フィリピンのドゥテルテ大統領は、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した後の米国の安全保障や貿易政策について世界的に先行き不安が生じている点を強調し、中国とロシアが主導する新たな世界秩序への支持を表明した。
東南アジアで人口2位のフィリピンの大統領である、歯に衣(きぬ)着せぬドゥテルテ氏は、同国も国際刑事裁判所(ICC)から脱退する可能性がある旨を示唆した。同氏の麻薬撲滅の闘いを残虐とする欧米に批判されていることが背景にある。
同氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出発する前、例によって率直な見解を述べたが、これは、先週の大統領選でトランプ氏が勝利したことで、米国の外交政策が流動状態に陥ったとする世界的な見方と一致した内容だ。
米大統領選に先駆け、ドゥテルテ氏は米国を攻撃し、中国とロシアを称賛した。これで、長年の米比同盟関係と、アジア太平洋地域の安全保障の均衡に疑問符が付いた。
ドゥテルテ氏は「中国とロシアが新たな秩序を作ると決めるなら、私はこれに真っ先に加わるだろう」と述べた。これは米国と国連を意識した発言とみられる。
同氏は、現在の各国の権力構造の下では世界中の紛争での殺りくが「絶えない」ことを嘆き、「米国だからというだけで、良いということにはならない」と言い切った。
ドゥテルテ氏は、約2000人の命を奪った同国の麻薬撲滅運動を米政府に非難されたことから、大統領就任後の4カ月間、オバマ大統領に対し侮辱的発言をするなど、米国への攻撃姿勢を強めてきた。
同氏は先月の中国訪問時に、1951年から安全保障条約を結ぶ米国からの「別離」を宣言したが、米政府関係者は正式な政策転換の通知は受けていないと話す。
ドゥテルテ氏の憤りは、フィリピンが米植民地だった時代に米国人が犯したとされる残虐行為に一部起因しているとみられる。また、同氏が20年以上市長を務めたダバオ市で、何年か前に起きた米国人司祭によるとされる虐待行為や、1人の米市民が関与したとみられる不可解な爆発事件などで、個人的につらい思いをしたことにも言及している。