TPPって何?
TPP承認案・関連法案が先日、強行採決されました。
山本農相の二度に渡る失言問題があり、また、採決も議院運営委員会に相談無く行われたこと、さらに、国会対策委員長が「強行採決し、ぐじゃぐじゃになる結果を経験した」と発言するなど、法案の中身そのものよりも、政局的な面ばかりがクローズアップされています。
一方、次期アメリカ大統領に内定したトランプさんは、選挙公約で「TPPから撤退する」と宣言し、これによって多くの指示を得たとの説もあります。
政治的にとても重要な課題であるTPPですが、
- そもそもTPPって何?
- なんでこんなに反対意見が多いの?
って聞かれても良くわからないってことありませんか?
そこでTPPについて、あらためて調べたことを超ザックリと記したいと思います。
*本ブログでご好評?をいただいている「超ザックリシリーズ」と同様、概略を理解することを最優先に、まるっとまとめた内容となっています。乱暴にはしょった部分がありますこと、ご了承ください。
TPPの概要
TPPとは、Trans-Pacific Partnershipを略したもの。
日本での正式名称は、「環太平洋経済連携協定」となります。
太平洋をぐるっと囲む国々で、経済に関するルールを作って、お互いに発展していきましょうというものです。
そのルールとは、ズバリ、経済の自由化です。
大本には、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)という構想があり、TPPはその中で、実際に交渉がスタートしているものなのです。
TPP参加国
TPPにすでに加盟している国は
シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイ
の4カ国です。
TPP交渉国
TPPに加盟することを前提に交渉している国は、
アメリカ・オーストラリア・ベトナム・ペルー
マレーシア・カナダ・メキシコ・日本
の8カ国です。
出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022863.pdf
現状、中国・韓国・インドネシアの3カ国は加盟見送りとなっています。
TPPにおける経済の自由化とは?
TPP加盟国の間で、経済の自由化というルールが決められるのですが、これは、
物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみではなく、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルール作りのほか、新しい分野(環境、労働、「分野横断的事項」等)を含む包括的協定
出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022863.pdf
となっています。
わかりやすく書くと
- モノが輸入されるときの関税を無くすか、関税率を下げましょう
- 金融、通信などのサービスでも、同じようにしましょう。
- 投資や保険、医薬品など、数量制限とか品質などで関税以外の要素で輸入を制限している(非関税障壁)ものについてもルールを決めましょう
- 環境や労働など決まりがないもの、複数の分野に関係するものにも、新たなルールを作りましょう
ということですね。
大枠は、関税、非関税障壁、特段決まりがないものについて、ガバッとまとめて(包括的)ルールを決めましょう、ということです。
こう書くと簡単なように思えますが、具体的に落とし込んでいくと、とてもやっかいなのです。
まず、品目がやたらに多いですよね。
そして、品目ごとに個別のルールを決めるという膨大な作業が必要です。
さらに、個別のルールはそれぞれの業界の利害に直結するので、あちらを立てればこちらが立たずでとなり、国同士の調整以前に国内での調整が大変なんですよね。
そんなこんなもあって、TPPには賛成・反対と意見が分かれていたのです。
TPP賛成・反対の各意見
賛成・反対、さまざまな意見がありますが、代表的なのは概ね以下の通り。
TPPに賛成
- 関税が撤廃・削減されると、関税率の高い肉や野菜、果物などの農産物や、乳製品などの輸入食品が安くなる。
- 同じく、自動車や精密機器など日本からの輸出品が海外で安く買えるようになるため、輸出が増大する。
- さまざまな分野で、企業は海外に進出しやすくなる
- 大手の製造業など、多国籍企業にとっては、材料品や半製品等の企業内貿易がやりやすくなり、利益が増える。
TPPに反対
- 関税が撤廃・削減されることで、安い農産物が大量に流入し、日本の農業に大ダメージを与える。
- 海外の安価な商品が大量に流入することので、デフレになる。
- 食の安全基準が緩和化され、食品添加物・遺伝子組み換え食品などが大量に入ってくる。
- 医療保険の自由化や混合診療の解禁によって、国民保険制度が圧迫され、また、医療の格差が広がる可能性がある。
- 外国人労働者が大量にやってくる。
TPP賛成・反対それぞれの立場
上記のように、関税ひとつとっても、立場が変われば、損得が変わります。
TPP賛成派は当然、輸出メインである業界。日本では主に製造業ですが、今でも日本の「経済界」は製造業が主流なので、賛成という立場を取っています。
逆に、最も打撃を受けるのは農業関係ですよね。
農家さんはじめ、業界あげてTPPには大反対。それに後押しされて「農林族」と言われる先生方が、「重要五項目は死守する」とがんばっておりました。
で、どんな結果になったか?
例えば牛肉では、38.5%から協定発効時に27.5%にまで引き下げ、さらに、協定発効から10年で20%に、16年目以降は9%に段階的に引き下げられることになりました。
このように、品目ごとに段階的に細かく設定されたのです。
議論不足?
議論は尽くしたか?
自民党は、「議論は尽くした」と言いつつ、民進党は「まだ不十分」と言い、与党である公明党もまだ全面賛成とは言えない状況のようですが・・・、これは、日本が独自に設定している高い安全基準が、TPPに加盟することで脅かされる可能性がとても高いことに起因しています。
農作物の遺伝子組み換え
私個人としては、まだまだ議論の余地があると思っています。
関税は、まぁ、難しいとは思いますが、産業の状況と関税率の話ですから、いくら議論したところで、どうにもなりませんよ。
最終的には、補助金でカタをつけるんでしょ?と思うのです。
で、本当の問題は非関税障害にあたる項目ではないかな?と。
わかりやすいのが、農作物の遺伝子組み換え。
原材料に遺伝子組み換えによる農作物を用いた食品には、日本では相当の制限がありますが、これが緩和化される可能性が高いというものです。
すると、日本国内でこの手の製品が出回ることになりますよね。
いくら出回っても、表示があれば買わなければ良い、となるのですが・・・。
アメリカでは、遺伝子組み換えの「表示」を「不当な貿易制限」であると位置づけ、それを「撤廃するためのルール」をつくる法律が、どうも可決されたようなのです。
政府は、「遺伝子組み換えの表示がなくなることはない」と言っていますが、この両国の考え方(法律)の違いが、きっちりと埋められるまでには至っておりません。
ですから、もし、日本もアメリカもTPPに加盟したら、遺伝子組み換え表示のない製品が出回る可能性が高いと考えられます。
さらに言えば、成長ホルモン剤とか、わけの分からない薬をガンガン打たれた牛やブタが出回るということなんですよね。
正直、かなり、イヤなんですけど・・・。
これは、政府の勇み足というか、もっと議論を深めるべきだったと思います。
おわりに
これまで、アメリカからの圧力で仕方なくTPPに参加しようとした日本。
ところが、トランプさんが大統領になることになって、TPP撤回がほぼ確実になりました。
トランプさんが、TPPから撤退する最大の理由は、どうやら、海外から大量の労働者が入ってくるのを防ぐためのようです。
日本は、思いっきりハシゴをはずされたわけですが、アメリカ抜きでも加盟するしかないのでしょうね。
では、また。
<ザックリまとめたシリーズはこちら>