スティグリッツ氏警告「トランプは危険人物」
「米国経済がトラブルに陥るリスクは高い」
世界に驚きを与えた米国大統領選挙。当選後のトランプ氏が過激な発言を控えていることもあり、市場は平穏を取り戻したかのように見える。しかしそれはどこまで続くのか。トランプ就任が世界経済に与える影響をどうとらえればいいのか。「週刊東洋経済」では、2001年にノーベル経済学賞を受賞し、米国を代表する経済学者であるジョセフ・E・スティグリッツ氏に緊急インタビューした。
スティグリッツ氏は「トランプは非常に危険な人物。米国経済がトラブルに陥るリスクはかなり高い」と警告する。
(一部敬称略)
アドバイザーに経済学者はせいぜい1人
――ドナルド・トランプ次期大統領が掲げる政策をどうとらえていますか。
同氏の主張には根本的な問題がある。歳出を増やす一方で、全所得層への減税を実施し、米国政府の予算を均衡化すると言うが、三つを同時に行うことはできない。
守れない公約をするという意味で、彼はポピュリスト(大衆迎合主義者)のレッテルを張られてきた。公約の多くを破ることになるだろう。
──全所得層への大幅減税についてはどう思いますか。
富裕層が最も恩恵を受け、富める者がさらに富み、格差が拡大するだろう。
連邦最低賃金を(10ドル以上に)上げるとも主張しているが、これも実現不可能なことを公約している。引き上げてくれればいいとは思うが、共和党は反対の立場を取っている。トランプは、共和党が異を唱える多くのことを公約している。
そもそも共和党は、昔から行いが一貫しておらず、誠実でない。たとえば、民主党が政権を取ると財政責任を求めるが、自分たちが与党に回ると支出もいとわない。レーガン大統領は、歴代大統領の中で最大の連邦債務を作り、ブッシュ前大統領も莫大な債務を積み上げた。トランプ政権も、そうなるだろう。
私が知るかぎり、彼のアドバイザーはヘッジファンドやウォール街の関係者ばかりで、経済学者はせいぜい1人。彼の周辺には経済システムを理解する人がいないのだ。株式取引や投機売買なら知っているかもしれないがね。