• 郷祭1016

【郷祭】ミュージッククリップ

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/11/01 22:00
完成日
2016/11/15 00:15

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ここは同盟領、農耕推進地ジェオルジまで続く道中の宿場町。
「やぁ~れやれ。ようやく酒にありつける」
「ディレクター、ここの酒場は撮っとかなくていいんですか?」
「どうせ撮るなら移民先の酒場でいいよ」
 ドヤドヤと酒場にリアルブルー人と思しき集団がやって来た。
「あ……おい、しぃっ!」
 先頭の一人が店内の様子に気付き後続を黙らせた。
「おい、何だ……」
「騒がせてすまない」
 後続で不満を漏らす者もいたがすぐに黙った。
「あら、いいのよ。黙らせる技量がないならそれだけ。誰かが諭すこともないのなら、やっぱりそれだけ」
 入口近くの席に座っていた化粧の濃い女性が不敵に微笑む。
 店内には郷愁を誘う物悲しげな曲が流れていた。
 旋律は緩やかに。
 響きは優しく。
「名のあるバンドかい?」
「名前で満足してもらってないの。演奏で満足してもらってるバンドよ」
 聞かれた女性、変わらず不敵。
 やがて、最後の余韻を残し終演。大きな――いや、もう一曲ねだるようなリズムのある拍手が店内を満たした。
 これにカウンターの店員が指を一つ立て、化粧の濃い女性にウインクした。
 女性、艷やかな笑みを浮かべ指を鳴らした。実際の音は拍手に飲まれているが、勝ち誇ったように伸ばした腕が雄弁に思いを伝えている。
 それを見たバンドリーダーが仲間と頷きあう。店内から喜びの拍手が一瞬響くとすぐにピタリとやんだ。
 そして、今度は弾むようなメロディーが流れ始める――。

「私はシェイク。プロモーターよ。演奏していた楽団「シェイクス」と一緒に郷祭に向かってるところ」
 んふ、と頬杖を付くオカマ興行師のシェイクが満足そうに言う。先ほどの化粧の濃い女性だ。
「俺たちはサルバトーレ・ロッソの撮影班だ。アンタと同じで郷祭に向かっている」
 先の一団の一人が撮影カメラを構える格好をして返す。
「ああ、映画だかテレビだかいうのがあるんだっけ?」
 シェイクスの演奏はすでに好評の内に幕を閉じ、酒場の客はまた好き好きに飲んでいる。
 楽しそうで和やかな雰囲気の中、ディレクターは深いため息をつく。
「そんな高尚なもんじゃないよ。報告映像の撮影に来たのさ」
「報告映像?」
「そ。昨年、ロッソの民間人をこの地に降ろして同盟と協力して定住促進したんだが、その後の彼らの生活や定住した土地の様子をレポートしなくちゃならんのさ」
 サルバトーレ・ロッソが歪虚との激しい戦闘に参戦し、その前に艦内の民間人を移民させたのはちょうど一年前の郷祭のころだった。新たな村を起こした例もあれば、移民を機に新たな村づくりをしたケースもある。
「そ、そ。俺たちゃ悲しい映像班。楽しい祭りも寂しく仕事、ってね」
「もちろん、映画だかテレビだかみたいな仕事もしたいんだがねぇ」
 撮影スタッフたちは自嘲気味に酒をちびりとすする。愚痴ってはいるが腐り切ってはいない。楽しくはないが仕事に対してはプライドがある、といった雰囲気だけはまとい続けている。
 ただ、シェイクはそんな人生を良しとしない。このあたり、プロモーターである。
「あら、それじゃその報告映像、楽しいものにしちゃえばいいじゃない」
「そうはいかねぇよ」
「楽しい祭りを映すのに?」
「祭りはあくまで移民者たちの様子や土地の雰囲気を伝えるために撮るだけさ」
「じゃ、祭りそのものも別に一本撮っちゃえばいいじゃない。生きのいい、元気な子たちを紹介してあげるわよ?」
 シェイクの言葉にピンと来た者もいる。
「なるほど。ミュージッククリップか……」
「おまけのお遊びなら撮ってもいいかな」
「こっちの音楽をロッソに伝える、ってのも面白いな」
「民生部分が激減して艦内の楽しみも少なくなってきてるし……ちょうどいい!」
 野心に瞳を輝かす者、意気に感じて酒を飲み干す者、楽しい悪戯ができるとあってうきうきする者、そして使命に感じ立ち上がる者。
「よし、やろう!」
 こうしてロッソ撮影班の内の一組が、郷祭を背景に歌い祭りの準備をしたり日々の生活を送る様子を伝えるミュージッククリップの製作に乗り出すのだった。

 そんなわけで、シェイクのプロモートするフラ・キャンディ(kz0121)と一緒に出演し歌って踊りつつ郷祭準備期間の雰囲気を伝える映像作品に出演してくれる人、求ム。

プレイング

ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
人間(蒼)|21才|女性|猟撃士


リラ・ゼーレ……まだその名前を使ってくれているのね。
紅と蒼が混ざり合った、その魂の色音。健在だと言うのは幸せなことね。

事前
あたしは…そうね、その土地の自然風景を散策したりして、良い場所を
ロケ班に伝えておいたりしよう…かしらね。
あとは時間帯に因る、その場所の変化とかも分かれば素敵、かもしれないわ。

曲調
当該地の歌や童謡のアレンジがあるとその土地の気質も滲み出るかしら。
曲調を拝借して、崩し過ぎない程度にアレンジを掛けた上で前奏や間奏、後奏に
使うのが良い、かしら。その際は元歌の歌詞をコーラス風にしても良いかも、ね。

歌詞(サビのみ。プレの齟齬がある場合、そちらを優先
---
高く…何処までも高く
遠く…何処までも遠く
優しく吹く風に混じる
優しい人々の囁き
聴こえるでしょう、アナタの心にも
聴こえるでしょう、アナタの魂にも
遥けきこの地はいつまでも
いつまでもアナタと共に…
---


アド/絡み可
称号希望
霧雨 悠月(ka4130
人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
【行動】
ミュージッククリップ作り。うーん、わくわくする。
出演って聞くとちょっぴり気恥ずかしいけど、いつも通りやれば良いんだよね。
まずは僕達もこの土地のことを知らないとね。
リラゼーレとして歌と踊りに参加しながら、積極的にお祭りやこの土地のことを聞き込みしちゃうよ。
途中で綺麗な風景を見つけたら、取っておきたいかなぁ。
あ、あとはやっぱり年代物な建物や場所とかね。僕、そういうのも好きなんだ。
やっぱり年月を重ねたものって、感じられるものがあるっていうか。
映像としても、凄くわかりやすいものになるんじゃないかな。
あとは元気いっぱいに演じるだけだよ。歌ならもちろん皆で気持ちよくなれるように、気持ちを込めてね!

…美味しいものには女性陣が飛びつきそう。フラさん、キーリさんあたりとか。や、僕も好きだけど。
食べ物がおいしい季節だし、僕もこの時期いっぱい食べて…背を伸ばしちゃうからね。見ててよっ
あぁ、でも食べすぎ注意だよ。このあとの演奏に響いちゃうかもしれないからね?

映像シーンにいれる歌や曲も、場面に合わせて変えていけばいいんじゃないかな。
しんみりとする場所は落ち着いた曲を、お祭りの映像ならノリのいいのとか。
と…僕も歌は歌いたいな。ちょっぴり踊ってみたい気持ちもあるけど。
この土地のイメージを大切にして伝えたいね。
キーリ(ka4642
エルフ|13才|女性|魔術師
ふむーん、良いわね。凄く良いわ。とうとう映像作品に出られるのね。

張り切っちゃうわねー。ふっふーん。
虎視眈々と私の知名度を広めていくのよ。
勿論リラ・ゼーレの名前もね。ほらフラっちもアピールアピール。

【行動】
さて、どうせ下調べするなら私は自然を見て回ろうかな。エルフだし(屋台で買い食いしながら
撮影ポイントとかあれば良いわねー。
民話やら童謡とかに関連ある場所なら演奏に組み込めたり出来るのだけれど。
ロケやミュージッククリップの雰囲気作りに【リトルファイア】は如何?

あ、私は踊る役ね。歌っても良いんだけど、せっかくの機会なら一番自信のあるダンスを、ね。
民族舞踏的なのじゃなくてポップなのが良いのかしら。
映像に求められてる方で良いけどね。私はどっちでもいけるわよ。

【撮影後】
あーまさか撮影ってこんなに難しいなんてねー。表情硬くなってなかった?大丈夫?
会場で踊るのとは全然違うのね。観客のリアクションが無い状況で淡々と踊るの苦手だわ。
凄いってリアルタイムで褒めて欲しい。歓声ぷりーず。

……ところで、ユッキー随分と落ち着いてたじゃない。
何?慣れてるの?アイドル活動でもしてたんじゃない?(ずずい

何にせよ慣れが必要よねー。ラジオとかやってみて棒読みになるタイプだったらちょっぴりショック。
アイドル的な存在として有名になる為の克服ポイントね。
大丈夫、きーりん辞書に不可能はないのよ。ふふん。

・絡み、アドリブ歓迎します
弓月・小太(ka4679
人間(紅)|10才|男性|猟撃士
・事前に街の様子を確認。
特産品や花を飾っている場所を覚えておきそこを撮影。
演奏会等も街の雰囲気を伝えられそうなら撮影し映像に残す。
小太は基本、街中を中心に映像になりそうな光景を探しそれを撮影するように。
「準備中という話ですけど、それでも結構活気がありますねぇ。ま、まずは映像に残せそうな場所を探す所からでしょうかぁ?」
「普段の町の人の生活する様子とか、そういうのでも映像に残すにはいい感じになるでしょうかぁ?あ、あまり演技してるのではなく、いつも通りの感じの方がいいですよねぇ?」

・映像のバックに流す音楽が必要なら楽器を持って参加。
楽器と踊りを中心に。歌は基本歌わない。恥ずかしいから、という理由らしい。
東方系の踊りや音楽があいそうな場合はメインでやるが、それ以外は皆のサポート。
「ぼ、僕の踊りや音楽があうなら頑張るのですよぉ。東方系の楽器とかしか使えないですけどもぉ(汗」
「う、歌うのは恥ずかしいのでぇっ」

・依頼後:フラを町の散策に誘ってみる。
屋台で特産品を食べつつ演奏でも見て回らないかと。
移動時はしっかりと手は握っておく。
「あ、フラさんっ。せっかくですし一緒に街を見てまわりませんかぁ?屋台とか食べられなかったですしぃ」
鞍馬 真(ka5819
人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
【心情】
こういうビデオの出演は記憶にある限りはじめてだから、何だか緊張するな…。

【行動】
土地の雰囲気を伝えるというコンセプトだから、主に特産品やそれを準備している人々をリサーチして撮影、出演したいかな。
その他にも映像班を連れて色々回り、良さそうな場面を色々撮影したい。最終的に編集で取捨選択するとしても、材料はいっぱいある方が良いだろう。
映像班とは合間に色々話したいな。私自身ロッソでの生活はよくわからないし、絵心が無くて撮影や編集も下手だから、仕事の話も聞いてみたい。
彼らの仕事は地味だろうけど、彼らにしかできない大切なことだ、ということをさりげなく伝えられたら良いな。

演奏する音楽は、この辺りの土地に童謡とか、土地の歌があればそれを皆で多少アレンジしたものが良いだろうか。
もしこの辺りに特徴的な服装や飾りがあったらそれらを身に付けてビデオに出ると、雰囲気が伝わり易いか。

私自身はフルートとバイオリンでの演奏主体で出演したい。
基本は伴奏で皆の歌や踊りを盛り上げたいかな。演奏しながら踊れそうだったら踊る。
まぁ、皆にはやりたいことをやってもらって、足りない部分を埋める感じで行こうと思う。

アドリブ絡み等大歓迎
アリア・セリウス(ka6424
人間(紅)|16才|女性|闘狩人
【心情】
映像として、流れる音も景色も残したい
あるいは行きかう人の声、笑顔、言葉さえも
そんな風に思える場所があるのなら、とても素敵ね

きっと、そんな場所を見向きもせず、ただ直走ることだけが……だなんて思っていた自分に笑ってしまうけれど

「とても良い機会ね。何もかも、感じて歌と紡ぎましょう」

祭りはこれから
そして、物語もまた途中

【行動】
私はまず村で、子供たちも知っているような、この周囲に伝わる歌を聞いて教わるわね
歌は元々は物語で、文字を書いたり読んだりできなくても、しっかりと子供たちに残しておきたい昔話や伝説、土地を伝え聞かせる為のもの

そこの風土や、昔あった出来事だとか、民話が歌になっていたとか
判れば歌った後に、映像の中でも解説できるよう

個人としてもメモしておいて、何か、何処かで活かせるように

また、私個人は酪農の草原のほうにいってみるわね?
本当は夜の風が好きなのだけれど、きっと心地よい風が、草を奏でるように撫でて、鳴らしている筈
ただゆっくりと、穏やかなハミングと共にその光景を取って、気になるものがあれば一度纏めて、色々な情報ばかりの映像ではなく、ゆったりと穏やかに休めるシーンも作ってしまいましょう

使えるかどうかより、私ならほしいだけ
そして、私ならどう思うかを、ただひたすら、感じて

【歌】
ただの、即興歌
使えるかは判らないけれど

風の中で声が流れる

きっと昔の夢

遠く、高く、月のように
優しい声が
今も私に

リプレイ本文


「え、ええと……クリムゾンウエストとリアルブルーが一緒になって、その魂をいつまでも、って気持ちを込めてますぅ」
 わた……と、身振りを交え弓月・小太(ka4679)が説明した。
 ここは農耕推進地ジェオルジ。郷祭の準備で忙しい村で借りたスタッフルーム。
「そういうこと。……ほら、フラっちもアピールアピール」
 小太の隣でキーリ(ka4642)がふっふーん、と得意げに胸を張ってからフラ・キャンディ(kz0121)を促した。
「え! ボクも? ええと……『リラ・ゼーレ』、よろしくね」
 フラ、突然振られてにこぱ笑顔。
「OK、リラ・ゼーレだな。画像編集した時にテロップ流すから、楽しみにな」
「てろっぷ?」
 スタッフがフラに笑顔を返したところで、キーリが問い質す。
「ああ、画面に文字を表示するんだ」
 リアルブルー出身の鞍馬 真(ka5819)が手短に説明した。もちろん、クリムゾンウエスト出身のキーリ、フラはいまいちピンとこない。
 これを見てケイ・R・シュトルツェ(ka0242)が座ったまま脚を組み替えくすと微笑した。
「じゃ、集音マイクとかも初めてね」
「しゅうおんまいく?」
 今度はフラが珍しそうに復唱。
「あれだね。ほかに撮影管理をするカチンコとかもあるみたい」
 リアルブルー出身の霧雨 悠月(ka4130)が、スタッフの掲げる長い柄のついたマイクを指差した。
「カメラくらいは分かるわよ?」
「さすが。簡単なのは出回ってるよね」
 むー、と口を出したキーリを悠月がとりなす。
「で、撮影時の歌は口パク?」
「まさか。本格的な編集スタジオなんてないから生の一発勝負。イケる?」
 挑戦的に聞いたケイに、肩をすくめるスタッフ。
「こっちじゃいつでも生の一発勝負よ」
 当然、と言わんばかりに立ち上がるケイ。
「映像……」
 その横に、アリア・セリウス(ka6424)。
「祭りは準備中という話ですけど、それでも結構活気がありますねぇ」
 小太はスタッフルームの窓から外の様子を覗いている。振り向いて、「ま、まずは映像に残せそうな場所を探す所からでしょうかぁ?」と皆に確認した。
「残す……映像に」
 アリア、小太の言葉に目を閉じ軽く天を仰いだ。
 自分の歌声、踊る姿。それが、町の活気と行きかう人の気配、笑顔、言葉さえも溶け込んで――。
「とても良い機会ね。何もかも、感じて歌と紡ぎましょう」
 目を開いて言う。やや微笑したのは、これまでただ直走っていた自分を思い返したのかもしれない。
「踊りも、だよね?」
 横でフラがにこり。
「演奏も、だな」
 その後ろに真が立つ。
「うーん、わくわくするね……ちょっぴり気恥ずかしいけど」
 悠月も軽く伸びをして準備完了。
「撮影は本部報告用の現地映像を取りつつ、だな。もっともリラ・ゼーレに使う時間の方が長くなるけど」
「あら、いいの?」
 スタッフの説明。ケイが気にする。
「事務的な仕事と芸術仕事の、当然の手間の取り方だ。退屈な事務的仕事を刺激的にしてくれて感謝したいくらいさ」
「それに、君たちの映像をどこで取るかとか、報告映像を取りつつ考えてもらえるだろ?」
 にやり、とスタッフたち。悪戯そうだ。
 これを受けてフラたちも悪戯そうな笑みで返した。
 気持ちが一つになった瞬間である。
「じゃ、行こう!」
 フラ、元気よく外に出る。



「まず最初はステージで。演奏組と歌唱組が手前と奥を入れ替わる手はずで。……テイクスタート!」
 映像監督の合図でカチンコが鳴る。集音マイクが高い位置から奥へと回される。
 最初の音はカスタネット。画面横からフラがカスタネットを叩きつつ軽やかに出で奥へ。続いてしゃんしゃんと神楽鈴を鳴らす小太が逆から続きやはり奥へステップ。最後にフルートの真がゆるかやに登場し、踊るように奥へ。
 前奏の後は、画面奥から悠月とケイが歩いて前に。出だし第一声を合わせる!


蒼い風に誘われて、流れ流れて見知らぬ世界
紅い夕日に立ちすくむ、君の瞳に夢を見る
二人引き合うリラ・ゼーレ、揺れる世界でしっかりと


 流れる「リラ・ゼーレのテーマ」。
 「流れ流れて」の部分で両脇からダンスのキーリとアリアがふわっとターンを決めつつ出てきて雰囲気づくり。キーリのリトルファイアが出たのはもちろん「紅い夕陽」の部分。「二人引き合う」で歌と踊りの二人組がポジションチェンジ。キーリと悠月、ケイとアリアの組を作り歌と踊りを左右対称で魅せる。小太の鈴、真のフルート、フラのカスタネットも盛り上げサビに。


居場所を探した二人の奇跡
一人じゃないよ、僕がいる


「カァット!」
 ここで監督から満足そうなストップの声。
「一発回答出してくれたな。実力で売ってるとか言うシェイクが勧めるだけある!」
「でも、これだけ?」
 フラ、物足りなさそうに聞いてみる。
「あくまで出だしのみ、だ。後は流れでいろんな場所で。この続きや、別の歌、な?」
 そんなこんなで場所移動する。



「へえっ。日系や中華系の移民は剣術道場とか立ち上げてんのか~」
「良し、ばっちり映したぜ!」
 どうやら、青竜紅刃流の門下生たちを映した様子だ。ロッソから移民して、東洋風の村づくりを手伝っている。
「ぼ、僕の踊りや音楽があうなら頑張るのですよぉ」
 ここで小太が立候補。もちろん「よし、頼む!」
 というわけで小太、和風を強調するため腰切と袴姿になる。
「小太さん、頑張って!」
 恋人のフラの応援を背に、しゃららら……と慣れた風に神楽鈴を連続で鳴らす。この風情は一朝一夕では出せない。そして木刀を手に、厳かに舞う。
「いいね。チクワを焼く様子も撮影したから合成して……」
「後から袴の道場門下生が増えただろ。文化が浸透する変化として使えるな」
 しゃん、しゃんと熱を帯び始める小太の舞を見つつ、作品の出来に思いをはせるスタッフ。
 その様子に、真が素朴な疑問を抱いた。
「なあ、そういったアイデアって、全部形になるんだろうか?」
 見ていても、全部入り切るとは思えなかった。
「悲しいが……それが俺らの仕事さ」
「使わない映像も、もちろんミスは許されないし全力だ」
「地味で、大変だな……」
 同情する真。これにスタッフに気に入られた。
「ありがとな」
「いや、せっかく一緒に仕事をするんだ。土地も知りたいが、仕事仲間のことも知っておきたい」
 真に言葉に、いい笑顔をするスタッフだった。
「分かってるじゃねぇか、兄ぃちゃん」
「あの少年もミスなく全力で、いい雰囲気を出してくれてるよ」
 スタッフたちは小太の舞を褒めて、お互いさまを強調するのだった。


 場所は変わって、軒に花の鉢を飾っているところで。
「リラ・ゼーレのポップな面?」
 え、と聞き返したキーリだが……。
「ふむーん、良いわね。凄く良いわ。花のある場所なんて。私、エルフだし」
「……いや、肉串を食べながら言われても……たれが頬についてるし」
 屋台で買い食いしていたところ振り向いたキーリに突っ込む悠月。
「舐め取っていいわよ?」
「いや、ちょっと……」
 ん、とほっぺを差し出すキーリだが、悠月はわしわしっとハンカチで拭う。
「ひっどい扱いね~。それより、こういう民話、知ってる?」
 キーリ、屋台で聞いた話を紡ぎ始める。
「森の奥の鬼女は嫉妬の鬼。毎年町に下りてはその年の祭で選ばれた一人の美女『花の花嫁』を襲って食っていましたとさ。やがて花の花嫁選びは途絶えたものの、今度は庭先に花がきれいに咲いた一軒を襲うようになって、今度は花も植えなくなったとさ」
 軒の鉢を渡る妖精のように躍ったと思えばエネルギッシュに踊り鬼女の悪行を表現したり。
「ある年、花の花嫁立候補者が出たようで。若い娘を周りが止めるも決意は固く、『だったら同じ綺麗な花で、町の全部を飾ればいいじゃない』……」
 キーリの、喜びと華やかさを表現するダンスが続く。


「あーまさか撮影ってこんなに難しいなんてねー。表情硬くなってなかった? 大丈夫?」
「キーリさん、表情硬いというかクールなんだから問題ないよ」
 心配から思わず屋台で買い食いするキーリに、付き合いで一緒に食べるフラが慰める。というか、慰めてないが。
「あによフラっち。そんなに私、ダメだった?」
「ち、違う違う。良かったよ……あれ?」
 ここで悠月の気配に気付くフラ。
「あ、フラさんは食べてて。キーリさんも」
 どうやら次は悠月が歌う番らしい。買い食いする女性二人を自然なままにしてほしいようで。
「そう?」
「悠月さん、何歌うの?」
 冷たいキーリにニコリと返すフラ。
「さっき結構聞き込んだんだ。……自然に、楽しく、元気いっぱいに。皆で気持ちよくなれるように、気持ちを込めてね!」
 悠月、インカムを装着し歌い出した!


君の、差し出す手の平 そこに、あるものは何?
勇気、それもあるけど 笑顔で立ち上がれるよ


 そこまで歌って少女たちに手を振り駆け出す悠月。スタッフも台車でカメラが走る。
 もちろん長くは持たないが、すぐにあるのは街の教会。
 伝統的な建物で、悠月の見上げる姿を追ってカメラが上にパンする。
「すまない」
 下では真が短剣で暴れていた。スタッフも一緒だ。
 おかげで、悠月の到着と同時に白いハトが空に舞った。

 万感の悠月と入れ替わり、そのまま真のバイオリン演奏。古い教会とマッチする伸びのある旋律が流れる。真は教会の衣装を借りてそれを着ている。
「今回は踊るよ」
 そこに、悠月がターンしてイン。場所のイメージを損なわないよう、通行人をイメージしたダンスを披露する。
 掃除をする人たちとともに、光と影の中、歴史を感じてもらうのに十分だった。



 そして、アリア。
「走れる? 一気に場面転換させる演出を入れたいんだ」
 スタッフからの要望に意外そうな顔を一瞬したが、無言で頷いた。
 走ることはある。
「祭りはこれから。……そして、物語もまた途中」
 自らと重ね合わせ、だれにも聞こえないように呟く。
「ふさわしい」
 今度はしっかりと言い切って顔を上げる。「テイク」の掛け声とカチンコの音が聞こえた。
 ――走る。
 草原を、町から離れるように。
 しかし、すぐに転んだ。
 草原に大の字に横たわる。
 そして呟くように歌うのだ。
 最初はハミングで。
 やがてはっきり分かるように。


すべてはヤギの言う通り
夫婦の喧嘩も明日の天気も
放したヤギの言う通り
ヤギの助言は何もなく
時だけ過ぎて明日になる
明日になれば全て良くなる


 民謡をひとくさり歌ったとこで、近くにヤギが。
 立ち上がり、改めて歌う。


風の中で声が流れる
きっといつかの昔の夢
遠く、高く、月のように……



 そして、ケイ。
 つば広の白い帽子を深くかぶっていた。紅を差した唇が、にこり。
「走った人を一瞬振り向いて、そして前を向いてゆっくりと散策するように歩いて」
 スタッフからは、アリアと逆になるような指示だった。
「夜も入れるといいかもしれないわ」
「分かった。後で撮って合成するようにしよう」
 どうやらケイ、場所の変化だけではなく時の変化もいれるつもりだ。
「明日になれば全て良くなる、希望を胸にすればことのほか……」
 ゆっくり散策しながら民謡を口ずさんだところで、川辺に出る。
 そこで、白い帽子を高々と投げ上げた。
 同時に歌い出す。


高く…何処までも高く
遠く…何処までも遠く
優しく吹く風に混じる
優しい人々の囁き……



「あ、フラさんっ。せっかくですし一緒に街を見てまわりませんかぁ? 屋台とか食べられなかったですしぃ」
 小太は自分のパートが済んだ後、フラを誘った。フラがキーリと買い食いしていたのは、内緒だ。
「うんっ。でも……」
 フラが言い淀んだのは、ちょうどケイとスタッフが戻って来たから。
「あ、いいよ。ちょうど町の人々が歌われるところだから」
 スタッフの説明に、フラも安心。
「じゃ……」
「あ」
 小太、自然にフラの手を取った。だんだん慣れてきたようで、最近はフラの方が少し恥じらい嬉しがっているようで。
「実は……さっきボクは食べたから小太さんに食べさせてあげるね」
「いいわね」
 睦まじい様子にケイも笑顔。が、すぐに真顔で歌い出す。


聴こえるでしょう、アナタの心にも
聴こえるでしょう、アナタの魂にも
遥けきこの地はいつまでも
いつまでもアナタと共に……


 街角に響くケイの歌声。
 スタッフは、祭りの準備をする人々の生き生きした顔を映していた。



 そして今日も夕暮れ。


ダンス・ダンス 知らない人も一緒に
ダンス・ダンス 同じリズムで一緒に
出てきて踊ろう ダンスカーニバル


 酒場で悠月が歌っている。
「頑張るわね、ユッキー」
「みんなノリがいいから気持ちいいでしょう」
 堰で見ながらキーリが感心する。横でアリアがとんとん、と指でリズムを取ってご機嫌だ。
「それより、感謝するわ」
「ん?」
 改めて言うケイに、真が視線を送る。
「リラ・ゼーレ。この名前、使っててくれてたのね」
「みんなで決めた名前だもん。ボクが一人ででも守るよ」
「フラさんは一人にさせませんよぅ」
 前のめりになりケイに力強く言うフラ。横で小太言葉を重ねる。
「いい名前だしな」
 真も言葉を添えた。ふうん、と横でアリア。
 ここで歌い終わった悠月が戻って来た。大きな拍手がわき起こっている。
「もうサイコーだね。祭りが近いからみんなノリがいいよ」
 どさっ、と脱力しつつ椅子に座る。
「よ、追加の撮影も終わったぜ」
 町に散っていた撮影スタッフもやって来た。
「できたの?」
 フラ、身を乗り出す。
「いや。編集はロッソに戻ってからだな。見てもらう機会がないのは申し訳ないんだが……」
「ちょっと」
 おっと、キーリが絡んできた。
「私のセリフとか、棒読みになってなかったでしょうね?」
 ぐぐい、とスタッフにガンつける。
「なってないなってない。つーか、民話のところは歌じゃなくて語りだろ? あんなもんだ」
「きっと大丈夫だよ、キーリさん」
 スタッフの説明に悠月が言葉を添えた。
 これに反応し、ぐりんと悠月の方を見るキーリ。ぎくりとする悠月。
「それよりユッキー、随分と落ち着いてたじゃない。何、慣れてるの? アイドル活動でもしてたんじゃない?」
「アイドルはキーリさんに譲っておくよ」
「……ならいいわ」
「な、納得してますぅ」
 キーリの手の平返しに小太が汗たら~。
「それよか、ありがとな。いい仕事ができたよ。ほれ、受け取ってくれ」
 撮影スタッフは荷物から「ツナ缶」を取り出してひょいひょいと投げて渡すのだった。
「いい仕事……もちろん」
 受け取ったアリアも、この周囲に伝わる歌を聞いてメモを取って理解した収穫もさることながら、風景と一体になって歌えたとの手ごたえから笑顔で頷いている。
「何よりだ」
 スタッフとの意思疎通に貢献した真も受け取り、にこやかだった。

 後の話になるが、ミュージッククリップはロッソ内で無料視聴され好評を博したという。

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MVP一覧

  • 幸せへの願い
    鞍馬 真ka5819

重体一覧

参加者一覧

  • 夢を魅せる歌姫
    ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • ロッソで話題シンガー
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 何かぱーふぇくつ
    キーリ(ka4642
    エルフ|13才|女性|魔術師
  • ベストフンドシスト
    弓月・小太(ka4679
    人間(紅)|10才|男性|猟撃士
  • 幸せへの願い
    鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 旋風舞踏
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談なのですよぉー
弓月・小太(ka4679
人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/11/01 00:20:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/01 00:11:16