家具屋に就職
警察官をクビになった後、地元で「家具屋」を数店舗経営している会社に就職が決まりました。
もう就職出来ないんじゃないか?って思うくらい就活は地獄の日々でした。
なにせ面接に行けば必ず「で、なんで警察辞めたの?」と聞かれるからです。
「無能過ぎてクビになりました!」とも言えないので・・。
「公務員よりも、利益を求める民間企業の方がやりがいがあると思いました」っていうペラッペラに薄い話で誤魔化してました。
もちろん面接官の人にはバレバレだったので、どこへ行っても即お断りをされてしまいました。
なので特に就職先を選んだわけではなく、唯一受かったのがこの家具屋さんだったのです^q^
しかしこの家具屋も約1年後に倒産する事になります・・・。
家具屋のウラの顔
仕事はとにかく楽しかった!家具磨き!家具の生理!配送!
いつも異常なほどニッコニコで仕事をしてたので「何がそんなに楽しいの?」とよく周りから苦笑いされました。笑
入社して3ヶ月ほどたったある日、マネージャーから突然「あるマンションに行って金になるものを全部回収してきてくれ」と言われました。
付け加えて「家具屋の会社名を名乗らず「◯◯」という別の会社名を名乗るように」とだけ言われました。
なんかヤバそう・・・と思いつつ。
急いでトラックに乗って、そのマンションに向かいます。
部屋から漂う「死の香り」
管理人さんに挨拶を済ませて部屋に入ると、スグにその部屋が「普通の部屋ではない」事に気付かされます。
部屋に入ると生暖かい空気に混じる「異臭」
冷蔵庫周辺にわく「ウジ虫」
そして床にある何かの「シミ」
ここは誰かが死んだ部屋なんじゃないか?と気づくのに時間はかかりませんでした。
理解した瞬間、頭が真っ白になった・・・・。
しかし!
新入社員の私は「とにかく仕事をしなければ!」と恐怖心より使命感が勝り、金目のモノを探し始めます。
金目のモノは?
お金になりそうなモノとは
- 貴金属
- 電化製品
- 家具・家電
- 骨董品・美術品
などがそうですが・・貴金属などが残っている可能性はまずありません!
私が入る前に「誰かが死体を掃除して、お金になりそうなモノは殆ど持っていってしまっている」からです。
だから私も部屋中を一生懸命探索しなければ、お宝を見つける事は出来ないのです。
お宝回発見!!!!
いくら探しても、部屋には何も残されていません。
でも、よくよく部屋を見渡してみると・・価値のあるモノがありました!
「巨大な冷蔵庫」です!
冷蔵庫に詳しくはないが、これが高価な冷蔵庫だという事はひと目でわかりました。(ウジ虫を排除すれば)
これならマネージャーも喜ぶだろう!
しかし、ここで大きな問題に気が付きます。
コレをどうやって運び出すのか?
私はたった一人で来ているのです。
応援も呼べませんし、後からここに来る事もできません。
しかも次の配送があるので、残り時間は30分程になっていました。
ヤバイ!!
でも絶対に手ぶらで帰るわけにはいきません!
どうしよう・・・。
そもそもなんで新人が一人できたのか?
実は私が一人で来たのは、同僚が相次いで辞めてしまったからなのです。
- A君は上司を殴って失踪
- B君は会社の金庫とレジからお金を盗んで解雇
- C先輩は会社の家具を横領して警察送りに
B君は19歳で僕とほぼ同期でしたが、入社2ヶ月ほどで会社の金を100万近く盗んだそうです。
ですが「まだ若い」という事で盗んだお金の返済と解雇という温情判決で済んだようです。(元気にしているだろうか・・。)
しかしC先輩(役職有)は長年会社の家具をコッソリ他の業者に売りさばいていた、という事で「あまりにも悪質」となり警察に突き出されたそうです。
ヤンチャな人が多かったんですねぇ・・・。
そんなワケで会社は超が付く程の人手不足だったのです!
閃いた!!!!
次の配送までの時間がドンドン迫っていました。
パニックになりながら急いでトラックまで戻ると、トラックには「家具を保護する毛布」が山ほど積まれていました。
おおぉこれだああぁあああああ!
※実際に声にだしたので完全に不審者でした。
急いで部屋に戻ると
- 床に毛布を敷き
- 重たい冷蔵庫を少しズラす
- 冷蔵庫をズラして毛布の上に載せる
- そして毛布をズルズル引っ張ると・・・・
動く!!!!!!
もうこの時ばかりは自分が天才なんじゃないかと錯覚した。
そして誰もいない(人が死んだ)部屋でドヤ顔しながら毛布と冷蔵庫をずるずる引っ張って、何とか玄関から冷蔵庫を出した。
やりきった・・。
外に出れば「台車」に載せて運べばいい・・・・あっ!
階段はどうしよう!?
ここは3階でエレベーターも無かったのです。
魔の階段
階段を見た時は「終わった・・・」と絶望的な状況に放心状態になりました。
どう考えても巨大な冷蔵庫を3階から一人で階段から下ろすのは「不可能」に思えました。
いやいける!やれるぞ!
もう追い込まれすぎてテンションがハイになってきました。
またトラックに走って戻り、大量の毛布を持ってきました。
そして階段に毛布を敷き詰めて階段を滑り台にしたのです。
冷蔵庫を斜めにしてゆっくりゆっくり滑らせます・・・・。
スルスル・・・。
冷蔵庫がみるみるうちに階段を降りていきます!
やった!!
これを何度も繰り返して、何とか下まで冷蔵庫を降ろすことが出来ました。
もう死体の部屋がどうとかは完全に忘れていました。
ハッピーエンド?
会社に戻ると本部の部長とマネージャーが出迎えてくれました。
持ってきた冷蔵庫を見せると「やるなぁ!」「これを一人で持ってきたのか?」と部長さんもマネージャーも目を丸くして驚いてくれました。
しかし、これを期に本格的に「死後清掃会社」の人間として働くことになってしまうのです・・・。