クラシエフーズが販売するお菓子「ねるねるねるね」は、発売から30年たった今も子どもの心をつかんでいます。実は2000年代後半、5年間で売り上げが約半分になる危機がありました。累計で8億食売れた人気商品をV字回復させたのは、担当者の「こども目線」でした。
【画像】30年前の「ねるねるねるね」パッケージ 「ボツボツ頭の緑キャラ」たしかに怪しい…
30周年を迎える「ねるねるねるね」は1986年に発売。公園の砂場で夢中に遊んでいる姿にヒントを得て開発されました。当時は20~30円程度の駄菓子が多く、100円の「ねるねるねるね」は子どもにとって破格の値段でした。
「売れっこない」と社内から声が上がりましたが大ヒット。怪しいパッケージに、魔女が登場する「テーレッテレー」というCM。粉に水を入れると色が変わり、かき混ぜるとふくらむお菓子の「謎」に子供は夢中になりました。
当時は「食べ物で遊んではいけません!」という時代。保護者からクレームが相次ぎましたが、それは子どもの心をつかんだ証拠でした。
ただ大ヒット商品にも大きな危機が訪れました。2000年代後半から毎年、売り上げがダウン。5年間で売り上げは半分近くに。他のお菓子が好調だったため、全体の売り上げも落ちていませんでした。そのため危機感もあまりなく、「ねるねるねるねは、落ちてるけどなんでだろう」というムードだったといいます。
「ねるねるねるね」の復活を託されたのが、2010年から担当になったマーケティング室菓子グループ課長の津田未典さん。1千人の市場調査で9割が「ねるねるねるね」を知っていました。しかし、3割が買ったことがなく、その理由は大きく3つでした。
(1)よくわからない
(2)おいしそうじゃない
(3)親が買ってくれない
いつのまにか、子どもにとって、縁遠いお菓子になっていました。
津田さんは商品を2011年に大幅リニューアル。親の不安を和らげるため、パッケージの裏に色が変わる仕組みを説明し、表には保存料・合成着色料ゼロのマークをつけました。味も変えて甘くしました。
津田さんが一番こだわったのは、どうやったら子どもに魅力が伝わるかということ。どんな言葉、どんなイメージだったら「ねるねるねるね」を買ってもらえるか。幼児期の音楽やテレビ番組、絵本などで研究したそうです。そして、たどりついたのは「ふわふわお菓子」というフレーズでした。
リニューアル前は「ねっておいしい!」というフレーズをパッケージに載せていました。津田さんは「子どもは『ねって』という言葉は使わないんじゃないかと思いました。子どもに伝えるには、『どんどん』とか『じゃーじゃー』とか音から入らないと伝わらないと思いました」と語ります。
リニューアルをすると、売り上げはV字回復しました。津田さんは、時代の変化からか発売当時には魅力だった「怪しさ」が商品への不安につながったのが、2000年代になって売れなくなった原因のひとつと見ています。
「昔と違って、子どもにはイメージでみせなきゃいけない。知名度だけで上から目線のお菓子になっていました」
ただ変わらなかったのは、まぜて遊ぶ楽しさでした。「好奇心をかりたてるお菓子は『ねるねるねるね』だけ。怪しくなくても十分、魅力があった。唯一無二のお菓子でした」。そう津田さんは振り返りました。
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