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柴 那典の新譜キュレーション 第8回

アニメーションMVの良作続くーーP・ロビンソン&マデオン、GOUACHE 、さユりらの作品を解説

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柴 那典
洋楽
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 今回は、アニメーションMVのここ最近の注目作を紹介しようと思う。単に手法としてアニメーションを取り入れただけではなく、曲の世界観やアーティストの音楽性と深くからみあったような映像表現が成されているものをピックアップした。

Porter Robinson & Madeon『シェルター』

Porter Robinson & Madeon - Shelter

 まずはアメリカのエレクトロニック・ミュージックのシーンを牽引する若き俊英ポーター・ロビンソンが盟友マデオンとコラボした「SHELTER」。この曲はショートストーリー的な作りのミュージックビデオとなっている。

 「この先に何があるんだろう? いつからか、考えなくなった。考え方、それすら忘れてしまったのかも。変わらない、自分だけの世界が、毎日が続いていく。でも、淋しくはない。どうってことないんだ」

 という女の子の独白からMVは始まる。一人の可憐な女の子が、ベッドルームの中でタブレットを使ってVR的な世界を作り上げる。その仮想空間の中で彼女はかつての大事な思い出と父親に出会う。そうして、かつて訪れた黙示録的な危機状況の中で、女の子は自分が安全な場所(=SHELTER)に守られていたということを知る。そういうストーリーが描かれている。

 楽曲自身も、とてもエモーショナルで、とてもセンチメンタルだ。メロディと歌っている内容と映像も深く結びつている。大きなポイントは、ストーリーの原作をポーター・ロビンソン自身が手掛けていること。制作はポーター・ロビンソン自身が大ファンであることを公言しているアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を手掛けてきたアニメーションスタジオ・A-1 Picturesが担当し、1年以上の時間がかけられて映像が完成した。

 彼の音楽を深く聴けば、日本のアニメーション文化との関わりはきっと感じ取れることだろう。音楽が醸し出すイメージの根幹に、ある種の孤独や、目に見えないものを夢見するロマンティシズムが息づいていることがわかる。そして、それは日本のアニメが培ってきた想像力と感傷でもある。彼自身、ライブでのVJでは日本のアニメ素材を多用している。そのセンスが、彼のフィルターを通すことでグローバルな広がりを持って伝わっている。

 ダフト・パンクによるダンス・ミュージック屈指の名曲『ワン・モア・タイム』は松本零士とのコラボレーションによるミュージックビデオもとても感動的だったが、それと同じようなポテンシャルを持つ楽曲だと思う。

GOUACHE(ガッシュ)「RED」

GOUACHE(ガッシュ)「RED」

 GOUACHE(ガッシュ)とは、「カゲロウプロジェクト」を手掛けてきたじんが、GARNiDELiAのメイリア(Vo)らと共に新たに結成したバンド。バンド初の楽曲「RED」を、劇場版ムービー『MX4D™カゲロウデイズ – in a day’s -』の主題歌として公開した。

 曲の長さは2分5秒、BPMは200オーバーという強烈な疾走感と酩酊感を持つこの曲。音だけ聴いてもかなり格好いいのだけれど、MVで見るとその「よさ」が数割増しになるのがポイントだと思う。

 ミュージックビデオはA4Aの東市篤憲がディレクションを手掛けたマッシュアップムービー。これまでの「カゲロウプロジェクト」楽曲の映像と劇場版の映像の素材を元に作られたものなので、「RED」という曲の世界観と完璧にマッチングするかと言えば、実はそうではない。ただ、ミリ秒単位でカットアップされた映像と大写しの文字が次々に目に飛び込んでくるような映像のスピード感は、まさに楽曲のテイスト、そして「だんだん目が回って 夕焼けが燦々空に散って行った」という歌詞の描いている情景ともリンクしているように思う。

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