生まれたての赤ちゃんは言葉が話せないので、ママが話しかけても理解できないだろうと考えている人は少なくありません。
しかし、心理学などの研究結果から、ママの話しかけに対してジェスチャー(身振り)で反応することが分かっており、こうした現象はエントレインメントと呼ばれています。
この記事では、エントレインメントの概要と引き出し方、生理的微笑や社会的微笑との違いについて紹介します。
エントレインメント(母子共感、母子相互作用)とは
エントレインメントとは、新生児期(乳児期)のママと赤ちゃんの相互作用(同調現象)を表す言葉です。
代表的なエントレインメントは、ママの話しかけ(音声言語)に対して、新生児の表情や身振り手振りといった身体の動き(行動言語)のリズムが引き込まれるように同調することが挙げられます。
また、新生児が、おなかの中で聞き慣れたママの声を聴くと安心したり、ママが、新生児の声を聴くと母乳の出が良くなったりする現象も、エントレインメントと呼ばれています。
後者の場合、赤ちゃんの欲求(情動表出)はママに伝わり、ママは赤ちゃんの欲求(情動表出)に対して同調すること(情動調律)で、適切に対応できると考えられています。
このように、ママの言葉のリズムと赤ちゃんの身体のリズムを同調させることで、ママと赤ちゃんの間に特別な相互作用が生じるのです。
英語表記はentrainmentで、辞書では「引き込み」や「同調作用」と訳されていますが、心理学用語としては母子共感、母子相互作用と訳されます。
エントレインメントは、新生児期(乳児期)の赤ちゃんとママの、最も基本的な情緒的相互交流であり、情報共有の方法でもあります。
エントレインメントを引き出す方法
エントレインメントは、赤ちゃんが生まれながらに持っている能力ですが、自然に起こるのを待つだけでなく、ママの関わりしだいでより引き出すことができます。
ポイントは、赤ちゃんにたくさん話しかけることです。
赤ちゃんが起きている時に、やさしい声で、ゆっくりと、ささやくように話しかけてあげましょう。
抑揚、リズム、ピッチなどが重要だという指摘もありますが、ママが穏やかな気持ちで赤ちゃんに話しかければ、自然に赤ちゃんのエントレインメントを引き出すことができるという考え方が一般的です。
エントレインメントと生理的微笑、社会的微笑
エントレインメントと混同されやすい現象に、生理的微笑と社会的微笑があります。
生理的微笑とは
生理的微笑とは、新生児期~生後1ヶ月頃の赤ちゃんが見せる無意識のほほ笑みです。
生まれたての頃から、赤ちゃんの感情や気分とは無関係に起こる現象で、学習されたほほ笑みとは区別されています。
新生児微笑、自発的微笑と呼ばれることもあります。
社会的微笑とは
社会的微笑とは、抱っこしたりあやしたりした時に赤ちゃんが見せるほほ笑みのことです。
赤ちゃんは、生まれたての頃は無意識に笑うことがあります(生理的微笑)が、生後2ヶ月前後から、周囲の刺激に反応してほほ笑む(社会的微笑)ようになります。
社会的微笑は、自分の感情を自覚して意識的に微笑んでいるわけではありませんが、周囲の刺激に反応しているという点で、社会性の芽生えとして重要な意味を持っています。
エントレインメントと生理的微笑、社会的微笑の違い
エントレインメントは、ママと赤ちゃんの間に起こる音声言語と身体言語の同調現象です。
一方で、生理的微笑は、無意識に起こる現象で相手を選びません。
社会的微笑も、パパママなど身近な人に対して起こりやすい傾向はありますが、パパママに限定されているわけではありませんし、抱っこやあやすことなど音声言語以外に反応して起こることもあります。
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まとめ
エントレインメントは、ママと赤ちゃんの間に起こる相互作用(同調現象)です。
赤ちゃんとのコミュニケーション方法として、ベビーサインなどがたくさん開発されていますが、そうしたテクニックがなくても、赤ちゃんは生まれたての頃からしっかりママと相互交流する術を身につけているのです。