世界トップ8によるエリート大会「バークレイズATPワールドツアー・ファイナルズ」(イギリス・ロンドン/賞金総額750万ドル/室内ハードコート)第7日のシングルス決勝で、世界ランキング1位のアンディ・マレー(イギリス)が同2位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を6-3 6-4で破り、初優勝を飾った。
マレーがジョコビッチとの頂上決戦を制して大会初制覇 [ATPファイナルズ]
マレーは今年の最終ランク1位が確定した。11月28日付で昨年のデビスカップ・ワールドグループ決勝で獲得した275ポイントが失効するが、それを差し引いてもジョコビッチを上回る。マレーが1位でシーズンを終えるのは初めて。
最終ランク1位は過去12年間、ジョコビッチ、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)の3選手が独占してきた。それ以外の選手が1位になるのは2003年のアンディ・ロディック(アメリカ)以来、13年ぶりとなる。
マレーは9月のデビスカップ・ワールドグループ、イギリス対アルゼンチン戦でフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れて以来、24連勝と自己最長を更新した。
決勝は現ナンバーワンと前ナンバーワンによる頂上決戦となった。ATPファイナルズがランキングポイントの対象になった1990年以降、上位2選手が決勝で対決し、勝者が最終ランク1位となるのは初のケースだった。
序盤から両者が持ち味のしぶとさを発揮して緊迫したラリーが続いたが、第1セット中盤からジョコビッチにミスが目立ち始めた。マレーは4-3から相手のサービスゲームをブレーク、そのまま押しきった。安定したバックハンドと角度をつけたフォアハンドの逆クロスで揺さぶり、ジョコビッチのミスを誘った。このセットでのジョコビッチのアンフォーストエラーは11本にのぼり、そのうち8本がバックハンドだった。
第2セットはマレーが2度のブレークで4-1と先行。ジョコビッチに一度ブレークバックを許したが、主導権を譲らなかった。
ジョコビッチのアンフォーストエラーは2セットで30本に達した。今大会は一戦ごとに調子を上げたが、勢いのあるマレーの前に彼らしくない粗さの目立つ試合となった。
ジョコビッチは「自分のプレーが振るわなかったのが一番。バックハンドで多くのエラーをしてしまった。アンディは精神的に強く、ショット選択も正しかった。どのラリーでも一本多く返してきた。彼が勝つべき試合だった」と完敗を認めた。
マレーは「ノバクは最高の出来だったとは言えない。お互い、ミスも出た」としながら、「十分、安定した試合ができた。戦術的にうまく運べたと思う。間違いなく、いいパフォーマンスだった。そうでなければノバクのような選手を制することはできない」と振り返った。
一方で、長年のライバル、ジョコビッチを蹴落として最終ランク1位に就いたついたことは特に意識していないという。
「彼が成し遂げたことを僕はとてもリスペクトしている。たかだか数ヵ月、彼の調子が落ちて、僕がたくさん勝てただけのこと。ただ、今日は僕のほうが安定していたし、自信を持ってプレーできた。これまでの対戦とは逆だった。ランキングより、そこが今までとの違いではないか」
新王者は謙虚に言葉を選んだ。努力をモットーとする彼に限って、ランキング1位となっても慢心はありえない。男子テニスの頂点をめぐる二人のバトルは、これからも続くはずだ。
(テニスマガジン/ライター◎秋山英宏)
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