【巨人】若手よ見たか、これぞ由伸!9回、執念の同点打に「最後にああいうのは、大事だよ」
◆チャリティー試合 台湾OB選抜11―15巨人OB選抜(20日・台中インターコンチネンタル球場)
【台中(台湾)20日=ペン・宮脇央介、カメラ・泉貫太】これが巨人、これが由伸だ―。台湾OB選抜と巨人OB選抜のチャリティー試合が台中インターコンチネンタル球場で行われ、巨人は5点を追う9回、高橋由伸監督(41)の同点二塁打などで一挙9点を奪い大逆転勝ちした。7回に代打で登場した王貞治氏(76)=ソフトバンク球団会長=の姿を見て一体となったレジェンド軍団。由伸監督は来季、激しい定位置争いが予想される中堅で出場し、若手のお手本のような勝負強さを見せた。
鋭く、美しく、しなやかだった。現役時代そのままの由伸監督のスイングが、台湾の地で巨人に奇跡を起こした。5点ビハインドで迎えた9回、3点を返してなお無死満塁。鮮やかな放物線が激しい雨を切り裂いた。バックスクリーン手前でワンバウンドする同点の2点エンタイトルツーベース。「少しでもいいところを見せられてよかったよ」。後続も続き、この回一挙9点で大逆転。日本のG戦士へ見本を示すような、指揮官の一撃だった。
巨人に数々の栄光をもたらしたレジェンド戦士たちが、大声を張り上げ、身を乗り出していた。5点差を豪快にひっくり返す底力に、6500人の観衆が度肝を抜かれた。ミラクルの主役となった背番号24は「3番・中堅」で巨人OB唯一のフル出場。最終回まで5打数無安打だったが、勝負どころでもう少しで逆転グランドスラムという一打を繰り出し、「最後にいい当たりが出たね」と笑った。
「世界の王」に強烈な刺激を受けた。7回無死、王さんが代打で登場すると、地鳴りのような歓声が場内を包んだ。「近くで見られてよかった。オーラを感じました。いざ打席に入ってボールを見ると、王さんでも力が入るんだね」。巨人ファン、台湾のファンのため、4度のフルスイングで格好良く三振した背番号1の姿を見て、チーム最年少の41歳も力を得た。
“真剣勝負”は、昨年11月23日のファンフェスタ(東京D)で行われた引退セレモニーで、菅野と1打席限定で対決して以来となる。この1試合のために、できる限りの準備をした。秋季キャンプ中は早朝に起きてランニング。練習前には無人のグラウンドでキャッチボールを行い、肩をつくった。最終日には200球の打ち込み。「選手がいる時にはできない」と監督業を最優先しながら、時間を見つけて体を動かし、今できる最高のプレーを見せようとした。
現役選手に向けたお手本とも言える立ち居振る舞いだった。最善の準備と、ここ一番での働き。今季、あと1本が出ずに苦しんだ打線、あと1イニング、1アウトを取り切れなかった投手陣に、由伸監督がこの日示したような勝負強さが加われば、来季の優勝に光が差す。「最後にああいうのは、大事だよ」とサラリと言って帰りのバスに乗り込んだ指揮官。一日限定の「選手・由伸」が、G戦士にあるべき姿を示した一戦でもあった。