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トップ > シゴタノ! > 情報摂取という概念のメリット | Aliice pentagram



倉下忠憲

» 前回:ソースの管理 | Aliice pentagram | シゴタノ!

aliice

これまで情報のインプットを「情報摂取」という捉え方で位置づけてきました。そうすることで、情報との接し方の意味付けが変わるからです。

インプットと言うと、あたかも情報を「仕入れる」ような印象を覚えます。どこかに大きな倉庫があり、そこに情報が詰まったコンテナを一つ置く。そんな印象です。

しかし、私たちは触れた情報に影響受けます。フレーミングといった人間の認知バイアスもそうですが、もっと大きな「何について、どのように考えるのか」もまた、普段触れている情報に影響を受けてしまうのです。つまり、情報は私たちの判断と行動に影響を与える存在であり、それを言い換えれば、

「情報は私たちを構成する材料となる」

となってしまうのです。

そのように捉えるならば、普段接する情報に無頓着ではいられないでしょう。それは、経口で摂取された食べ物が私たちの体を構成する素材となり、だからこそ私たちは普段口にするものに(程度の差はあれ)気を遣うのとまったく同じことです。情報摂取という言い方は、その点を強調する意味があります。

また、もう一つ「情報摂取」という捉え方にはメリットがあります。それはインプット行為の解像度を上げてくれる効果です。

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多様な摂取

一口に「食事」と言っても、その内実はさまざまです。毎日食べるご飯があり、たまに食べるおやつ(デザート)があり、さらにたまに出かける豪華な外食があります。あるいは、それらを補うサプリメントも、一種の栄養摂取と言えるでしょう。

これらの「食事」には、優劣も貴賎もありません。単に役割が違うだけです。人は、それらの役割を踏まえたうえで、そのときどきで最適な食事をとります。ただし、デザートを食べ過ぎてご飯が食べられない、という失敗を犯してしまうのも、人間らしい失敗です。

情報摂取も、実は同じように捉えられます。会社員が毎日読む朝刊は、ある意味で毎日食卓に並ぶ朝食と似たようなものかもしれません。ゴシップ踊る週刊誌や漫画雑誌はおやつ的と言えますし、野球を観戦しに言ったり、ライブコンサートに足を運ぶのは外食的と言えるでしょう。

そのような情報摂取にも、もちろん優劣はありません。それぞれに役割があるだけです。その役割を意識すれば、人が取り込む情報の豊かさは向上するでしょう。

逆にサプリメント的情報ばかり摂取して、日常の食事的情報を避けてしまえば、バランスがおかしくなります。

特殊な摂取

上記のように「情報摂取」を、いくつかに分類して捉えると、いろいろなものが見えてきます。そのうちの一つが、「特殊な摂取」です。

たとえば、お相撲さんは、その体重を維持するために、大量の食事を取り、それに見合うトレーニングを行います。普通に生活している人からすれば、異常な量の栄養を摂取するわけです。それもこれも、特殊な環境で仕事をしているからです。

同じような、それでいて逆のことは、プロボクサーに言えます。階級の体重測定をクリアするために、必死の減量を行うボクサーの話は枚挙にいとまがありません。普通に生活している人なら、倒れてしまうかもしれない食事を、やはり職業的要請から行っているわけです。

情報摂取にも似たようなことが言えるでしょう。特殊な仕事に就いている人は、その仕事が要請する特殊な情報摂取を行っています。ものすごく大量に仕入れたり、あるいは極端に減らしたり、といったことを行うのです。

そうした情報摂取は、もちろんその環境では必要なことですが、一般化できるものではありません。お相撲さんの食事を「一般的な健康法」として敷衍できないのと同じなのです。

しかし、情報摂取は、栄養摂取のように「お腹いっぱい」になることは少ないですし、ある日体重計に乗ったら愕然とする数字が表示される、ということも起こらないので、「過剰」なこと__多いのであれ、少ないのであれ__をやっていても気がつきにくいことがあります。それが、情報摂取が抱える課題でもあります。

さいごに

情報のインプット→情報摂取、と捉えることで、「インプット」という漠然とした行為が、よりくっきりと見えるようになってきます。

それは「どのような情報を、どのように取り入れるのか」を考える上で、大きな補助線となってくれることでしょう。

▼今週の一冊:

ひさびさにSF作品でも。

セルフパブリッシングから出発し、その後商業出版、映画化と順調な歩みを見せた作品と言えばアンディ・ウィアー『火星の人』ですが、本作も出発はセルフパブリッシングだったようです。いかにもなSF作品でありながら、非常にテンポ良くかつミステリアスに物語は進んでいきます。ハードさはほとんどないので、気楽に楽しめるでしょう。

» 第二進化  上 アトランティス・ジーン (ハヤカワ文庫SF)[Kindle版]


▼編集後記:
倉下忠憲



ついに創刊号が完成しました。数ヶ月間じわじわと作り上げてきたので、感嘆もひとしおです。知的生産の技術についての話題で盛り上がる雑誌ですが、創刊号からそれを「脱」するという天の邪鬼っぷりを楽しんでいただければと思います。

» かーそる 2016年11月号[Kindle版]


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由


▼「R25世代の知的生産」の新着エントリー

» 「R25世代の知的生産」の記事一覧

12月03日(土) クローズ・リストを極めるための2冊

タスクカフェ
今回のテーマは、

-クローズ・リストを極めるための2冊

ということで、以下の2冊に迫ります。


『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』
『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版』


この2冊の共通点は、「クローズ・リスト」です。
クローズ・リストとは一日に取り組む仕事の量を一定の基準で制限し、それ以上の追加を許さないという文字通り「閉じたリスト」を指します。

言い換えれば、抱える仕事量を自分の処理能力の範囲内に収めることで、仕事を確実に終わらせるための方法ということになります。

クローズ・リストを身につけ、そして極めることができれば、「仕事に追われるモード」から脱却し、「仕事を追いかけるモード」に形勢を逆転することができます。

この形勢逆転を実現するための考え方とやり方を、今回の2冊の中から抽出したうえで解説します。

また、今回の2冊のうち1冊『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』は佐々木が執筆・大橋が監修を務めており、内容については誰よりも詳しくかつ分かりやすくお伝えすることができます。

さらに、もう1冊の『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版』の内容についても、佐々木と大橋が8年以上にわたって折に触れてブログやセミナーの中で言及してきており、もはや専門分野といってもいいレベルです。

そんな佐々木と大橋がこの2冊の本の読み方と役立て方をお伝えします。


この2冊をまだお読みでない方はもちろん、すでに読んでみたものの、なかなか実践に移せていない、という方はぜひご参加ください。
※ご参加に際して、課題図書のどちらか1冊を当日ご持参ください(KindleでもOK)。

好評いただいている個別相談の時間もご用意していますので、知識としては理解できているとは思うものの、なかなか実践に結びつけられず苦戦している、という方は、ぜひこの機会にブースターとしてご活用ください。


本日時点で、残り5席ですので、ご検討中の方はお早めに。

» 仕事を予定どおりに終わらせたい人のための「タスクカフェ」@渋谷

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