2015年8月30日(日)
算数教育に関わりのない人は「等分除」「包含除」といわれても何のことかわからない人が多いだろう。数学者も多くは
「等分除」「包含除」ということばを知らない人が多いらしい。小学生を教えたことのある私はことばだけは知っていたが、
どうでもいいと思っていたので意識して教えることはしなかった。別にそれでよかったし、今もそう思う。
しかし、「等分除」「包含除」ということばをインターネットの検索サイトで調べてみると、いっぱいひっかかる。検索に引っか
かった学習指導案を見ると、その多くは「わり算で、等分除と包含除の違いを理解させる」とか「等分除と包含除の違いはわ
り算では重要で、この区別がわかって初めてわり算が理解できたことになる」とかいうことを書いている。こうした指導案を
見る度に
児童に無駄なことを教えるために、むだな時間を使っている
と思う。
以前にも書いたが、等分除・包含除という概念は、算数教育「学」が作ったもので、基礎数学ではないことばである。だから、
多くの数学者がこのことばを知らなくても不思議でない。
正の整数のわり算が初めて登場するのは、小学校3年生からである。等分除・包含除には、かけ算(小学校2年生で初めて登場
する)の順序が深く関わっている。3×4=12の式で
3(ひとつ分)×4(いくつ)=12(全部)
のみが唯一正しい順序であり、この順に式を書いた場合のみ正しいと考える算数教育「学」独自の考え方から、次のように説明される。
等分除・・・・(乗法)□×4=12に対して□(ひとつ分)を求めるわり算→□=12÷4=3
包含除・・・・(乗法)3×□=12に対して□(いくつ) を求めるわり算→□=12÷3=4
となる。3×4=12の式で3(ひとつ分)×4(いくつ)=12(全部)が唯一正しいと考えない私は、
わり算は、かけ算の逆演算であり、それに尽きる。わり算そのものに等分除と包含除の区別などない。
と考えている。算数教育「学」が作り上げた等分除と包含除という妖怪が、小学校の現場に広く流布している。そして、無駄な授業時間
を費やすのみならず、児童にどうでもいいことを教えようとしている。
『小学校学習指導要領解説 算数編』にも、責任がある。この本の編集協力者は、算数教育「学」で一応権威?をもっている人が
名を連ねている。ほぼ全部が算数教育「学」の主流派であり、かけ算の式は(ひとつ分)×(いくつ)=(全部)と書くことが唯一正しい
と信じてやまない人々ばかりだから仕方がない。そして、その正しさの根拠を基礎数学に求めるあほらしい人もいる。
小学校学習指導要領は、小学校3年生で習うわり算について、次のように書いている。
第3学年の内容 A(4)除法
(4)除法の意味について理解し、それを用いることができるようにする。
ア 除法が用いられる場合について知ること。(略)
イ 除法と乗法や減法との関係について理解すること。
(略)
『小学校学習指導要領解説 算数編』P95
私は、学習指導要領にある「わり算の意味」について、
「わり算の意味」は、かけ算の逆演算であり、それに尽きる
と解する。次の『小学校学習指導要領解説 算数編』にあるような「等分除」「包含除」などということばは不要であり、こんなことは
知る必要がないと思う。
少し長くなるが、『小学校学習指導要領解説 算数編』の関連部分を載せておこう。
文科省『小学校学習指導要領解説 算数編』P95~P96
『小学校学習指導要領解説 算数編』は、「等分除」「包含除」の区別をした上で、イの4行目から「どちらも同じ式で表すこと
ができることがわかるようにする」と述べている。しかし、わり算には教材提示の違いはあれ、「等分除」「包含除」の区別などないわけだから、
これらの区別を強調する必要がない。『小学校学習指導要領解説 算数編』のこの部分の執筆者は、暗に正しいかけ算の順序があると
思っているのだろう。そうでなければ、「等分除」「包含除」など、説明する必要がない。提示として
「12個のあめがあります。4人に同じように分けると、ひとりはいくつになるでしょう」
「12個のあめがあります。3個ずつ分けると何人に分けられますか」
と示せばいい。上の2つの問題は、「等分除」「包含除」と呼ばなければならいほど重要な違いでない。『小学校学習指導要領解説
算数編』にある記述が、多くの弊害を招いている。
たとえば、これによって小学校の算数授業では、指導案を見てわかることだが、多くが「等分除」「包含除」の区別の方に目が行っ
てしまっていて、その違いを強調するようなことが学習目標になっている場合が多い。大切なのは、「わり算はかけ算の逆演算である」ことである。
(注意)以前に書いたことをこちらにコピーして(重複するがあえて)、かけ算の順序についての私見を述べておこう。
2項演算の計算順序
2項演算 f:M×M→M a,b∈M f(a,b)=ab
のとき、aを先、bが後といったようにこの順に計算する。一般には、f(b,a)=ba と等しくない。
小学校の2年生に出てくる1桁の自然数×1桁の自然数(いわゆる乗法の九九)も2項演算である。したがって、3×5は定義した段
階では5×3と違う。しかし、自然数の乗法(N,×)は結合法則も交換法則も成り立つ。したがって、f(a,b)=f(b,a)、すなわち3×5=
5×3の交換法則が成立する。さらに、交換法則と結合法則を用いると、3×4×5のような場合もかける順序に依存しないことが証明され
る。そして、そのことは容易に理解できることである。
この2項演算、3×5が必然的に(1つ分)×(いくつ)を意味しているわけでない。
当然のことながら、(いくつ)×(1つ分)をも意味しない。また、(1つ分)(いくつ)の意味を持たせる必要性もないとも言える。
3×5に(1つ分)(いくつ)の意味を持たせた場合、私は次のように考える。
掛け算の順序否定とは、3×5を(1つ分)×(いくつ)と決めたときに乗法の導入をこの方法で進めることは問題でないが、交換
法則が指導された後はいつまでもこの(1つ分)×(いくつ)にこだわる必要がないと言うことである。また、前述したように、算数教育
「学」者の主流派の多くが主張する「式の順序として(1つ分)×(いくつ)が唯一正しく、数学的な根拠がある」との主張は、誤っている。
数学的根拠などない。算数教育「学」の理論の中で、勝手に根拠づけているだけである。
したがって、(ひとつ分)×(いくつ)が唯一が正しいことを前提とした除法の等分序・包含除の区別が除法にとって大切なことでなくて、
そのような場面でもわり算を使うということの指導のほうが大切であると思う。また数学的にも、等分序・包含除の概念は、不要である。
数学者松本幸夫氏が数学セミナーの今年2月号で指摘したとおりである。
念のために。
松本幸夫氏の「3×5vs5×3の問題」を読んで1 ~かけ算の順序に意味があるか?
松本幸夫氏の「3×5vs5×3の問題」を読んで2 ~等分除・包含除の区分の無意味さ
(追記)
1.昨日の一風景
昨日は、毎月一回通っている海津医師会病院へ午前中に向かった。直りそうにない持病であるから、仕方がない。血液検査・尿検査の
結果は、数値が7月の時よりも悪くなっていた。私は血圧はだいたい120前後で問題がないが、中性脂肪は減らしたい。
2.今日は大垣別院第16組の門徒会研修会、組会・門徒会合同の総会そして懇親会
浄土真宗大谷派の大垣別院第16組の門徒研修会が今日(30日)午前10時から、高須別院で行われる。昼食をはさんで、午後1時か
ら組会・門徒会総会、午後3時から大垣別院の所長巡回がおこなわれ、午後5時頃に終了する予定である。
一旦、家に戻ってから、送迎バスで隣町の養老町の料理屋で門徒会の懇親会が行われる会場に向かう。門徒会から補助があるので、会費
は2000円と高くない。
夏休み最後の日曜日、終日高須別院に缶詰状態。夜は、酒席。・・・・・
日数教と数教協、教育委員会と国教研、教科書会社と筑波潮流、
このことから、2つのことが明らかになる。
「掛算の順序」への疑問に端を発した算数教育への懐疑は、算数教育界主流派から1つの力とみなされている。
算数教育の妖怪を退治すべきときが既に来ている。
しかしまあ、
「発達段階を考慮して、最初は等分除と包含除を区別して後で統合する(つまり、「どちらも同じ割り算」ということは子供には分かりづらいから最初は区別して教える)」
というのと、
「子供は等分除と包含除を区別できない。だからこうやって工夫しましょう」
http://blog.goo.ne.jp/totoro822/e/7f06fde2e12977a57cf0fcbaadc351c8
の両方の意見があるというのが、算数教育学の混乱振りを示していると思います。
http://8254.teacup.com/kakezannojunjo/bbs/t9/72-101
要するに、
「20個を4個ずつ」だと4×( )=20
「20個を4人で」だと( )×4=20
この括弧に当てはまる数を探すのだけど、後者を「にしがはち、さんしじゅうに、・・・」とやるのは難儀なので「親切心」から教科書に「どちらも割る数の段で求める」と書いてある。
そうすると今度は「何が何でも割る数の段で求めないとならない」となってしまい、それがストレートに出題されることになる。
極め付けがこれ↓
http://www.dainippon-tosho.co.jp/sho/sansuu/shidou/shidou3/index.html
>等分除の場面であることを確認させる。
>□×6の式で,6の段の乗法九九を使い
杉山吉茂氏もピントはずれなことを言っている。
http://8254.teacup.com/kakezannojunjo/bbs/t59/22
元数教協のブログ主によると3種類だそうです。
http://ts.way-nifty.com/makura/2009/07/post-4df6.html
>割り算の意味は、「等分除、包含除、倍」の3つでかけ算の逆思考です。
運動量÷質量=速度
運動量÷速度=質量
なども、どれかに分類されるのでしょうかね?
一層のこと、「20個の蜜柑を4人に配る」は「果物分配等分除」、「20本の鉛筆を4人に配る」は「文房具分配等分除」、「4人で飲みに言って2万円かかった。割り勘では?」は「徴収等分除」とかしたらどうでしょうね。
果物と文房具の区別はともかく、分配と徴収では物の動きが異なるわけで、足し算の増加と合併を区別する算数教育学の流儀では、両者を区別することになりそうなものですが。
算数教育学と言うのは、場当たり的でご都合主義だなと思いました。
>わり算のたしかめ算の意味を理解できるように,包含除の場合はa÷b=cあまりdのたしかめは,b×c+d=aとなるが,等分除の場合のたしかめは,c×b+d=aとなることを図と対応させながら考察する場を設定する。しかし,計算結果のみをたしかめるときには,場合分けをしないで,除数×商+あまり=被乗数でもいいことを確認する。
「この妖怪を擁護するための神聖な同盟が結成された。
日数教と数教協、教育委員会と国教研、教科書会社と筑波潮流」・・・・・・逆に言うと、算数教育「学」の主流派等も、その批判派を無視できなくなってきたということでしょう。黒木氏、「積分定数」氏、「鰹節猫吉」氏、高橋氏などの長年の地道な努力の成果だと思います。まだ、道は遠いけれど、地道に算数教育を批判していく必要があると思います。
等分除・包含除の違いなど、本質的な違いなどありません。この当たり前のことを、私たちは主張している
だけです。
式 12÷3=4 答 4こ
②「いちごが12こあります。1人に3こずつ分けると
何人に分けられるでしょう」(大日本図書の導入問題)
式 12÷3=4 答 4人
大日本図書は、①→②の順に導入しています。そして、①②の区別を
「8÷2=4の式になる問題を次のようにつくりました。2人がつくった問題をくらべてみましょう」として、等分除・包含除の区別を強調しています。
このブログのつづきとして、そこら当たりを載せておきます。