News Up うまくいっていないの? 凍土壁の疑問にお答えします

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東京電力福島第一原子力発電所で計画が進められている「凍土壁」。原子炉建屋を囲むように地下に凍った土の壁を作るという前例のないプロジェクトですが、完成が近づく中で、なかなか効果がはっきりしないという事態に直面しています。21日には、実際にうまく凍結しているのか、地面を掘って確認が行われましたが、ネットでは「まだやってたのか凍土壁・・・」といった驚きの声が上がっています。巨額の税金を投じた汚染水対策の“切り札”の行方を注視していくうえで、知っておくべきことをQ&Aでまとめました。
A:「凍土壁」は、福島第一原発で大きな課題となっている汚染水への抜本的な対策と位置づけられています。福島第一原発では、事故から5年半余りがたった今も、溶け落ちた核燃料を冷やすため水を注入し続けています。この水が高濃度の汚染水となって格納容器の壊れた場所から建屋の地下などに流れ出して、たまっています。

現場では、これをくみ上げて再び冷却水として使っていますが、それ以外に、建屋には山側から地下水が流れ込むため、汚染水が増え続けています。敷地内には、汚染水をためるタンクがおよそ1000基建ち並び、管理が大きな負担となっています。このため、地下水を建屋の手前で遮り、汚染水の増加を防ぐことが凍土壁の狙いです。

Q:凍土壁って、そもそも何?

A:「凍土壁」は、福島第一原発で大きな課題となっている汚染水への抜本的な対策と位置づけられています。福島第一原発では、事故から5年半余りがたった今も、溶け落ちた核燃料を冷やすため水を注入し続けています。この水が高濃度の汚染水となって格納容器の壊れた場所から建屋の地下などに流れ出して、たまっています。

現場では、これをくみ上げて再び冷却水として使っていますが、それ以外に、建屋には山側から地下水が流れ込むため、汚染水が増え続けています。敷地内には、汚染水をためるタンクがおよそ1000基建ち並び、管理が大きな負担となっています。このため、地下水を建屋の手前で遮り、汚染水の増加を防ぐことが凍土壁の狙いです。

Q:どんな仕組みなの?

A:現在、「凍結管」と呼ばれる鋼鉄のパイプが、1号機から4号機の建屋全体を囲むように地下30メートルの深さまで打ち込まれています。凍結管は1メートル間隔で、およそ1700本。その中にマイナス30度の冷却液を流して土壌を凍らせる仕組みです。

東京電力は、凍土壁が完成すれば、総延長1.5キロもの巨大な氷の壁が地中にできあがり、ほかの対策の効果も合わせると、建屋に流れ込む地下水の量を計画当初の1日400トンから100トン程度まで抑えられるとしています。

おととし6月から建設が進められ、もともとは昨年度中に凍結が完了する計画でしたが、建屋の周囲で行われていた別の作業の影響などで工事が中断し、計画より大幅に遅れています。

Q:うまくいっていないの?

A:凍結管を打ち込む工事が終わって、実際に凍結を始めたのは、ことしの3月末。全体を一気に凍らせると、建屋の周囲の地下水位が建屋内の汚染水の水位を下回ってしまい、逆に汚染水が地下水側に漏れ出すおそれがあるため、作業は慎重に進められました。まず海側の壁から凍結を徐々に始め、地下水の水位や温度の変化を監視しながら山側の壁についても凍結を進めてきました。また、一部に温度が下がりにくい場所があり、地盤にセメントを流し込む追加の工事が行われるなど、試行錯誤が繰り返されました。その結果、東京電力によりますと、半年後の9月時点で、地中の温度が氷点下になって凍ったと見られる範囲が海側の壁で99%、山側では92%に達しています。

一方で、肝心なのは凍ったかどうかではなく、実際に地下水をせき止める効果が現れているかどうかです。そこで気になるのは、建屋に流れ込む地下水量の変化ですが、凍結の開始以来、おおむね1日200トン前後で推移し、明らかに減ったとは言えません。東京電力は「山側の壁の一部凍っていない場所から勢いよく地下水が流れ込んでいると見られる」と話しています。

さらに、完全に凍ったとしても、本当に地下水を遮る効果があるのか、疑問を抱かせるデータもあります。東京電力は、ほぼ完全に凍ったと見られる海側の壁の遮水効果について、護岸付近でくみ上げている地下水の量で評価するとしています。もし山側から流れてくる地下水が凍土壁でせき止められていれば、壁よりも海側に位置する護岸付近では地下水量が減るはずだからです。その場合、くみ上げ量は1日70トン程度に抑えられると見られています。ところが、東京電力によりますと、実際のくみ上げ量は雨などの影響を除くと、おおむね1日200トン前後で推移し、効果が十分に上がっていません。

Q:なぜコンクリート壁じゃないの?

A:ネット上では「コンクリート壁でいいじゃん」とか、「いま博多(の道路陥没現場)で使ってる水の中でも固まるセメント流し込めば終わったんじゃねぇの」といった疑問の声が散見されます。これについては、コンクリートや鉄板の巨大な壁を地中に設けた場合、何らかのトラブルが起きた時に後戻りできないことなどから、議論の末、凍結をやめれば現状復帰できるという理由で、凍土壁が採用されたという経緯があります。

Q:費用はどのぐらい?

A:凍土壁は、3年前に汚染水の問題がタンクからの漏えいなどで深刻化したことを受け、政府が対策の基本方針をまとめた際、その柱として盛り込まれました。東京電力と大手ゼネコンの鹿島建設が建設し、345億円の費用はすべて国が負担する、つまり、税金でまかなわれています。さらに、凍結に伴う電気代や設備の点検費など、1年間の運用経費は10数億円となる見通しで、こちらは東京電力が負担する、つまり、電気料金から支払われることになっています。

Q:今後どうなるの?

A:まだ山側の凍結管のうち5%には、冷却液が流されていないため、東京電力は今後、地下水を遮る効果を慎重に見極めるなどしたうえで、原子力規制委員会の認可を得て凍結を完成させたいとしています。

一方で、規制委員会は、凍土壁の効果の見極めに時間がかかるなか、敷地内の「サブドレン」と呼ばれる井戸で地下水をくみ上げて、建屋への流入量を減らす対策を強化するよう、東京電力に指示しています。これを受け、東京電力は「凍土壁だけでなく、サブドレン強化も検討し、重層的な取り組みによって1日も早く汚染水の増加を阻止したい」と話しています。