リマ=小野甲太郎、鈴木拓也
2016年11月21日00時00分
安倍晋三首相は19日午後(日本時間20日午前)、ペルーの首都リマでロシアのプーチン大統領と会談した。12月15日に山口県長門(ながと)市で行う首脳会談に向け、北方領土問題や経済協力について議論した。会談ではプーチン氏が北方領土での「共同経済活動」に言及、日本はロシアの領有権を前提とする提案には応じておらず、領土問題よりも経済協力を優先するロシア側の姿勢が鮮明になった。
会談は、リマ市内の両氏が滞在するホテルで約1時間10分行われた。日本政府の説明によると、このうち後半の35分間は両首脳が通訳のみを同席させて話し合った。出席者によると、プーチン氏は、領土交渉とは別に北方領土にロシアの主権下で日本が投資を行う共同経済活動の必要性に言及した。ただ、日本が現状のまま経済活動を行えばロシアの領有権を認めることにつながりかねず、日本側はこれに返答はしなかった。
会談後、首相は領土問題を含む平和条約締結交渉について記者団に「(条約締結が)70年間できなかったわけで、そう簡単な課題ではない。解決に向け道筋が見えてはきているが、一歩一歩、山を越えていく必要がある。大きな一歩を進めることはそう簡単ではないが、着実に前進していきたい」と語った。ロシア政府は会談後、ロシアメディアに対し、経済協力について両首脳で意見交換したと説明し、平和条約の問題には触れなかった。
首相とプーチン氏との首脳会談は今年3回目で、第1次安倍政権からは通算15回目となる。今年5月の首脳会談で、首相が示した「新たなアプローチ」をもとに日ロ交渉を進めることで合意。9月の会談では交渉の加速を確認した。
今回の会談冒頭、首相は「山口県長門市でも準備に向けて大変盛り上がっている。翌日には東京に立ち寄って、経済関係について議論したい」と伝えた。プーチン氏は「これまで、二国間関係を前進させるために色々なメカニズムと手段を再開させることができた」と語り、この間の経済協力の進展を評価した。
首脳会談前半で、同席した世耕弘成経済産業相が首相が5月の首脳会談で提案した「8項目の経済協力プラン」を具体化するための作業計画について説明し、今月18日に両政府の次官級協議で合意した文書を両首脳に手渡した。また、12月15日の首脳会談のほか、翌16日には東京で会談することも確認。首脳会談前の12月3日に岸田文雄外相が訪ロし、ラブロフ外相と会談することでも一致した。(リマ=小野甲太郎、鈴木拓也)
◇
〈北方領土での共同経済活動〉北方領土を巡る日本とロシアの信頼関係を深めるため、両国による合弁事業などの協力を進めようという考え。栽培漁業やインフラ整備などが対象として想定されてきた。ロシアは自らの法律の枠内で事業を進めるべきだという立場。日本の領土にロシアの法律を適用することは認められないと主張する日本との隔たりは大きく、本格的な協力は実現していない。
新着ニュース
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞官邸クラブ