写真、どのように使えば売上が上がるか考えていますか?
「写真を撮るのが自分の仕事」という軸は大事です。しかしそれだけにこだわり、自分の撮影した写真がどのような反響・影響をもたらすかに無頓着であることはクライアントからの信頼を損ねる可能性があります。
最終的にどのような利用をされるのかがわからないため撮影自体のパフォーマンスも低下します。
写真を使った集客方法
今回のポイント
- パンフレットやメニュー作成
- WEBサイト運営
- ブログやSNS運営
企業経営しているならば誰もがやるべきとまず候補にあがるものではないでしょうか。すべてにプロカメラマンの撮影した写真を使うべきコンテンツです。
この領域にカメラマンが踏み込むかどうか、専門外として他に任せるか。それが今後のカメラマンのキャリアに深く関係してくると思っています。
私は踏み込んで写真を使ったディレクションを行えるべきと考えています。
中小企業のWEB運営は集客に結びつきにくい
クライアントがカメラマンに撮影を依頼するということは、写真を使って利益を出すことを目的としています。
WEBと写真撮影の関係
- 利益を出すために写真撮影を依頼する
- 撮影した写真はWEBで使用する
- WEBサイトで利益が出なければ写真撮影する意味がない
中小企業にとって紙媒体の広告は負担が大きく、WEBでの集客にシフトしている現在はこのようなロジックになります。つまりどれだけいい写真をとってもWEB運営が失敗すれば利益を出すことは難しくなります。
地方に行くほど傾向が強くなります。私が普段いる岐阜の山奥で自社WEBサイトで集客出来ているところは皆無といってもいいくらいです。
理由は2つ。
個人経営に近い中小企業では成果が出るWEBマーケティングを専門会社に依頼する予算がないこと。WEBサイトは作っておけばたくさんの人に見られ成果が出るはずと勘違いしていること。
結果としてこのような状況になります。
写真が良くてもWEBで集客できないケース
- WEBサイトをとりあえず立ち上げるだけで中身がない。
- SEOも弱く店名以外のワードでは検索にひっかからない
- ブログはただの日記で誰得な内容になっている
- イベント告知はいいね50もないFacebookで充分だと思っている。
昔の認識があるため写真はプロという考え方は根強いです。よって本人からしてみれば「プロに撮ってもらった写真でWEB掲載してるのにお客さんこない!」ということでカメラマンの評価が悪くなります。
カメラマンはWEBマーケティングとセットの時代へ
予算が潤沢な大きい会社ならば写真撮影・WEBデザイン・マーケティングは完全分業です。この構図が崩れることはないでしょう。
しかし個人経営に近い企業や売上が低迷して広告費が捻出できないクライアントと向かい合うことの多いフリーランスのカメラマンは、売上を上げるために求められるスキルは増えていくと思います。
ただ写真が上手いだけのカメラマンはプロ・アマチュアで飽和状態なので、その中から【売上を出せるカメラマン】が選ばれます。
必然的にカメラマンは写真を使った集客方法に精通する必要が出てきます。それがWEBデザインなのか、DTPなのか、マーケティングなのか、すべてをフォローできるゼネラリストなのかは、その人の特性次第です。
そういった意味で個人で集客力もありブランディングも出来ているブロガー兼フォトグラファーは強いと思います。アフィリエイトで実績を出している人ならば、本職のマーケターレベルのコンテンツ制作もできるかもしれません。
カメラマンがWEB制作の領域に踏み込む場合は、WEBデザインやマーケティングの中での写真の立ち位置を理解した方が心が穏やかになります。
WEBで使うその写真、ただの販促素材です。
WEBマーケティング・デザインにおいて写真はただの素材です。WEBサイトもSNSも更新がないとユーザーが離れることから、どれだけいい写真をとってもすぐ消費されます。集客においてはギョーカイのセンセーの渾身の一枚を額に飾っておいても意味がありません。
そう考えると20カット10000円みたいな撮影枚数を決めての撮影も変えていく必要がありそうです。SNSやブログの更新で使うならクオリティは低くても数百枚撮影して毎日ポストした方が売上があがるかもしれません。
WEBで使うその写真、無料素材の代替品です。
普通のWEB制作現場の感覚だと、ぱくたそなどの無料素材で使える素材が見つからなかった場合、初めてカメラマンに撮影をお願いすることになります。
無料素材として配布されている被写体を撮っている限り収益を見込むことは難しいです。これからフリー素材のバリエーションは増えてくでしょうから、多くのカメラマンは無料素材の代替品になります。
その状況の中でカメラマンが仕事を得るためには、料理単品よりも会席料理、建物の外見よりも室内写真など、誰でも撮れるわけではない写真撮影と何かを組み合わせて、クライアントの利益になるオリジナリティがないと仕事が安定しなくなると思われます。
フリーのカメラマンは自身のWEBで集客できているのかを問われる
「いい写真を使ってWEBで集客しましょう」と営業したときに「ではあなたのWEBサイトはどのくらいの集客力があるの?」と返されときの答えが必要になります。
今でも多くのカメラマンがブログやSNSを利用して情報発信をしていますが、自分のメディアのみで集客して生計を立てている人は一握りだと思われます。
プロのカメラマンが自分の写真を使用してWEBで集客が出来なければ、クライアントの利益をWEBで上げることは難しいでしょう。
これからのフリーカメラマンには求められるスキルなので自身のブランディングや発信力の強化、WEBマーケティングの勉強しておいた方が生き残れる可能性は高くなります。
【写真が撮れるだけのカメラマン】の中で戦っても単純にパイの奪い合いになるので、どんどん価値がなくなっていきます。
専門分野に特化する、独自のスキルセットでクライアントにとって価値のあるコンテンツを作るなどキャリアを見直すことも必要になりそうです。
その中で現実的なのが写真撮影とクライアント利益を直結させるWEBマーケティングスキルであると感じています。
カメラマンはWEBマーケティングやデザインの勉強をしておいて損はない
私は本業カメラマンとしてはかなりWEBやデザインに強い部類だと思います。
その経験からPhotoshopやIllustratorを使い数十分で作成できるちょっとしたPOPやA4チラシがとても重宝され、以降の撮影をいただくというケースが増えています。
現在ではほぼすべてのクライアントさんがDTPやWEB、マーケティングとセットで仕事をもらっています。
企業勤めでカメラマン+WEBデザイナーのスキルセットの需要は少なく、大きい企業やBtoCならば写真撮影技術のみで問題ないと思いますが、フリーランスでBtoBを視野にいれているならばWEBやデザインスキルがあると受注できる案件が広がります。
私に限っていえば「WEBのことを相談できる」という理由が契約のクロージングになることが多いです。
自分の写真撮影の受注の傾向や、多くのフリーランスのフォトグラファーさんの仕事の仕方を見て、これからのフリーカメラマンは写真が上手いだけだと仕事が失くなるのではと感じています。
マーケティングは勉強する機会があまりないので「マーケティングってなんぞや?」っていう方はテックアカデミーのWebマーケティングコース無料説明動画などを見てみると分かりやすいと思います。写真をどのように使えばWEBで集客できるのか想像できるのではないでしょうか。