厳しい財政事情が続く中、税金の浪費が相変わらず目立つ。
会計検査院が国の2015年度決算の検査報告をまとめた。無駄遣いや不適切な支出、回収すべき資金の未徴収などの総額は計455件、1兆2189億円に上った。
東日本大震災後、検査院は国民生活の安全や、防災関連の検査に力を入れている。減災につながるよう有意義に予算を活用すべきなのに、首をひねるような事案が散見される。
たとえば、災害時に住民に避難を呼びかけるため整備された防災行政無線事業で、15都道府県の27市区町で問題があった。
設備を置いた場所が耐震性に欠け破損する可能性があり、国の交付金約13億円が使われた819基が有効に機能しないおそれがあるという。
同様の事態は、原子力施設周辺の放射線量を常時監視するための計測・記録装置でも見られた。16道府県が、国の交付金約5億7200万円を使って整備したものの、サーバー(中央監視局)の設置場所の耐震性が7府県で不足していた。
関係自治体は検査院の指摘を受け補修に着手したが、何ともお粗末だ。特に放射線量の計測装置は、福島第1原発事故を受け、地震などの自然災害と原子力災害が複合した場合の適切な避難に役立てる目的で整備されたものだ。耐震性の確保は大前提のはずである。
日本は災害大国だ。防災施設の整備は、国民の命と安全に直結する。いざという時に機能するよう行政機関は最大限の注意を払うべきだ。
どんぶり勘定としか言いようがない支出もあった。
環境省は10年度に国内で開いた生物多様性条約を巡る会議で、式典運営などの業務を電通に請け負わせた。招致人数が当初計画より縮小したり、国外で行われるはずだった対談などの行事が国内で行われ旅費が不必要になったりしたにもかかわらず、環境省は契約変更しないまま全額を電通に支払った。過大支払いは2271万円に上った。
財政規律の重要性が長年指摘され続けているにもかかわらず、いいかげんな税金の使い方が一向に減らない。これでは増税を求めても、とても国民の理解は得られないだろう。
法律に従って予算が適切に支出されているのかチェックするのが検査院の一義的な役割だ。それだけでなく、検査院は、事業の効率的な運営や、支出の根拠となっている政策や制度の妥当性にも踏み込んで指摘する権限を持つ。
高齢化でふくらむ社会保障費を含め、検査院が洗い直すべき対象は多い。検査院は一層厳しい姿勢で検査に当たっていくべきだ。