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「禁酒法」に「発想はISと同じだ」と批判

イラク北部アルビルで、ビールやウイスキーを扱う酒屋に来店した客ら=秋山信一撮影

法案可決 クルド人や少数派のキリスト教徒ら

 イラク連邦議会で10月にイスラム政党の主導で「禁酒法」案が可決されたことが、少数民族クルド人や少数派のキリスト教徒らの反発を招いている。過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦がヤマ場を迎える中、クルド人らは「少数派の権利を侵害するような発想はISと同じだ」と非難。法施行を阻止するため、連邦裁判所に「違憲だ」と訴え出た。【アルビル(イラク北部)で秋山信一】

 「禁酒などばかげた考えだ。ここでは皆が文句を言っている」。クルド人自治区の中心都市アルビルで今月13日、酒屋店員のイドリス・シモンさん(35)は語気を強めた。シモンさんはISから「悪魔崇拝者」として弾圧を受けた宗教的少数派のヤジディー教徒で、「宗教解釈を一方的に社会全体に押しつける手法は、まるでISのようだ」とイスラム政党を非難した。

 イラクは人口の約6割がイスラム教シーア派で約2割がスンニ派。「禁酒法」制定の動きは飲酒が禁じられている隣国のイスラム教シーア派国家イランの影響による政策だとの見方もあり、別の酒屋を経営する男性(37)は「(イラク戦争後の)シーア派主導の政府はイランの言いなりだ」と断じた。法律が施行されても、クルド人自治区は適用除外になる見通しだが、男性は「自治区外での商売は難しくなる」と言う。

 イラクメディアによると、10月下旬、地方自治関連法案に酒類の販売や製造を禁じる条文が急きょ盛り込まれ、直後に議会で賛成多数で可決された。シーア、スンニ両派の議員の多くが賛成し、クルド人(人口の約15%)や、キリスト教徒の議員らは押し切られた。

 飲酒はイスラム教では禁忌とされ、イスラム系の議員には宗教心の強い有権者の支持拡大につなげたい思惑があったとみられる。だが、イスラム教徒であっても世俗色の強いクルド人や、赤ワインを「キリストの血」とみなすキリスト教徒らは反発。イラクは伝統的に世俗色が強く、ビールや蒸留酒を製造する企業もあるため、イスラム教徒からも「個人の信仰の問題で法律で規制すべきではない」との声が出ている。

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