ドナルド・トランプ次期米大統領と安倍晋三首相による17日の初会談に、トランプ氏の娘イバンカさんと夫のジャレッド・クシュナーさんが同席したことについて、米メディアは18日、ファミリーが「政治を私物化している」と批判した。イバンカさんはトランプ氏の会社の役員を務めており、国益が個人的な利益につながるとの懸念があるため。この会談が非公開だったことも、米メディアの不信感を増している。

 トランプ次期大統領の家族同席会談が、米国で波紋を広げている。ニューヨーク・タイムズ紙は、娘のイバンカさんが「トランプ・オーガニゼーション」の副社長を務めていることなど、実業家としての横顔を紹介。ホテル事業を海外に広げようとしていることに触れ「国益との利益相反の可能性がある」と記した。

 義理の息子のクシュナーさんも不動産会社「クシュナー社」を経営する実業家。イバンカさん夫婦が、安倍首相との会談で、日米の経済上の取引や計画を知る機会があれば、夫妻が経営する会社が、日本からの優遇を得る可能性も指摘される。ある米政治サイトは「トランプ家は、不公平で不法な経営利益を得たのではないか」と指摘した。

 ボストン・ヘラルド紙は「トランプ家には、倫理的な問題があるのでは」と批判。「誰がビジネスを担当し、政務を行うのか、クリアになっていない」と批評する弁護士の見方を掲載。イバンカさん夫妻が機密情報に接する権限を持っていないことも批判に拍車をかけている。

 オバマ大統領の倫理担当アドバイザーを務めたノーマン・アイゼン氏は経済誌フォーチュンに「トランプ氏の会社と米国が1つの巨大なコングロマリット(複合企業体)になる」と警鐘を鳴らした。

 トランプ氏は大統領選の勝利会見以降、報道対応がなく、安倍首相との会談も非公開。「国民の知る権利」に応えないことも、米メディアの不満を募らせている。トランプ氏は選挙中からニューヨーク・タイムズ紙について「不正確な報道で何千人もの読者を失っている」と批判したが、反トランプ氏の立場にいる同紙記事の注目度はアップ。大統領選後の1週間で、電子版の有料購読者が4万1000人増加したと同紙は発表した。