数年前、友人がアップル製品向けの秘書機能アプリケーション「Siri」を必死に口説こうとしているのを見て残念な気持ちになったことがある。感情や思考といった「人格」を持たないプログラムと恋愛をするのは非建設的に思えるからだ。
しかし、近い将来AI(人工知能)が人の感情を理解して“人格のようなもの”を持つようになれば、AIに恋をする人が現れてもおかしくない。この可能性に焦点を当てた映画が、2013年に米国で公開された「her/世界でひとつの彼女」だ。AIに恋する男性が描かれている。
恋愛とAIという組み合わせは、もう架空の話ではなくなっている。日本では2016年9月に、NTTレゾナントが質問回答サービス「教えて!goo」で恋愛相談に応えてくれるAIサービスを始めた。恋愛は極端な例としても、人の感情を認識する技術はマーケティングからゲーム、医療、自動運転技術まで多くのビジネス現場で役立つ。
米フェノックス・ベンチャー・キャピタルCEO(最高経営責任者)のアニス・ウッザマン氏の言葉を借りれば、「感情認識AIで世界は変わる」のだ。AI技術の発展で、これまで曖昧でしかなかった「感情」が、新しいビジネスの核になろうとしている。