ようやく設置が見えてきた。しかし、知事選から4カ月。対応が遅すぎる。

 今春の熊本地震を受け、川内原発の一時停止を訴えて当選・就任した鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事が、有識者からなる県独自の「原子力問題検討委員会」を置くための予算案を12月県議会に提案することになった。

 県内にある九州電力川内原発は、1号機が定期検査で運転停止中だ。九電は熊本地震の影響を調べる特別点検も実施しており、知事は先週、専門家2人とその様子を視察した。

 当初、この視察結果も検討委で議論し、原発の運転再開の是非を判断するはずだった。

 だが、1号機が再び動くのは12月8日の予定だ。通常の議会日程を考えると予算案の採決は12月中旬で、運転再開に間に合わない。

 設置は9月議会でも提案できたはずだ。知事は視察後の会見で「検討委の場でみなさんに安全かどうかをはかって、結果を見て総合的に判断する」と従来の発言を繰り返したが、運転再開前に検討委をつくる気がなかったのでは、と疑いたくなる。

 県議会は原発推進の声が大きく、検討委設置の陳情を不採択にしたこともある。その抵抗を気にして慎重になったとみられるが、堂々と必要性を訴え、説得するのが筋だろう。

 原発を抱える道と県の大半が、自前で安全性を検証する専門家組織や制度を持つ。しかし、九電の原発が立地する鹿児島と佐賀にはない。遅れを取り戻すためにも、検討委の設置を急ぎ、機能させるべきだ。

 検討委の役割は大きい。火山噴火など地域の問題に即した安全性の議論では、国の原子力規制委員会の判断を補完することが期待される。地元の事情を踏まえた避難計画の見直しは自治体にこそ責任があり、検討委の専門的な知見が重みを持つ。

 三反園氏は稼働中の川内原発の即時停止を九電に要請し、拒否された後、気になる発言を繰り返している。「稼働しても稼働しなくても放射性物質はそこに残る」「私には稼働させる、させないの権限がない」

 原発の稼働に反対する判断を避けようと、弁解を重ねているように聞こえてならない。

 熊本地震で、県民の原発への不安は増した。それを減じる第一歩が検討委の設置である。

 カギを握るのが委員の顔ぶれだ。すでに固まっているようだが、原発への賛否や専門分野などから見て、バランスのとれた人選になっているか。知事の本気度が問われる。