”Sleeping beauty” 邦題は「眠れる森の美女」として有名なヨーロッパの古い童話で、ディズニーアニメ不朽の名作としても知られている。
誰もがよく知るストーリーは、王子様のキスで眠っているお姫様が目を覚ますという話だが、たぶん、お姫様は寝たふりをして相手を見定めていると思う。
アンニョイな午後。2週間以上前から愛する嫁は風邪をひいたと言って、昼も夜も寝続けている。まさに”Sleeping beauty”、眠れる森の嫁である。ワタクシが見る限りものすごく元気そうなのだが、恋の病か何かなのだろう。
そんな嫁にべっとりの娘氏は、不満が募って不機嫌の餓鬼と化している。ワタクシと一緒に風呂に入るのも嫌がってグズって手に負えない。父のとっておき、グズラのマネをしながら娘氏を捕獲したところ、凶器の言葉が飛び出した。
「お父さん、クサイ!」× 10回
突然の田辺ミッチェル五郎扱い。ワタクシは狼狽した。早かった。せめて9年と31日くらいの猶予が与えられているものだと思っていたが、4年足らずで娘からクサイことを指摘された。
確かにニンニクたっぷりの肉を食ったし、タバコを吸って安いウィスキーを柿ピーをアテにして流し込んで、なんだか腹が減ったからシメにスープヌードルを食べた。そもそもワキがクサイ。生まれつきなのでしょうがない。
人の身体的な特徴を捉えて、指摘することは差別や偏見を生む。決してしてはイケナイことだ。
娘氏にどのように伝えればいいのか?父のニオイは、近親交配を避けるために遺伝子に組み込まれているからクサイと感じるんだよ!とブコメの便所の落書きのようなことを伝えても理解できるハズもない。
ワタクシは、激しく落ち込み間違えて名著「利己的な遺伝子」を手に取りそうになったが、グッとこらえてD・カーネギー先生の名著「人を動かす」を手に取り、答えを探した。
人を非難するかわりに、相手を理解するよう努めようではないか。どういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。そのほうがよほど得策でもあり、また、おもしろくもある。そうすれば、同情、寛容、好意も、おのずと生まれ出てくる。
「人を動かす」32ページより引用
なるほど。ワタクシはブログを書いている時点で、娘氏がクサイを連発するに至った理由をわかっていたことに気が付いた。嫁が寝腐っていて甘えられないから、自分に注目してほしかっただけなのだ。
危うく娘氏を叱りつけるところだった。ちゃんと娘氏とたっぷり遊んであげれば、真実であってもクサイを連発することもなかっただろう。そもそも、クサくなった原因は自分にあるのだ。
ちなみに引用した文章の前に、「父は忘れる」という美文が紹介されている。息子を叱りつけてばかりいた父が、ハッと自分の愚かな行為に不安になって懺悔する話である。子供がまだ小さい赤ちゃんであるということを忘れて、叱りつけてばかりのパパは読んでみることをオススメする。
問題は、風邪のフリをして寝てばかりいる眠り姫ならぬ、眠り嫁である。彼女を子供と見なして心の中を理解するよう努めると、家事がしたくないだけだと思われる。それは既知の案件であり、もはや手立ては尽して茨姫ならぬ、茨嫁として扱うことにしている。そのことはもういい。忘れよう。
スヤスヤ眠る娘氏のほっぺにキスをして、彼女がまだ小さな子供であることだけは忘れないようにしよう。それだけで十分だ。嫁を愛していることを父は忘れやすくなったが、娘を愛していることを忘れたことはないのだから。
そういえば、嫁さんがやたら眠たくなるとアレだということを忘れていたが、まさか、まさかね。