【LEDと水草は相性が悪い??】
はじめに言っておきますが、私は『LEDでも水草は育つ』と考えています。
でも、水草とLED照明について調べていると『LED照明は水草に不向き』などといった意見をチラホラ見かけると思います。なぜでしょう??
これは、LED照明が発する【光の波長】が水草を育てるために必要な【光の波長】と合っていないことがあるからです。
光の波長とは・・・
【光の波長】というのは、読んだまま『光の波の長さ』です。
この波の長さによって、光の色が変わってきます。そして、その中でも『可視光線』といって、人の目で見ることのできる光の色は限られています。
おおよそ、0.38μm~0.75μmが『可視光線』といわれており、この範囲内の波長域の強弱によって、目で見ることのできる光の色合いが決まっています。
光の波長と水草の育成の関係
【光の波長】と【可視光線】については、上の説明でなんとなく理解できたでしょうか?
次に、【水草の育成に必要な波長】について説明してみたいと思います。
まず、水草が成長するためには『光合成』を行う必要があります。
光合成は『二酸化炭素』を吸って『酸素』を吐きだすというのは理科で習ったことがあると思いますが、この光合成を行うためには『水』『二酸化炭素』そして『光』が必要になります。
この中でも、『光』には波長によって水草が光合成に適しているものと、適していないものとがあります。
それが、下の図です。
上の可視光線の図に、水草が光合成できる波長とできない波長を追記してみました。
簡単に説明すると、
~0.40μm以下の波長(紫外線)~
植物にとって有害な波長域。
紫外線をあまり強く浴びすぎると、植物が枯れてしまいます。
~0.40~0.50μm(青~青緑)~
光合成がしやすい波長域。
葉を厚くしたり、ヒョロヒョロっとした茎になるのを防ぐために重要な波長です。
~0.50~0.60μm(青緑~黄色)~
全く光合成ができないわけではないが、効果がとても薄い波長域。
人間の目からすると明るい光に見えますが、植物にとってはほとんど無意味です。
~0.60~0.70μm(橙~赤)~
光合成にとって最も重要な波長域。
水草の開花・繁殖にとって非常に重要な波長です。
~0.70μm以上(赤外線)~
赤外線による水草の育成効果があります。
が、ここの波長が強すぎると夕焼けのような赤色の照明になります。
また、1.0μmを超える波長は細胞破壊につながります。
と分けることができます。これを見れば、水草にとって必要なのは『0.40~0.50μm』の青~青緑の波長と『0.60~0.70μm』の橙~赤色の波長だということが分かると思います。また、インテリア水槽として見た場合、人間の目に明るく見える『0.50~0.60μm』の波長も必要になってきますね。
それでは次に、なぜ『LED照明が水草に向いていない』と言われるかについて説明してみたいと思います。
LED照明が水草に向いていないと言われるワケ
ここまで説明すると、察しのいい人は『なぜLEDが水草に向いていないか』と言われているか想像できると思います。そう、『LED照明の中には光合成に必要な波長を出さないものがある』んです。
まずは、『太陽光(日光)』『蛍光灯』『メタルハライド』『LED照明』について、光の波長のグラフを見てください。
これは、太陽光と各照明について、光の波長ごとの強さをグラフにまとめたものです。
水草にとって最も必要な波長が、赤丸で囲んだ『0.40~0.50μm』と『0.60~0.70μm』の2つの波長です。そして、このグラフは『相対的な波長の強さ』を表しています。
つまり、照明を強くすれば(増やせば)このグラフは底上げされていくということを頭の片隅にいれておいてください。
では、これをふまえた解説をしてみます。
『太陽光』の場合
波長がまんべんなく分布していて赤丸部分の波長にも十分な強さがあることが分かると思います。理想的なグラフですね。でも現実問題だと、水槽を直射日光をよく浴びる場所に置いてしまうとコケの発生が非常に早くなるし、水温の上昇もおこるのでちょっとムリな話になってしまいます。
『蛍光灯』の場合
こちらも赤丸部分と0.50~0.60μmの部分の3か所で大きな山ができています。ちょっと極端な気もしますが、水草は十分に育つと思います。
『メタルハライド』の場合
パッと見、0.60~0.70μmの部分が弱そうに見えますが、このグラフは相対的な波長の強さを表しています。メタルハライドは緑の波長が強いため、他の波長が弱いようなイメージを受けますが、実際は高光量なのでグラフ全体が押し上がるような形になります。そうなると、太陽光に一番近い波長の形を表します。これが、『メタルハライドは水草水槽に向いている』といわれる理由だと思います。
『LED照明』の場合
上のグラフでは0.40~0.50μmの波長は十分ですが、肝心の0.60~0.70μmの波長が弱いですね。これでは、いくら照明を増やしてグラフを2倍にしてみても満足いくような強さは得られません。 これが、『LED照明は水草に向いていない』といわれる原因です。
でも、これは『LED照明』がアクアリウム用として世に出だしたころのお話です。
最近では、『水草に適した波長を発するLED照明』というのがたくさん販売されています。私も30㎝キューブ水槽に、LED照明の「コトブキ フラットLED300」使用していますが、水草は月イチでトリミングしてやらなければならないほど順調に育っています。価格も3000円程度で手に入れたのでお手頃価格だと言えると思います。
この照明の場合の波長はこんな感じです。
● コトブキ フラットLED 300と光分布グラフ ● |
||
なので、『LED照明が水草の育成に向いていない』のではなく『LED照明の中には水草ををそだてるために十分な波長を出さないものがある』というぐらいの認識でいれば良いと思います。
ちなみに現在でも『水草が育つLED』というのは各メーカーにとってセールスポイントになっています。そのため、そのような照明の場合はパッケージなどに売り文句としてそのことが書かれていることが多いです。近い将来は、『LEDで水草が育つのは当たり前』という時代がくるかもしれませんね。
※スポンサーリンク※