元米中央軍司令官のジェームズ・マティス氏と会談するドナルド・トランプ米次期大統領=米ニュージャージー州で2016年11月19日、AP
【ワシントン西田進一郎】米国のドナルド・トランプ次期大統領は19日、東部ニュージャージー州にある自身所有のゴルフ場で、2012年大統領選の共和党候補ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事らと会談した。トランプ氏は既に閣僚級3ポストの指名を発表し、焦点は最重要ポストである国務長官と国防長官に移っている。ロムニー氏は国務長官候補であるうえ、党主流派の有力者で、主流派との融和ムードを印象づける狙いもある。
「米国の真に重大な国益が関わる世界のさまざまな状況について幅広く意見を交わした」。ロムニー氏はトランプ氏との約1時間半の会談後、記者団に語った。ただ、国務長官の打診を受けたのか、打診があれば受け入れるのかなどについては触れなかった。
ロムニー氏は党候補指名争い中の3月、トランプ氏を「いんちきな詐欺師だ」とし、「大統領にふさわしい気質も判断力もない」などと痛烈に批判。トランプ氏は「(ロムニー氏は)失敗した候補者だ」などと反論し、対立していた。会談には新政権の人事を加速化させるため、対立してきた党主流派との雪解けを演出する狙いもにじむ。ロムニー氏は会談への謝意を示し、「次期政権の政策運営に期待している」と話した。
トランプ政権の閣僚級人事は、大統領選から10日後にあたる18日に大統領補佐官(国家安全保障担当)▽司法長官▽中央情報局(CIA)長官--が発表された。08年の政権移行の際には、オバマ大統領は大統領選から20日後に経済閣僚を、27日後に外交・安全保障チームの閣僚らを発表。トランプ氏の移行チームには「内紛」が起きているとの見方が出ており、早期の閣僚人事で批判を封じたい考えとみられる。
米紙によると、焦点の国務長官候補にはロムニー氏に加え、ジョン・ボルトン元国連大使やルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長らが挙がっている。ただ、ボルトン氏は「ネオコン(新保守主義派)」の代表的論客で、トランプ氏が批判してきたブッシュ前政権のイラク戦争開戦では国務次官として関わった。これに対し、ジュリアーニ氏には外交経験がなく、いずれも決め手を欠く。
一方、トランプ氏はこの日、国防長官候補に取りざたされている元米中央軍司令官のジェームズ・マティス氏とも会談した。トランプ氏は声明で「過激派組織『イスラム国』(IS)や中東、北朝鮮や中国など国家安全保障について綿密な意見交換をした」と説明した。米メディアは、このほか元アフガニスタン駐留米軍司令官のデービッド・ペトレアス前CIA長官、トム・コットン上院議員らも検討されていると報じている。