これまでの放送

2016年11月18日(金)

グローバルGAP 取得めざす生産者たち

阿部
「“食”に関する動きです。」

和久田
「こちら、『GAP』。
服のブランドを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、『Good Agricultural Practice』の略称で、直訳すると“良い農業の実践”という意味の農産物の国際的な認証を表す言葉なんです。

農産物の品質だけでなく、農薬の使い方、土壌や水質などの環境、それに農場で働く人の安全など、生産に関わるあらゆる工程を第三者が審査したうえで一定の基準に適合していることを認めるものです。
安全安心が保証される1つの基準として、世界で広がり始めています。

 

東京オリンピック・パラリンピックの選手村などで提供される食材についても、こうした基準が必要なのではないかと議論されています。



 

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
顧問 三國清三さん
「選手ですから、安全安心なものを提供することが1つの定義としてある。
4年後までにいろいろなことを準備していかなければいけない。」
 

阿部
「このGAPはどういう機関が審査するかによって、いくつか種類がありますが、中でも、ヨーロッパを中心に124か国に広がっているのが『グローバルGAP』と呼ばれる認証制度です。
日本でも将来、輸出を目指す生産者の間で、この認証を取得する動きが起きています。」

グローバルGAP 輸出をめざす

熊本県でレンコンを栽培する農業生産法人です。
自分たちのレンコンを国内にとどまらず世界に輸出したいと、2年前、グローバルGAPを取得しました。

社長の川上大介さんです。
グローバルGAPの基準に合わせることで、生産工程の管理がより徹底されたと言います。


 

これまで、疑問を持たずに使ってきた地下水。
水質検査が義務づけられました。



 

カワカミ 社長 川上大介さん
「生のまま口に入れる人がいるかもしれないということで、洗う水まで検査しなければいけないのかと驚いた。」

以前は出荷の数が中心だった作業記録。
いつ、どの畑で、誰がどのような作業をしたのか、記録するようになりました。

カワカミ 社長 川上大介さん
「事故があった場合に原因の責任の所在を明確化するためです。」

作業場での従業員の規則も徹底しました。
異物混入を防ぐため、帽子は義務化。



 

害虫やネズミの侵入リスクを減らすため、飲食の禁止も徹底しました。




 

カワカミ 社長 川上大介さん
「教育訓練記録表というのがある。」

こうした従業員への教育は必ず記録し、年に1度、審査を受ける際に提出が求められます。

川上さんがグローバルGAPを取得しようと思ったのは3年前、海外への視察がきっかけでした。
これまで、自分たち生産者の情報を公開することで安全安心を訴えてきましたが、それだけでは通用しないと感じたのです。

カワカミ 社長 川上大介さん
「(グローバルGAPの取得は)世界では当たり前の取り組み。
あらかじめ僕は取っておくべきものだと思う。
輸出に向け、がんばっている最中です。」

 

しかし、グローバルGAPの取得は簡単ではありません。
取得するための審査項目が200以上あり、更新のための審査が毎年行われるからです。

グローバルGAP取得 高校生が支援

こうした中、青森県では取得を目指す生産者を後押ししようと若い世代が動きだしました。
その名も「五所川原農林高校 グローバルGAPチーム」。
メンバーは農業高校の生徒17人です。
去年(2015年)、彼らは高校のりんご畑で認証を取得しました。

りんごの輸出に力を入れる青森県。
現在の主要な輸出先の台湾と香港では、GAPの取得は求められていませんが、ほかの国にも販路を拡大したいと考えています。


 

高校生たちは自分たちでも取得できることを証明することで、地元の生産者にも興味をもってもらいたいと考えたのです。



 

「生産者が簡単にグローバルGAPを取ることはできないか」。
今年(2016年)、生徒たちはグローバルGAPを取得した経験を生かして、「取得支援ソフト」の開発に乗り出しました。
大手電機メーカーと共同で行っています。

このソフトでは、審査項目を一つ一つ動画を使って解説。
認証取得までの手順について簡単に学ぶことができます。



 

例えば、こちらの項目。
「農場の場所を参照する仕組みが確立しているか」。
これだと何を要求されているのかわかりづらいという声がありました。
ソフトで見てみると…。

“畑の地図を作成してください”

畑の地図が求められていることがわかります。
教科書のように順番に進めていくだけで、必要な書類がすべてそろう仕組みになっています。

 

生徒
「こういうのがあれば、作業をどこから手をつければいいのか分かりやすくていいかなと思う。」


 

開発には生産者も協力しています。
この日、実際にソフトを体験してもらいました。
生産者の意見を踏まえ、ソフトは改良が続けられていく予定です。


 

生徒
「周りの人にも(グローバルGAPを)取ってもらいたい。
始めるときに、どのように始めればいいか分かりやすくなるので、GAPを取るきっかけにもなるんじゃないかと思う。」

農産物 認証制度 GAPの効果

和久田
「農林水産省では、輸出面だけでなく、生産者が生産工程の効率化を進めるうえでも有効だとして、こうした認証制度の普及を図りたい考えです。」

農林水産省 生産局農業環境対策課 栗原眞さん
「自分たちの取り組みのレベルをあげていくという意味で、GAPの取り組みは効果があったという方が多い。
よい農産物を出荷していくことができる手段として大事なGAPですから、ぜひ今後とも国として推進をしていきたい。」