【球界ここだけの話(730)】
今季限りで現役を引退した広島・黒田博樹投手(41)の魂を誰が受け継ぐのだろうか。選手会長・小窪哲也内野手(31)は偉大な存在感について語った。
「何かするとき、まずは黒田さんに相談していました」
決起集会の開催、記念Tシャツを作製。ことあるごとに助言をもらっていた。
そんな関係だから、黒田が引退を発表する前日に小窪はこっそり事実を告げられていた。ただ、引退の話は「チラッとです」と明かす。その席で改めて、黒田らしさをみせられた。
「来年から、投手陣は誰がどうやって引っ張っていくんだろうな」
日本中が驚き、惜しんだ自身の引退のことは一瞬で、すぐに次の話題へ移ったという。次世代のチームのことばかりだった。
大切なことを相談するようになったきっかけは「決して忘れないです」と振り返る春季キャンプの食事の席だ。小窪が選手会長に就任したばかり。気軽に話しかけられる相手ではなかったが、思いきって尋ねたという。
「チームをどうしていったらいいんでしょうか」。すると、答えは「日本一になれたら最高。だけど、勝とうが負けようが、みんなでよく頑張ったと思えるチームにしようよ」。以降、その視野の広さに驚かされてきた。
「とてつもなく、周りがみえている人だなと思っていました。投手、野手、裏方さんのことも、本当にいろいろ見ていて本当にカープをよくしようとしている人でした」
投手陣が大ベテランの背中を追って成長したことはもちろん、野手も同じ。トレーニングルームで時間をともにすることも多かった鈴木は「黒田さんはよくても悪くても変わらない、まったく心のブレを感じなかった」と刺激を注入された。それだけでなく、ふとした瞬間に大先輩から問われ、考えさせられた。
「昨日の試合どうだった? お前はどう思った?」
みんなで頑張ったと思えるチームに-。偉大な成績だけでなく、それ以上にインパクトのある行動で注目された球界のレジェンド。その言動に接した全員が黒田の後継者だ。(安藤理)