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河合薫、日立AI幸福研究のボスの前で大迷走

日立製作所研究開発グループ技師長・矢野和男さんインタビュー(前編)

2016年11月21日(月)

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 日立製作所では、人工知能(AI)が社員個人に対して、幸福感を高めるためのアドバイスを与える社内実験を行っている。

 「いったい、どんな仕組みなの、それ?」「そもそも、AIにひとの心をスッキリ解析されてたまるものか!」「この研究のリーダーである矢野さんって、どんな人なんだ?」

 当コラムの著者、河合薫さんが、たくさんの「?」を携えながら、押っ取り刀で日立製作所研究開発グループ技師長の矢野和男さんを直撃。果たして、「?」の謎は解けたのか。それとも、返り討ちに遭ったのか…。(編集部)

河合:私、幸福にはちょっとうるさいんです(笑)。大学院のときに心理的well-beingを向上させるEラーニングのプログラムを開発して、介入研究を行ったことがあるんです。

矢野:心理的well-beingですか? 初めて聞く言葉ですね。河合さんのご専門では「幸福」と同義なんですか?

矢野 和男(やの かずお)さん
1984年早稲田大学物理修士卒。同年、日立製作所入社。現在、日立製作所研究開発グループ技師長。工学博士。IEEE フェロー。

河合:そうです。正確に言うと、「幸せな状態」ではなく「幸せへの力」です。危機に遭遇したり、不安になった時にこそ高められる「人間のポジティブな心理的機能」のことで、モノごとの見方をちょっと変えるだけで誰もが高められます。矢野さんの研究における「行動で幸福感を高める」という考え方と、ちょっと似てるかもしれないですね。

矢野:なるほど。でも、モノごとの見方を変えるのって、結構、難しいように思いますが……。

河合:モヤモヤメモとハッピーメモを書くだけでも、ずいぶん変わりますよ。

矢野:な、なんですかそれは? モヤモヤメモって、すごい興味あります。

河合:モヤモヤメモっていい名前でしょう。私のオリジナルです。商品登録しなきゃなんです(笑)

矢野:ちょっと教えてください。

河合:モヤモヤメモは寝る前にその日を振り返って、心の針がネガティブに傾いた原因である「モヤモヤ」を一つだけ書くんです。書くことはストレス発散につながるので、書き出すとスッキリします。でも、それだけだと気がめいってくるので、その日の「幸せ探し」もやる。こちらがハッピーメモです。

矢野:面白い! 実は私、昨日あった良かったことを3つ書くというのを、10年以上やっているんです。働いてると「何かいまいち気分がのらない日だったな」とか、「昨日はモヤモヤした日だったな」と思うことってあるじゃないですか。それで「だったらいいことも思い出そう」と考えて、良かったこと探しをやっています。

 10年もやっているので、最近は「いいこと探し」の能力がだいぶ高くなりましたが、最初の頃は出てこないんですよね。

河合:でも、ネガティブなことはすぐ思い付く。

矢野:そうなんですよ。ハッピーの方が出てこない。ただ、10年もやってるとハッピー探し能力もどんどん訓練されてきて、今はすぐ書けますよ。

河合:矢野さん、ハッピーそうですもんね(笑)。幸福研究に10年以上費やしている研究者がいて、「ハッピーな人は毎日、ハッピーなことを考えている人だった」という結論を出した。ハッピーメモも、この研究結果を参考に考案したんです。

 人間の感情は複雑な半面、実に単純。私の研究は「書く」という作業を軸にしたんですけど、そこに「行動」という変数を入れて考えた矢野さんって何者なんだ? これは絶対にお会いしなきゃ!と、メチャクチャ興味がわいちゃったんです。それで、編集担当のY氏に「対談させろ~~!」って拝み倒して、晴れて今日の対談となりました!

矢野:それは光栄です。ありがとうございます。

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「河合薫、日立AI幸福研究のボスの前で大迷走」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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