総務省は18日、スマートフォン(スマホ)端末の過剰な値引きを規制する指針の改正案を公表した。2017年6月以降に発売するスマホの販売価格について「2年前の同型機種の下取り価格以上」とするように求めた。米アップルのiPhone7の場合は2万円前後に相当し、実質的に値上げとなる。消費者にとって負担増となるため、携帯大手は月々の料金を一段と値下げするよう求められそうだ。
来年1月をめどに指針を改正する。総務省は4月にスマホを1万円以上で販売するよう求める指針を出していた。月額の通信料金を下げる原資とするためで、安倍晋三首相の指示で昨年始まったスマホの「官製値下げ」の柱としていた。
今回の改正案は端末値上げを徹底させる内容。iPhone7なら「6」の下取り価格が目安になり、携帯3社の公表値は1万7000~2万6400円に相当する。「2年前の同型機種」が無い端末は調達価格が同程度の端末を参考にする。いずれにせよ「1万円を下回る販売は原則認めない」(総務省)。
携帯大手が販売店に払う奨励金も来年2月から規制を強化する。販売店頭で見かけるスマホ端末の「ゼロ円」販売を徹底的に封じ込める考えだ。
4月以降の一部端末の価格上昇は携帯大手の業績に短期的な追い風となった。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの17年3月期の営業利益はいずれも1兆円前後に達する可能性が高い。だが値上げは本来、通信料金を下げるための手段だ。一段の値上げを課した総務省には、3社に月々の通信料金値下げを促す次の対応が求められる。
3社は本音では端末価格を自由に決め、通信料金とのバランスを柔軟に見直したい意向を持つ。それだけに指針案をそのまま受け入れるとは限らない。総務省は指針案への意見を12月まで受け付ける。NTTドコモは「内容を精査し、必要に応じて当社の考えを述べる」と含みを持たせる。
ソフトバンクは指針案を議論するため総務省がこれまでに開いた会合で、機種によって自由に価格を決められるよう求めており、何らかの反論をする可能性がある。指針が施行されても3社が通信料を引き下げるとも限らず、消費者の負担減につながるかは不透明だ。