COP22の会場内で開かれている産業見本市。外国企業が目立ち、日本企業の影は薄い=モロッコのマラケシュで2016年11月12日、久野華代撮影
【マラケシュ(モロッコ)久野華代】すべての国に地球温暖化対策を義務付けた国際枠組み「パリ協定」は、脱炭素社会への転換を巡り巨大な市場を生み出す可能性がある。マラケシュで開催中の国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)でも、「脱炭素市場」を狙い、各国の企業が多数参加しているが、日本企業の姿はほとんど見られない。ビジネス面での乗り遅れを懸念する声も聞かれる。
パリ協定は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑えることを目標とする。各国の研究機関などで作る「ニュー・クライメート・エコノミー」は、この達成に今後15年間で90兆ドル(約9900兆円)の投資が必要と試算する。
「パリ協定は大きなビジネスチャンスを生んだ。市場の成長が見込める」。ドイツの機械大手「シーメンス」の担当者は語る。英シンクタンク「カーボン・トラッカー」のアンソニー・ホブリー氏は「再生エネ事業はもうかる水準になっている」との見方を示した。
COP22の関連イベントとして開かれている産業見本市には、再生可能エネルギー関連など、温暖化対策に寄与する技術やサービスを持つ企業約150社が出展し、商談を進める姿が目立つ。だが、日本企業はルノーと合同で出展した日産自動車以外は、砂漠での農業技術開発に取り組む「鳥取再資源化研究所」(本社・鳥取県北栄町)だけだ。14、15日の「持続可能なイノベーションフォーラム」には自動車メーカーや銀行の首脳級ら約60人が登壇したが、日本企業からはゼロだった。
鳥取再資源化研究所の狩野直之さんは「参加してみて、環境分野で先進技術を求めている政府や企業が多いことが分かった」と話す。トルコなど7カ国以上と商談が進み始めたという。
途上国の環境対策を支援する国際機関「地球環境ファシリティ」の石井菜穂子事務局長は「欧州などでは、気候変動に配慮しないことが事業の持続可能性にとってリスクになると認識されている。政府も産業界も環境問題を本気で考え、こうした場で日本の声を発信する必要がある」と指摘した。