スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

モバイル・ファミコンをやってゆきたい!

モバイル・ファミコンをやってゆきたい!

 2016年11月10日に任天堂から発売された「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(公式サイト)。既に「ミニファミコン」の通称で話題になってますけど、往年の家庭用ゲームマシン「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」の復刻版的ゲーム機です。ワタクシの場合「あっ、これならモバイルできるな!」と思って予約購入しました。任天堂が提示している価格は税別5980円です。

任天堂の「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」。往年のファミコンのデザインをそのまま使った復刻版です。ただし、ゲームソフト30本を内蔵しており、ソフトの交換や追加はできません。通称「ミニファミコン」ですが、その名のとおりオリジナルのファミコンの半分くらいのサイズ感で、冬の上着ポケットになら収まりそうな小ささです。

 詳細はリンク先公式サイトをご覧頂きたいと思いますが、このミニファミコンについてワタクシ的に注目しつつワクワクしたのが、USB給電で動作できる仕様。それから、映像・音声の出力がHDMIであること。今時のテレビはUSB給電ポートやHDMI入力があったりしますが、非常にカンタンにテレビに接続し、スグ遊べるという仕様です。

本体のボタン類は電源ボタンとリセットボタンのみで、手前のコネクタやカセット用スロットはダミーです。背面には電源供給用USBポートと映像・音声出力用HDMIポートがあります。

 オリジナルのファミコンは、時代が時代なだけに、テレビのアンテナ線の途中にアダプタを噛ませるなどして接続し、テレビは2チャンネルなどの空きチャンネルに合わせてプレイしたものです。一度テレビにつないだら、つなぎ替えも面倒でした。それと比べたら、ミニファミコンはラクに接続できますネ。

 当時、一般家庭ではファミコンはテレビにつないでいたわけですが、当時はまだ「テレビはひとりに一台(かそれ以上)」という状況ではありませんでした。ファミコンしたいけど……家族がテレビ見てるからプレイできない、という状況も多々あったと思います。 一家に2台以上テレビがアリガチな現在、ミニファミコンなら気兼ねなく遊べそうです。

 それに、ミニファミコンの電源はUSB給電なので、モバイルバッテリーで動作します。さらに、今はUSBバッテリーで動作するHDMI入力対応の汎用ディスプレイもけっこーあります。ということで、「そうか! テレビの置き場所に制限されずにファミコンで遊べる時代なのか!」などとウッカリ思ってしまいました。

 まあ現在、敢えてファミコンのソフトで遊ぶのかと言えば微妙に疑問ですし、最新のゲームをスマートデバイスでプレイすればいいじゃんって話でもあります。でも、かつてテレビの前に釘付け状態でファミコンに興じた者としては、携帯可能なサイズのミニファミコンと、携帯可能なサイズのディスプレイやモバイルバッテリーを持ち出して、好きな場所でファミコンできることを想像すると、何だかちょっとワクワク♪ てなコトでアレコレ試してみましたので、以下、ご笑覧ください。

ポータブルディスプレイと組み合わせてみる

 まずは手持ちの小型ディスプレイを使いました。モノはセンチュリーの「10.1インチHDMIマルチモニター plus one HDMI (LCD-10000VH5)」で、レビュー記事はコチラに書きました。10.1型でHDMI入力を備えた、USB電源駆動可能な小型ディスプレイです。

 このディスプレイとミニファミコンを駆動するために、2系統のUSB出力が必要です。ミニファミコンは5V/1.0Aの電源が必要とあります。ディスプレイには5V/2.0AのUSB-ACアダプタが付属していたので、それと同程度のUSB出力を使うのが無難そうです。

 そこで、Ankerの1万2800mAh(Amazon.co.jpのリンク)や2万100mAh(Amazon.co.jpのリンク)のモバイルバッテリーで試してみました。結果、どちらのモバイルバッテリーも(1台のみで)、ミニファミコンとディスプレイの電源として問題なく使えました。

左がAnkerの1万2800mAhのモバイルバッテリーで、3つのポート合わせて最大4Aの出力が可能だそうです。右はAnkerの20100mAhのモバイルバッテリーで、各ポート2.4A、合計で4.8A出力が可能となっています。どちらでも、ミニファミコンとディスプレイを同時に駆動できました。
モバイルバッテリー×1個、給電用USBケーブル×2本、HDMIケーブル×1本、そしてミニファミコン本体で「モバイル・ファミコン」一式です。思った以上にケーブルが邪魔な感じ。3本のケーブルをどうキレイにさばくかがポイントかもしれません。

 結果、あっさりとモバイル・ファミコンを実現できました。モバイルバッテリーでファミコンのゲームをプレイできちゃうのは、ちょっと不思議な感じ。実際に一式を持ち運べば、出先でもミニファミコンで遊べます。全体の質量はノートパソコン1台分程度なので、持ち運びはわりと現実味があります。

 ただ、写真のようにケーブル類がスッキリしません。給電用USBケーブルとしてなるべく短いものを使い、HDMIケーブルもなるべく細く短いものを使えば、ゴチャゴチャ感がなくなると思います。

 ちなみに実際の使用感ですが、10型程度の画面ならファミコンのゲームは問題なくプレイでき、表示は思ったよりクリアで、音も十分聞こえます(ディスプレイ背面の内蔵スピーカーから出力)。バッチリ快適♪

 敢えて屋外へ持って出てモバイル・ファミコンとしなくても、「家の中のどこでも遊べるミニファミコン・セット」として実用性は高いと感じました。寝付けない夜に枕元でこっそりとミニファミコン、週末にちょっと呑みつつソファでミニファミコン、みたいな使い方も良さそうです。

大画面にしてみたり、プロジェクションしてみたり……

 ほかのモバイル・ディスプレイとも組み合わせてみました。ひとつは、GeChicの「On-Lap 2501H」(公式製品情報ページ)です。15.6インチでHDMI/VGA入力に対応しており、USB駆動が可能です。使った電源は前述と同じモバイルバッテリーですが、特に問題なくミニファミコンとディスプレイを駆動できました。

左はGeChicの「On-Lap 2501H」で15.6インチのモバイル・ディスプレイです(画像は公式製品情報ページから抜粋)。表示もキレイで機能性も優れた製品ですが、現在は販売終了品となりました。ミニファミコンと組み合わせたら、非常にクッキリ明るい表示でファミコンソフトを楽しめました。ディスプレイ本体が大きめなので、ケーブルの余りなどをディスプレイ後方に隠せるのも、ちょっと実用的です。

 この「On-Lap 2501H」というモバイル・ディスプレイ、画面サイズや表示のキレイさにおいて、かな~り優れている製品だと思いますが、ソレとミニファミコンを組み合わせると「お~イイね~♪」という感覚。表示サイズ的にも快適で、音もよく出ます(ディスプレイ背面の内蔵スピーカーから出力)。HDMI入力対応のモバイル・ディスプレイって、こういう流用のしかたもあるんだなあと、改めて実感したりして。

 続いて、たまたま借用中のプロジェクターとも組み合わせてみました。モノはソニーの「ポータブル超短焦点プロジェクター LSPX-P1」(公式製品情報ページ)です。内蔵バッテリーで使える小型プロジェクターで、ワイヤレスユニット経由でHDMI入力が可能です。

左はソニーの「ポータブル超短焦点プロジェクター LSPX-P1」(画像は公式製品情報ページから抜粋)。スマートデバイスの映像をワイヤレスで送信するなどして投影できる製品です。最小22インチから最大80インチの投影が可能。ミニファミコンからの映像が予想外にキレイに表示されました。

 プロジェクターで机面にゲームを表示してプレイするのもオツな感じ♪ 使ったプロジェクターは机上に置くだけで机面への投影(22インチ相当)ができたりしますが、白い机面に投影したらかなりキレイに映像が表示されました。壁や机を画面にできるので、場合によってはディスプレイを置くよりもスムーズに遊べるかもしれません。プロジェクター本体からの音は、音量も十分ありキレイに聞こえます。

 ただし、このプロジェクターの場合、HDMI入力をするには付属のワイヤレスユニットを使う必要があります。このワイヤレスユニットはACアダプタ駆動のため、電源をモバイルバッテリーだけでまかなうことができず、純粋な「モバイル・ファミコン」としては利用できませんでした。

ミニファミコンの「遊べる度」について

 最後に、ミニファミコンのコストパフォーマンスというか、税別5980円で「どの程度楽しめるのか?」について。ゲームの好みもありますので、あくまで個人的な見解として、少々。

 ミニファミコンには、1983年~1993年までの11年間に発売されたソフト(カセットやディスク)のうち、30タイトルが内蔵されています。収録タイトルの一覧はコチラにあるとおり。各ゲームの遊び方は「説明書」のページにあります。

 収録タイトルをザッと見たところ……「スーパーマリオブラザーズ」「メトロイド」「ドクターマリオ」「星のカービィ」「ゼルダの冒険」「リンクの冒険」あたりを含んでいて、なかなか好印象。「ソロモンの鍵」というアクション・パズルゲームは非常に好きですが、コレが入っているあたり個人的に嬉しいチョイスだと思いました。「ギャラガ」「グラディウス」「パックマン」あたりも入っていますので、ファミコン自体にあまり思い入れがない人でも楽しめるように思います。

名作「スーパーマリオブラザーズ」もシッカリ収録されています。個人的には「ソロモンの鍵」が収録されていて「マジ! やったぁ♪」という気分です。

 ただ、個人的には「コレを2016年に収録してくるのか!?」というソフトもチラホラ。どれとは申しませんが、「渋すぎるゲーム」がありますな。ファミコン時代を知らない人がプレイしたら「こ……これの、どこがおもしろいの? というか、これ、ゲーム?」となるかも。初期のファミコンゲームは、タイトル数が少なかったこともあってか「ゲーム性が粗い」と感じさせるものもありました。難易度が妙に高いわりには単調、とか、どう楽しませたいのかイマイチよくわからない、とか。そんなタイトルも混じっているように感じました。

 でも、かつてファミコンを楽しんだ方々や、さらにファミコンについて懐かしさ楽しさをもって思い返せる方には、多くのタイトルを「そうそう、こういうのがあったなあ」と面白がれると思います。また、ファミコンなどまったく知らない方でも、収録タイトルの中にはハマれるものも何本かあると思います。そういう観点で、まあ、税別5980円なら高いってほどでもないかな、という印象です。

 あと、ミニファミコンはミョーに人気があるようで、発売直後の現時点では、いわゆる「転売屋」も多々出現しているようです。中には倍以上の値段で売っているケースも。これも個人的な見解ではありますが、た~ぶ~ん、こういうモノは、「ミニファミコン買ってから半年経つけど相変わらずハマってて寝不足だよ~」なんてなコトにはなり得ないと思います。「あーミニファミコン買ったよ去年~、ソフト少ないからすぐ飽きたけど」とナリガチだと思います。

 ので、発売から日が浅い現時点で、本来より高い値段で買うと大後悔するような気がします。ミニファミコンの売れ行きは好調なようで、増産・追加販売の話もあるようですから、ちょっと待ったほうが賢明かもしれません。中古ファミコンと中古カセットを買うという手もありますし……まあ「どうしてもこの小さい筐体のファミコンが今すぐ欲しいんだよ~!」という場合はアレですが。

 話を少し戻しまして、ミニファミコン、ファミコンと比べると手軽さもかなり高くなっています。たとえば「中断ポイント」機能。ゲーム中に本体の「リセットボタン」を押すと「中断ポイント」が作られ、1つのゲームで4つまでの「中断ポイント」を保存できます。ゲームを途中でやめて、後でその地点から「レジュームから復帰して再開」するような感じで継続できる機能です。アクションゲームやシューティングゲームでも「中断ポイント」が作れるので、当時と比較するとけっこー斬新な便利機能です。

たとえばゲーム中に「お客さんが来た!」など、ゲームをやめる必要がある場合、リセットボタンを押します。するとホーム画面に戻り、ゲームの「中断ポイント」が作られますので、それを保存します。保存した「中断ポイント」を選ぶことで、ゲームをやめた(リセットボタンを押した)時点から、ゲームを再開することができます。「中断ポイント」の保存先は4つあるので、ユーザー別やステージ別などとして使い分けられます。

 あと、画面設定なんかもちょっとオモシロいです。テレビなどとHDMI接続すると、昔懐かしファミコン画面が現在の高性能デジタル・テレビの画面上に「ヒッジョーにキレイ」に表示されるわけですが、これを「敢えて昔のテレビっぽい画質で表示する」ことができます。

画面設定を「アナログテレビ」に変更することができます。中央は通常表示で、色もコントラストもハッキリしています。右は「アナログテレビ」表示で、ブラウン管時代っぽい(インターレーススキャン風の)画面表示になります。どちらもHDMI接続ですが、表示モードを変えると「当時の雰囲気」が味わえるというわけです。

 ほか、コントローラーも小さくなっているので、プレイに影響が出るかな? とは思いましたが、少し遊んでいるとすぐ慣れることができました。

 あとこれは個人的要望ではありますが、「ミニファミコン 2」が出たりするなら、ソフトはメモリカード式などとして、追加や交換が可能にして欲しいところ。ファミコンには膨大なソフトウェア資産があり、まだまだたくさんの名作が眠っています。ぜひそういったソフトを、権利関連等々の山を乗り越えるのはタイヘンだとは思いますが、ガシガシと復刻させて欲しいです。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。