The Lost Files - #02 Submission
Submission
■脚本: Ryan Scott
■出演:John Barrowman, Gareth David-Lloyd, Eve Myles
■ラジオ放送日: 2011年7月12日
■時期: シリーズ2 後
■ジャンル: 深海もの
■私的JANTO指数: ★★★☆☆
海中で奇声のような声が聞こえるという現象が世界各地で報告される。録音した叫びを細かに解析したジャック達は、それがエイリアンの言語ではなく、英語で助けを求める人間の声であることを突き止める。さらにその発信源がマリアナ海溝だと分かると、イアントはトーチウッド1の元同僚で、現在は東京にいる海洋地質学者・カーリー・ロバーツに調査の協力を求める――というのがこのお話の冒頭部分。
この作品、イヤホンで聞いていると、そうでない時に比べて海水のチャプチャプする音や海鳥の鳴き声などがよりリアルに聞こえてくる。臨場感がぐんと出るので、お勧めです。そして、東京、東京ですよ。あの三人が日本にいることを想像するだけで、ワクワクドキドキ、興奮もひとしお。
さて、ジャック、グウェンとともに東京へ到着したイアントは、カーリーと懐かしい再会を果たす。トーチウッド時代にイアントに想いを寄せていたというカーリー。イアントもそのことを知っていたものの、既に付き合っていたリサの存在ゆえに、発展することの無かった二人の関係。リサ亡き現在、カナリー・ワーフの悲劇の思い出を共有する二人の間に、恋の花が返り咲くのか? そしてそんな二人にジャックが見せる反応は? なんてちょっとした恋のトライアングルが展開されることを期待していたら、カーリーは、ジャックとイアントの態度から二人の関係をあっけなく見抜いていしまう。「そんなに分かりやすい?」と慌てるイアントに、「こんなに狭い場所にいればね。お互いを見るちょっとした視線や、どこにどう触れたりとか、そりゃあ気づくわよ」と・・・。どこでも、誰からも、いつもバレバレの二人(笑)。それだけお似合いってことなのかしら。
さて、肝心の事件はというと、マリアナ海溝ですよ、マリアナ海溝。潜水艇で前人未到の域まで潜ってしまうトーチウッド+カーリー。潜水艇も水圧でミッシミッシと音を立て、ちょっとビクビク気味の3人。こちらも、NHKスペシャルのダイオウイカに負けない凄いものが出てくるんじゃないかと期待していると、出てきたのは、潜水服すら着ていない普通の人間の男。まあ、普通の男だったら、そんな深海で平然と立っていられるはずがないのだけど・・・。カーリーたちは、彼が50年前に潜水艇ゲルニカでマリアナ海溝に潜ったきり、消息を絶っていた二人の乗組員のうちの一人、当時50歳だったサミュエル・ドイルであることに気づく。
もちろん、彼がエイリアンに憑依されていることは明白。なぜ助けを呼んだのか、どうすれば助けてあげられるのか。エイリアンと対話を試みようとするのは、いつものごとく、グウェン。カーリーにしてみれば、「エイリアンと対話しようだなんて、彼女、頭大丈夫?」という感じらしい。案の定、エイリアンに目をつけられるグウェン。その純朴さからか、「カップケーキ・ガール」なんてあだ名すらサムつけられる。サムの話によると、自分ははるか昔にここへ落ちてきて、この星で適応出来る環境は、この海溝のブラックスモーカー(海底から出る高温の水が、硫化物と混じって黒く変色したもの)の範疇だけだという。そして、ここには自分以外の仲間もいて、その仲間を助けるために、誰か他の人間の体が必要なのだと伝える。しかし、それを知ったジャックは、なぜサムにとりついてから50年も経った今になって、やっと助けを求める気になったのかと疑問を抱く。その答えは、エイリアンが実際に欲しているのは、自分が持つ過去の辛い思い出を消すための、別の新しい記憶だということ。サムに憑依してから、彼が生きた50年間分の思い出と記憶を、それと同じ年月をかけて味わいつくし、50年後の今、新しい記憶の糧が再び必要になったということらしい。
4人は、エイリアンの対応を後回しにし、サムにボコボコに叩かれたせいで故障した潜水艇からゲルニカに乗り移り、海上へ引き上げることを決める。ところが、ゲルニカの中にサムが現れ、サムからカーリーへとのりうつったエイリアンに、グウェンを捕らえられてしまう。ジャックは、グウェンを解放し、代わりに自分の記憶を使えと提案するものの、ジャックの記憶は悔恨に満ち溢れているとしてカーリーはそれを拒否。こうなると、エイリアンが何故他の誰でもなく、グウェンに目をつけたのかもよく分かる。ジャックの場合は記憶の量に不足はないものの、質に問題ありありだし、カナリー・ワーフを経験したカーリーとイアントもちょっとね・・・という感じ。その点グウェンは、オーエンとトッシュの件があるのにしても、まだまだ幸せいっぱいということなんだろう。
しかもこのエイリアン、グウェンの頭の中をのぞいて、「ジャックでいっぱい」的なことを言ってくれる。そしてイアントに対しは、「ジャックはあなたのことよりも、グウェンのことをより気にかけているって、不安にならない?」だって!JANTOファンの萌えどころを巧みにくすぐってくれるじゃない! 「耳を貸すな!」ってジャックは言うけれど、言うべきことはそれじゃないのよ・・・・。「そんなの嘘だ、お前のほうが大切だ」とか、「愛してる!」とか、そういう事じゃないのぉぉぉ? ジャックのフォローの下手さは改善の余地なしなの? ジャックとの関係の不安定さをエイリアンにまで指摘されちゃって、ほんと可哀想なイアント。
でも、この不安定、不確実さが、Submisson の醍醐味だったりすると思う。カーリーとの会話の中で、The Dead Line にも負けないくらい、印象に残る言葉をイアントが洩らしている。
I love him, but......he'll never be mine. Life will always move on for him. One day he'll leave me. He's got no choice. He's become an expert at letting people go.
カーリーの体に入ったエイリアンが挑発するような問いかけをイアントにしたのも、この会話が先にあったからかもしれない。グウェンの頭の中がジャックでいっぱいっていうのは、嘘じゃないと思うけど。グウェンは、この場にリースがいなかったことに感謝すべし。
海溝の環境の中でしか生きられないエイリアン。潜水艇が浮上すれば無事ではいられない= 憑りつかれていたカーリーも道連れになって死亡。ジャックはそう固く信じて疑っていなかったらしく、カーリーを救おうとして懸命に心肺蘇生措置を施すイアントに、どこか無関心。でもね、カーリーに電話して彼女を事件に巻き込んだのはイアント。カーリーがエイリアンに攻撃され、それをイアントが救えなかったなんてことになったら、リサの二の舞になるんじゃない? 自分のせいでまた誰かが死んだって、イアントだったら絶対自分を責めると思う。だから、ジャックはもうちょっと、「僕も助けようと努力しています」という態度をみせても良かったと思う。そういえば、死を目前にしたエイリアンに対しても冷たかった。心穏やかに死ねるなら、あの世で仲間が待っている的なことくらい、嘘でも言ってあげればいいのにと思うんだけど、やっぱり人間に危害を加えてきたってことで、そういう甘いことはしないのかな。
面白い。面白いけど、イアントとカーリーの友情に多少は嫉妬するジャックも見たかったなぁという、そんな心残りを感じずにはいられない作品だった。
The Lost Files -#01. The Devil and Miss Carew
久しぶりにラジオ・プレイ。役本人の声で聞けるというというだけで、こうも楽しくなるものなのか~としみじみ感じたりして。
The Lost Files は、"The Devil and Miss Carew " "Submission " そして、あの"The House of the Dead " の三作が入っているボックスセット。単品でいいんだけど~、"The House of the Dead"だけでいいんだけど~、などと多少愚痴りながらも、クリック一発購入した自分。
ボックスの写真はCoEの時のものだね~。この年のカレンダーもこんな感じのやつだった。三作品、それぞれジャケットの絵が異なるのだけど、アマゾンからはこの写真しか使えないから仕方ない。イアントがメインになっているジャケはないので、まあいいか、と思うことにする。それにしても、ちょっとふっくらしたね~、彼。シリーズ1の頃の、ひょろひょろさが消えた。相変わらずの野菜摂取不足で、テイクアウトものばかり食べていた結果なのかもしれない・・・・。
そんなことより、感想。
The Devil and Miss Carew
■脚本: Rupert Laight
■出演: John Barrowman, Gareth David-Lloyd, Eve Myles, Kai Owen
■ラジオ放送日: 2011年7月11日
■時期: シリーズ2 後
■ジャンル: 悪魔もの
■私的JANTO指数: ★★☆☆☆
ひとことで言うと、「フツー」。ジャック/イアント、グウェン/リースの安定した組み合わせで心穏やかに聞けるという点はいい作品。ジャックとイアントはずーっと一緒に行動しているし。まるで『夜の旅人』の時の2人みたい。グウェンは単独行動に出たあげく、ピンチに陥り、救えたかもしれない相手も救えなかったという、いつものパターン。ジャックからのお叱りは今回もなし。でも、リースオンリーなグウェンなら、これくらい軽く見過ごしてしまえる自分を発見。
あらすじも細かく書くほどのものではない。癌を患い死を間近に迎えた80過ぎのお婆ちゃんミス・カルーが、健康と若さを取り戻すのと引き換えに、悪魔(ラジオの中から話しかけてきて、自らをフィッツロイと名乗る)、と契約を結ぶというお話。冒頭に、老人ホームに入所しているリースの叔父ブリン・ウィリアムズが同じように悪魔から誘惑され、断った結果、命を奪われるというエピソードが入っている。この悪魔、自分の棲家となる場所を求めて宇宙をさ迷い、地球に目をつけたものの、どうやら電波が妨害となって下りて来れないらしい。そのため、地球上から電気を消滅させるべく、コンピューター・テクノロジーに詳しいミス・カルーを含め、役立ちそうな複数の人間にラジオから勧誘。協力の見返りとして、彼らが欲する若さや健康を与えていたという。頻繁に起こる停電に、ハブでは皆が代迷惑。そんな中、ホームにブリンの遺品を取りに行ったグウェンは、入居者の一人から、死の瀬戸際にいたミス・カルーが突然社会復帰を果たしたことを知る。不審に思ったグウェンはイアントに頼み、ミス・カルーの情報を入手。記者と偽って、ランニング中のミス・カルーに事情を聴きに行く。
グウェンが単独(独断)でミス・カルーの調査をする一方、ジャックとイアントは、郊外の発電所を調査。ここへSUVで向かうときの二人の会話が楽しい。道がデコボコなため、「荒っぽい乗り(ライド)になりますよ」というイアントの言葉に、ジャックがセックスを引っ掛けて答えたり、繁みの陰に駐車する際に、「妙な考えは起こすなよ」と言ったり。妙な考え起こしているのはアナタでしょ~、と(笑) ジャック節、健在。発電所に忍び込んだ2人が、古いエレベーターを見つけて地下へ下りると、そこは年代ものの品が集まる骨董品店のような部屋になっており、古いラジオから音が流れている。誰もいないのに何故ラジオが鳴っているとのかと不思議に思っていると、突然ラジオの声がジャックの名前を呼び、2人を驚かせる。
フィッツロイさん、自らの計画をペラペラと告白。ジャックは、「別の場所を探してやるから、地球は諦めろ」と提案。電気が止まると、都市の機能上、色々面倒なことが起きるし、何世紀も昔の蝋燭の生活に戻るのも考え物だから(環境にはいいけど)、気持ちは分かるけど、今回はあきらめて、という感じ。なんか軽い・・・。ところが、フィッツロイ曰く、電力消滅計画を中止するのは、実行数分前となった今ではもう遅いということで、これをストップ出来るか否かは、ミス・カルーと共にいる(捕らわれている)グウェンに掛かることになるのだけど…。
この解決方法は、ある意味、すごかった。成功まであと数分というところで、アンテナが不調を起こす。それを直しにミス・カルーが屋根に上り、誤まって地上に落下。そのせいで停電のタイミングが合わず、計画は水の泡に。こんなのでいいのかと思うほど、あっけない結末だった。その場にいたグウェンは何も出来ず、全身打撲のミス・カルーの最期を看取っただけ。というか、グウェンが下からごちゃごちゃ叫ぶから、ミス・カルーの気が散って、足を滑らせたんじゃないかと思ったりして・・・。それでも、悪魔の降臨を阻止したのは、グウェンの手柄ということになるのか? それとも、パソコンの検索履歴からグウェンの居場所を割り出し、救出に来たリースの手柄になるのか。1つ確実なのは、ジャックとイアントは、何の役にも立っていなかったということ――(この2人は仲良くさえしていてくれれば、もうそれだけで……^^)
こんな感じで、すごくつまらない訳ではないけど、すごく面白かったわけでもないというお話。ミス・カルーのように独立心旺盛な人にとって、他人からスプーンを口に運んでもらわなければ、一人で食事もとれないこという状況が、どれほど屈辱的なものだったかは理解できる。このあたりで、ある程度の同情が出来るので、視聴後、感慨深さを何も感じなかったと言うと、それはそれで嘘になる。
だとしても、セットの中では、やはりインパクトの一番弱い作品。あくまでも、JANTO的に、ということだけど。
Consequences - Consequences
■著者:Joseph Lidster
■出版年月: 2009年10月
■時期: シリーズ2以降
■ジャンル: ミステリー、タイムループ
■私的JANTO指数: ★★★★★
Ianto walked right up the water tower and turned back to face her. "Welcome to Torchwood, Nina Rogers."
作者はラジオプレイのLost Souls, オーディオドラマのIn The Shadows と同じJoseph Lidster。前者はともかく、後者には大満足だっただけに、このConsequencesにも期待をかけていた自分。他の作品でエキストラ的に登場していたカーディフ大学の学生ニーナ・ロジャースが主役のお話で、どうして彼女の行く先々で不可思議な事件が起きたり、その都度、黒のSUVやミリタリー・コート姿の男性に遭遇したりしたのかが、種明かしされる。気取ったところのない明るい性格のニーナに好感を抱くようになっていたこともあり、自分にとっては満足のいく内容だった。スーツの似合う男性が好きというニーナの好みが、ジャックのイアントに対する独占欲をチラリと垣間見せてくれたりもし、JANTO度も申し分ない。
お話は、ニーナが自らの体験をもとしにして書いた小説"Consequences"の原稿を、出版社のブロンドの女性に読み聞かせるというスタイルをとっている。そのため、Consequences (by) Joseph Lidsterというタイトルページから読み始めていくと、数ページあとに、再びConsequences (by) Nina Rogers というタイトルページが出てくるという、ちょっと面白い構成になっている。ところどころでブロンド女性とニーナの会話が挟まってきたりするのだけど、語り聞かせている物語と2人の会話が混同するような問題は全く起きず、むしろ、「ちょっと待って、それはどういうこと?」「で、それからどうなったの?」という合いの手的な役割を果たしながら、読者を上手く案内してくれている印象がある。
メインとなるニーナが書いた物語は、主人公の名前も本人と同じニーナ。これまで彼女が登場した小説のエピソードが沢山出てくるので、全部読んだ人にとってはプラスアルファの楽しさを感じられると思う。
ぶっちゃけて言ってしまうと、今回のエイリアンは(エイリアンと呼んでいいのか定かでないけど)、「本」。「本」と言えば、一話目の19世紀を舞台にしたBaby Farm で、当時のトーチウッドのリーダー、エミリーが、戸外で拾った本を図書館に隠すというエピソードがあるのだけど、そう、あの時の「本」が、この「本」だったりする。あくまでも「本」なので、さすがに人を食ったり襲ったりはしないものの、「面白い物語を語りたい」という本本来の願望(本能?)を持っている。そのため、ニーナがトーチウッドに遭遇したことがあると知ると、「トーチウッドって何?」「トーチウッドをもっと知りたい!」という欲から、ニーナの行動をコントロールするようになる。ニーナ自身は何故自分がその場所に来たのかも分からず、なぜその度に "Captain Cheese " や黒のSUVと遭遇するのかも分からない。もしかして自分は尾行されているのかも?、そんな風に感じてしまう。ただ、これだけなら大した問題ではない。困るのは、ニーナの体験が一旦本の中に綴られてしまうと、その記憶が彼女の頭の中から消えてしまうということ。そのせいで、ニーナの精神は非常に不安定な状態になってしまっている。そんなある日、ニーナは図書館で探し物をしている様子のイアントに遭遇。見覚えのある彼にこれまでの事情を語ったニーナは、本棚から見つかった「本」と共に、ハブへ連れて行かれる。そこで"キャプテン・チーズ"(ニーナがジャックにつけていたニックネーム)と再会し、今自分に起きていることと、「本」の真相を知る。
このイアントとニーナがハブに入るシーンが、すごくいい。透明リフトを使って下りていくのだけど、最近自分が誰なのかすらよく分からないと語るニーナに、イアントが共感を示しながら、「自分も以前はガールフレンドがいたけれど・・・」と言いかけると、下で待っていたジャックがイアントを抱き寄せて、軽いキスをするというっっっ!!!! (机バンバン!) イアントのことをお気に召していて、あわよくばと狙っていたニーナの、「あ゛~も~、ゲイなのね~っっっ!」という反応が、今どきの女子っぽくて面白い。そうそう、いい男はみんなゲイなのよ、と彼女に同情。
この後、過去でエミリーが本を図書館に隠したのは、本の中に、そうするように未来のジャックから指示するメモ紙が挟まっていたからだったということが分かる。ジャックは自分の筆跡で書かれたメモ紙を見つけて驚きつつも、時間軸を狂わせないために、この本を過去に送り返す必要があると判断。そうすることにより、ニーナもまた、本の影響から免れられる可能性がある。ところがニーナ、なかなか鋭い。そんなことをしても、また百年たてば、百年後の自分が同じ目に遭うじゃないかと指摘。そうだそうだ、そのあたりはどうなんだと自分でも思っていたら、イアントが、「それでもこの時点では問題が解決する。そしてそのことが、最も肝心なこと」と説明する。そして、イアントがそう言うならそれでいいや、と簡単に納得した自分。
ところが、そう言うイアントも、最初は「たまには時間軸狂わせたろ」みたいな調子で、ジャックと2人で、考えられるありったけの方法を使って本を破壊しようと試みる。ところが何をやっても効果なく、汗だくになって笑っている二人の姿が、なんとも微笑ましかったりする。
"... it's just one of those mysteries that the universe likes to throw at us from time to time." He smiled, wathching Ianto through the glass. "Like love...."
本が一体どこからやってきたのかと問うニーナに、ジャックが答える台詞の一部。状況としては、本を過去に送り戻すためにリフトの動きを調べているイアントを、ジャックがオフィスの窓から眺めながら言うという所なのだけど、ここ、トーチウッドのノベルの中でも、1位と2位を争うくらい、お気に入りの場面になっている。ものすごーく間接的ではあるけれど、「愛してる」って言ってるも同じじゃない? もう、どうしちゃったのよ、今回の2人は! 抱擁したり、キスしたり、腕組んだりと、ほんわかラブラブモード全開になっている。しかもグウェンの存在が全く邪魔になっていないというのが素晴らしい。(実は"like love" の後に "like death "という言葉も続くのだけど、そこは敢えて無視することにする)。
さて、リフトは出現するものの、なんとその場所が、あの「スカイ・ポイント」! 懐かし~い。3作品に出てくるなんて、大活躍じゃない、このマンション・ビル。そして登場するたびに、どんどんボロボロになっていくという……。
そして本を無事に過去へと送り戻した3人。ニーナの、イアントがストレートになった時に備えて自分の連絡先を教えておく前向きさと、偉大なキャプテン・ジャック・ハークネスに向かって、「あんたは自分大好き人間」「超ゲイっぽい」と言い放つ大胆さが素晴らしい。ジャックはニーナをトーチウッドのメンバーに入れようと考えていたらしいのだけど、ニーナはエイリアンの世界なんてこれ以上知りたくもないし、トーチウッドの仕事にも興味がないと断言。自分が望むのは、普通の生活を取り戻すこと言って誘いを拒否する。この辺、グウェンとは大きく異なるらしい。そして本が遠くへ行ったことで気分も回復したニーナは、「全てを忘れられる魔法のピル」もあるというジャックのアドバイスを退け、友人と住むアパートへと戻っていく。
ニーナが書いた"Consequences"の物語はここでおしまい。めでだし、めでたし。
でも実際は、めでたしめでたしではなかったりする。記憶は本によって奪われ、ジャックやトーチウッドの存在も忘れることになっていたはずなのに、どうして体験記ともいえる小説が書けたのか。実はジャックは、本を過去に送ったからといって、その影響から完全に解放されるという確証はないと言っていた。そして、それがその通りになってしまったらしい。
で、ここで物語の聞き役だったブロンド女性が、実はカツラをかぶって変装していたグウェンだということが明かされる。明かされるといっても、途中からなんとなくそうなんじゃないかな~、という印象はあった。ニーナがいつトーチウッドと出会い、どれだけ彼らのことを覚えているのかを確認しながら聞いているという感じがあったから。そしてグウェンがニーナに対してしたことは・・・・・・もちろん、レコン!差し出されたレコン入りの水を飲んだニーナは、その後、路上で目を覚ます。酔いつぶれてしまったと思い込んでいるニーナが、これからは夜遊びを慎むべきだと誓いながら家路へと向かうと、途中、スーツを着た若い男性とすれ違いざまにぶつかる。何気に後ろを振り返ると、その彼も同じように立ち止まって、ニーナの方を振り返る。そして微笑みながら軽く手を振ると、再び前を向いて歩き去っていく。この爽やかなラストも大好き。きっとこの後、イアントはハブに戻って、「She'll be all right」とジャックに報告しているんだろうな。
こうしてConsequences は、リフトに投げ入れられた本がエミリーによって拾われるという、最初の物語に戻っていく。読んでいるほうも、つい、もう一度初めから度読み出してしまいそうになる。一冊の中に色々なテイストの物語が詰まった、バラエティー豊かな短編集だと思う。
これにて、ノベルのシリーズは一応終了。沢山あると思っていたけれど、読み終えてしまうと、なんだか無性に寂しい。もっとトーチウッドの活躍を読みたいっっ! ミラクル・デイ以降のシリーズもあるのだけど、そっちは未読。同じトーチウッドとは思えなくって、食指がまったく動かない。多分これからも読むことはないんじゃないかなぁ。ただ、ジャックご本人様が書いたExodus Code はパラパラとではあるけど読んであるので(イアントの名前が出てくる箇所ばかり何度も読み返し、他はまったくという・・・・・・汗)、きちんと読み直した折には、感想など書きたいと思う。
Consequences - Virus
■著者:James Moran
■出版年月: 2009年10月
■時期: シリーズ2以降
■ジャンル: ウィルスもの
■私的JANTO指数: ★★★★★
" Where's the antidote?"
前作The Wrong Hands の続きもので、「ガス漏れによる爆発事故」(お決まりのカバーストーリー)で崩壊したスーパーThe Happy Price のニュースがテレビで流れている場面から始まる。事件の目撃者として、例の女子大学生ニーナがインタヴューに応えていたり、怒り狂ったスワンソン警部からの電話が入ったり、ハンサムな消防隊員にどっちが先に目をつけたかジャックとグウェンが言い合ったりと、なかなか楽しい場面になっている。この時、イアントは買い出しのため留守中。するとそこへ、一人のエイリアンが登場。前回登場した赤ん坊エイリアンのの父親だという彼。リフトにさらわれて迷子になっていた息子をようやく探しあて、これから連れて帰ろうとしていた矢先、トーチウッドによって殺されたとジャックたちを責める。そして復讐のため、意識はそのままに身体能力のみを奪うというウイルスをグウェンとジャックに撃ちこんだのだから大変。辛うじて一人難を逃れたイアントは、グウェンとジャックを救うため、解毒剤を求めて奔走するというお話。
プロットの練りが若干甘い感じがする(良く出来たファンフィクションという読者レビューもある)ものの、愛するジャック(ついでにグウェン)を救おうとするイアントの必死な姿には、素直に感動できる。
感動といえば、リースに対するグウェンの愛にも感動。動けなくなった自分の世話にリースが一生を無駄に費やさないため、もし解毒剤が見つからなかった場合は、リースには事実を告げずに、別の方法で死なせてほしいと頼むグウェン。そして彼女と違って死ぬという選択が出来ないジャックは、イアントにも同じように一生を無駄にさせないため、自分を冷凍保存にして、存在を忘れてほしいと頼む。珍しく、弱気のジャック。このときイアントは、最悪の状況になったら望みどおりにするとグウェンに答える一方で、ジャックに対しては、最後の選択は自分に任せてほしいと言う所が、ニクイ。
地球外のウイルス、それもKagawa Virus という、なんとも日本的な名前のウイルスなのだけど、そんなものの解毒剤をどうやって手に入れるのだろう。もしかしてイアント自身がタイムトラベルなんかやっちゃって未来に行くんだろうかとか、マーサに頼んでドクターから持ってきてもらうんだろうかとか考えていたら、似たような症状で病院の診察を受けた患者の履歴をネットで調べるうちに、割と簡単に目的に辿り着いてしまったという・・・・・・。ベイビーを殺されたダディーにウイルスを売ったのは、エイリアンの物品で商売をしているアレックスという人物で、この彼がちゃんと解毒剤も持っている。しかも彼はトーチウッドの存在も知っていて、彼らを憎んでいる男にウイルスを売れば、解毒剤を求めて残りのメンバーがここを尋ねてくること、その結果高額で取引が出来ると計算をしていたことが明らかになる。腹黒い奴だ。
解毒剤の効果が期待できるのは24時間以内。それまでに要求された金額を銀行から用意するのは無理だと知っているイアントは、一旦ハブに戻り、万が一自分が戻らなかったときの対処法をマーサに書き残す。そして鞄一杯に武器を詰め込むと、ジャックとグウェンに別れのキスをして、再びアレックスのもとへと向かう。
ここからは、本編で頭突きとスタンガン・アクションくらいしかなかったイアントの、ハードボイルド風活劇が楽しめる。なんだかイアントらしくな~いという気がしないではないものの、CoEではコンクリート詰めにされたジャックを救うためトラクターで壁に突っ込んじゃった彼のことだから、やる時はやる人なんだと思う。でもスーツの下は肉体派、っていうイアントはちょっと想像したくないな・・・。
"So what was it, then?"asked Rhys. "What pulled him back? We couldn't hear." Ianto looked at Jack, who grinned and said, "A gentleman never kisses and tells."
解毒剤を手に入れはしたものの、これが投与しただけでは効かないという、なんだかファンのためのご都合主義的な代物だったりする。だって、意識を取り戻すには、「これだという幸せな記憶」が必要だっていうんだもの。それもパーソナルであれはあるだけいいみたいな・・・。そこでイアントはリースを呼び寄せ、彼にグウェンを任す。2人の出会いからこれまでの思い出をリースがグウェンに語ってきかせると、あっという間にグウェンはカムバック。一方、イアントが受け持つジャックはというと、反応がなかなか現れない。そりゃあ長いこと生きてきたジャックの人生の中の「これぞ」という楽しい思い出が何なのかなんて、そうそう簡単に分かるものじゃない。もしドクターとローズとの思い出だったらどうする・・・、イアントじゃどうにもなんないじゃん!なんて思ったりもする。
実際イアントはジャックに何を話したのか。効果がなかった失敗例を挙げると、ジャックを楽しませようとして、チーム全員が他のメンバーと服を交換して着たこと(グウェンはジャックの、トッシュはオーエンの、オーエンはグウェンの、イアントはトッシュの服)、それを気に入ったジャックが、その夜イアントに再び同じ服装をさせたこと、グウェンの結婚式で一緒にダンスをしたこと(あれは視聴者的には問題アリだと思うのだけど、イアント的にはOKなのか?)など。正直、読みながら、その程度の事じゃあダメでしょう~、それくらいの思い出しか2人の間にはないのか~????と心配になった。 イアントもそれじゃダメだと分かったのか、最後はちょっと考えてから、リースとグウェンの存在を気にしつつ、2人に聞こえないようにジャックの耳元でこっそり・・・・・・。すると、ジャックが見事にカムバック! 一体何を話したのー????!!!!! 私も知りたいよぉぉぉっ!!!! でもストップウォッチと同様、今回も真実は謎のまま・・・。
グウェンとリースが帰ったあと、甘々ムードの2人。もし解毒剤が手に入らなかったら、本当に自分を冷凍にして放り出すつもりだったかと問うジャックに、イアントはずっと世話をするつもりだったと答える。「その先の夜は2人の間に言葉は必要なかった―――」と締めくくる一文の中に、「これからは、言葉でなく、体で語り合った」という隠れた意味を読み取った気になったのは自分だけだろうか・・・。いや、そんなはずはない。
というわけで、JANTO度は満点のVirus 。あまりのfluffyさに、二話に渡って語られたエイリアンの親子の悲劇は、ほとんど頭に残らない。リフトに浚われた赤ん坊は、生き延びるために本能的に人間を利用しただけだし、ようやく見つけたわが子を目の前で失ったパパエイリアンの気持ちも、同情するに難くないものだけど。
今回のお話で学んだこと。イアントのことをTea Boy と呼んではいけない。スーツを冗談の種にしない。どちらも彼をマジ切れさせるようです。
Consequences - The Wrong Hands
■著者: Andrew Cartmel
■出版年月: 2009年10月
■時期: シリーズ2以降
■ジャンル: マインドコントロール
■私的JANTO指数: ★☆☆☆☆
"Food food food," said the cooing voice in her haed. "Eat eat eat." "Soon baby, soon," Crooned Gwen.
途中から意外な展開へと話が進み、読み終わった時には、最初の印象と異なり、「面白かった!」と思えた作品。
あらすじはこんな感じ。
体を真っ二つに切断されたドラッグ・ディーラーの死体が発見される。高熱によって綺麗に塞がれた切断面から、地球外の武器によるものだとジャックは確信。ドラッグ・ディーラーの若者たちが屯する The Machen Estate を偵察しに行ったジャックは、待ち合わせの時間に遅れてきたグウェンに理由を訊ねる。するとグウェンは、「ドクター」に会っていたと答える。それが婦人科系の医師のことだと分かったジャックは、"ジャック叔父さん"になれる可能性を期待するものの、グウェンはトーチウッドにいる限り、子供を産むつもりはないと話す。がっかりするジャックに、グウェンは血筋の関係するUncleは無理でも、名付け親くらいにははなれる可能性くらいは残っていると励ます。
The Machen Estateにある建物に忍び込み、目当てのものと思わしき銃を見つけたジャックは、ハブへ早速と持ち帰る。ところがそれを見たイアントは、それがまだ一度も使われたことのない新品であることに気づく。さらにその仕様から、対となるもう一つの銃がどこかにあるはずで、2つを組み合わせて使えば、脅威的な破壊力をもつ兵器になること、それに加え、自爆用のスイッチもついていることを発見する。
この捜査の途中、グウェンはThe Michen Estate の向かいにあるスーパー・マーケットThe Happy Price から出てきた一人の若い少女を、からかう様に付き纏うディーラーの若者たちから救おうとする。パムという名のその少女は、乳母車の中に男の赤ん坊を連れ、グウェンはその赤ん坊の愛らしさに、心を奪われる。そんなグウェンに、可愛くあることも赤ん坊の生存能力の一つだと、ジャックは淡白に語る。
ところが、グウェンがその赤ん坊をつい抱き上げたことで、事態は急転換。赤ん坊からやっと解放されたとパムが一方で、グウェンは何かに取り付かれたように赤ん坊をあやしながら、Hppy Price のベビー商品売り場へと乳母車を押して歩き始める。我を失った様子のグウェンを目の当たりにしたジャックは、ハブにいるイアントへ「あるもの」を用意して持ってくるように指示をする。そして到着したイアントから一枚の紙を受け取ったジャックは、グウェンの目に入るように、すれ違いざまにそれを宙へと放る。紙に印刷された人物の顔写真を見たグウェンは、怒るかのように泣き喚く赤ん坊の声を初めて無視し、「リース…」と呟く。
グウェンを母親代わりとして支配することに失敗した赤ん坊(もちろん、エイリアン)は、再びパムをターゲットにする。しかし一旦自由を取り戻したパムは、再び身心を支配される苦しみを味わうよりはと、乳母車の中にあった銃を持ち上げ、自爆装置のスイッチに指をかける・・・・・・。
で、感想。
冒頭に出てくる発見された遺体の様子から、物語への興味はすぐに引き出されたものの、ドラッグ・ディーラーの若者たちを疑っていた前半部分は、正直、ちっとも面白くなかった。前作まで登場していたオーエンとトッシュが急にいなくなっていて、そのことが当然のことのように扱われているのにも違和感を感じたし、ほんの一瞬とはいえ、ジャックとグウェンが「恋人同士」の振りをしたり、グウェンの赤ん坊を巡って2人があーだーこーだと想像しているのも、なんだかなぁ・・・という微妙な気分だった。そして最悪なのは、しつこいほど何度も出てくる「Nobody Knows I'm a Lesbian」というフレーズ。別にレズビアンがどうのこうのというわけではなく、これ、若者たちのリーダーらしき少年が着ているTシャツの文字なのだけど、それを彼の名前代わりとして使っているため、「Nobody Knows I'm a Lesbian は」、「するとNobody Knows I'm a Lesbian が」、 「しかしNobody Knowsは」.と、クドイほど何度も繰り返される。そう、まさに「じゅげむじゅげむ・・・」と一緒。うるさくて仕方ない。ピーターでもニックでも何でもいいから、とにかく他の名前で読んでくれと、本気でイラついてきた…。何事もやりすぎは禁物だと思う。
ところが、赤ん坊の正体が分かってからは、これまでの否定的な気分が嘘だったかのように、面白くなった。そうか、グウェンの産婦人科の話もこれの伏線だったのか~と、納得。それなら許せる。もしかしてこれはGwackなのか?と不安に駆られたものの、最終的にはグウェンのリースへの愛がエイリアンの力を打ち破った!というお話で、ジャックがグウェン/リース間の愛の強さを信じていたっていうのも、いい。赤ん坊が実は苦手、という人もきっと楽しめると思う。
今回のイアントは前回と同様、どちらかというと舞台裏の人。それでも、ジャックの指示を忠実にこなす、頼りになる人物という印象はある。コートの裾を翻したジャックとスリー・ピース・スーツのイアントが、2人並んでスーパーの通路を歩く姿は、想像するだけでかっこよく、これにはつい顔がにやける。実は、次のお話がこの物語の後日譚になっていて、そちらではイアントが立派に主役を務めている。今回の出番の少なさはそれで十分カバー出来るので、まったく問題なし(^^)!