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ユニーク企業の仰天戦略

「5年で辞めろ」と社長が公言、寺田倉庫という不思議企業

曲沼美恵 [ライター]
【第12回】 2016年11月21日
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寺田倉庫の本社オフィス Photo by Toshiaki Usami

会社設立から66年の歴史を持つ寺田倉庫がここ数年、急速に変貌を遂げている。ワインやアートの保管事業を手がけるなど、これまでの倉庫会社のイメージを覆すBtoC事業に次々と乗り出しているのだ。どうやら、改革を主導しているのは現社長の中野善壽氏らしいと聞き、「ぜひ話をうかがいたい」と勇んで取材に向かったのだが、のっけから壁にぶつかった。

社長は本当に実在する?社員も疑うその実態

 執行役員の月森正憲さんが言う。

 「社長はマスコミに出たがらないんです。私も入社した時には『この人、本当に実在しているのか』と思ったくらいでして……」

――えっ?

 月森さんが入社したのは1998年だ。

寺田倉庫 執行役員・月森正憲さん
Photo by T.U.

 「当時、会社の資料などに特別顧問・中野善壽と書いてあったのですが、何をしている人なのかは全然わかりませんでした。姿を見かけたことはないし、声も聞いたことがない。本当に実在するのかなという話を、冗談で先輩としていたんです。それが5年前に社長に就任することになり、『何をしている方なんですか?』と先輩に尋ねたら、会長のよき相談相手というか、ビジネスパートナーというか、昔からの知り合いだったようで……」

 メディアに出たがらない社長はたまにいる。しかし、社員も姿を見かけたことがないとは……。

――もしかして、出社もしないとか?

 「あっ、今はその辺をウロウロしています(笑)」

――ウロウロ?(つまり、実在はしているのか?)

 「うちは社長室もないので、会社に来るといつもその辺をブラブラしています。相談事があれば、みんな気軽に声をかけますし」

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曲沼美恵[ライター]

1970年生まれ。大学卒業後、日本経済新聞社に入社。2002年からフリーに。近年はビジネス誌やウェブサイトで、ルポルタージュやインタビュー、コラム等を執筆。近著に『メディア・モンスター:誰が黒川紀章を殺したのか?』(草思社)がある。仕事に関する情報はブログでも紹介中。「ニュース」より「人」に興味あり。

 


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ユニークな商品・サービスを生み出している会社には、どんな経営者がいるのだろう?大企業には真似できない仰天の戦略でグローバル時代を生き残ろうと模索する、「小さな巨人たち」を追いかける。

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