早い時期に新市場に移転できないことがはっきりした。東京都は腰をすえて汚染物質などへの対策を講じ、「安全」に対する消費者や業者の不安を徹底的に取り除かなければならない。

 築地市場の移転問題で、小池百合子都知事はきのう、豊洲への移転は「早くても2017年冬か18年春」と公表した。環境影響評価をやりなおすことになれば、さらに1年ほどかかるという。「先が見えず、計画が立てられない」といった業者の声にこたえ、とりあえずの目安を示す形となった。

 新市場は今月7日にオープンするはずだった。だが入り口はいまも金網が張られたままだ。営業開始にそなえて零下60度に冷やされた冷凍庫は、スイッチを切ることもできないまま、空っぽで動き続けている。

 この先、何より優先してとり組むべきは安全性の確認だ。

 豊洲の地下空間の大気などからは、国の指針値を超える水銀が検出されている。地下水からはベンゼンなどが出た。その水位も、管理システムが稼働して1カ月たつが、想定どおりには下がっていない。

 水銀もベンゼンも、すぐに健康に影響が出るような水準ではないと専門家は指摘する。

 しかし、日々口にする食べ物をあつかう場所である。食の安全にきびしい目をむける消費者を相手に商売をし、自分たちもそこで働く業者が、不安を感じるのはもっともだ。

 安心・安価をセールスポイントに、産地から品物をじかに仕入れる量販店などの影響で、卸売市場を経由する流通量は減っている。築地も例外でない。

 ここで拙速な対応をして疑念を残し、築地から豊洲に引き継がれるべきブランドにさらに傷をつけるようなことになれば、回復は容易でない。覚悟を固め、都民にもていねいに説明して危機を乗り越えるしかない。

 移転の時期が遅れるほど関連業者の経営は苦しくなる。

 築地市場で働く500余の水産仲卸の多くは零細事業者だ。都の方針にそって準備を進めてきたが、いま、築地と豊洲とでさまざまな経費を二重払いしていたり、取引先との違約金問題が生じたりしている。

 すべては都の不手際が引き起こしたことだ。補償の対象や金額、方法を決めるにあたり、都は業者の声を丹念に聞き取り、誠実に対応する義務を負う。

 市場を動かすのは卸や仲卸、買い受けなどの人々だ。その主役が体力とやる気を失ってしまっては、都民の台所は機能せず食卓を守ることもできない。