人手不足が深刻な介護の現場で、外国人を受け入れるルートが二つ、増える。

 一つは、外国人の在留資格に新たに「介護」を加える。留学生が日本国内の専門学校などで学び、介護福祉士の国家資格を得れば、日本で働けるようにする。国会で出入国管理及び難民認定法の改正法が成立した。

 もう一つは外国人技能実習制度の活用だ。受け入れ先への監督を強める適正化法の成立を受け、来年の法施行に合わせて介護を対象に加える。今は建設や製造、農業など74職種で、介護が初の対人サービスになる。

 国内には、すでに経済連携協定(EPA)に基づいて来日し、日本で介護福祉士の資格取得をめざす人や、国家試験に合格して働く人たちがいる。

 EPA方式と同様に、新たな在留資格は介護の資格取得をめざす人に門戸を広げる。日本語ができ、専門知識も持つ外国人は、介護の現場からも活躍を期待される存在になるだろう。

 問題は、技能実習制度の介護職への拡大である。いまは原則として最長3年の実習期間も5年にする。

 制度を巡っては、実習生が違法な低賃金や長時間労働を強いられる例が後を絶たず、国内外から批判されてきた。「途上国への技術移転」の名のもとに、安い労働力を確保する手段として使われてきたのが実態だ。

 適正化法では、法的な権限を持つ監督機関を新設し、実習生への報酬を同じ職場で働く日本人と同等以上にすることも明記された。当然の対応だ。

 一方で、これで問題がなくなると言わんばかりに、制度をなし崩しに広げるのは賛成できない。本当に劣悪な労働環境が改善されるのか。まず「適正化」の実が上がるかどうかを見極めるのが先ではないか。

 対人サービスである介護については、とりわけ慎重な対応が必要だ。利用者のお年寄りや職場の同僚とのコミュニケーションは、安心・安全にもかかわる。政府は、技能実習制度でも一定の日本語能力を条件にするとしているが、学習支援の体制は十分と言えるのか。

 そもそも、資格の取得を目指すわけではなく、短期で母国に帰る実習生に、どこまでの介護の質を求めるのか。

 介護の現場で人手不足が深刻なのは、他の業種に比べて賃金が低いという構造問題があるからだ。最優先で取り組むべきは、介護現場の待遇改善である。場当たり的な対応は、ようやく出てきた改善への機運にも水を差しかねない。