メル友に逃げられ、某女性ブロガーさんにTwitterでブロックされ、実家でもイライラすることがあって、精神状態が落ち着かない日々が続いていた。以前はメル友に愚痴っていたのだが、その相手がいなくなったため、精神的にイライラしていた。
そのため、数日前から、帰宅後、私服に着替え、明日会社に着ていくスーツやワイシャツなどを持って一泊約5,000円のビジネスホテルに泊まっていた。毎日が旅行気分で気持ち良かった。
普段、出歩かない夜の街を徘徊し、居酒屋で酒を飲み、ホテルに戻り、酔いながらノートパソコンで下書き保存してあったブログ記事を手直ししたり、だらだらとブログを読む日々を楽しんでいた。
昨日は残業で疲れていたため、ホテル近くの和食料理屋で下書き状態のブログを修正しながら、遅い夕食を食べ、ホテルに戻った。エレベーターに乗ると、閉まる直前に足音が聞こえたので、開閉ボタンを押して待つと二人組の女性が乗ってきた。最初にエレベーターに乗ってきた女性は毛先が内側にカールしているショートヘアーで青い服を着た年配女性で、次に乗ってきたのは黒髪ロングで鎖骨が見える茶色いニットみたいな薄手の服を着た若い女性だった。俺はその若い女性と目が合った。
目が合った時、「この人だ。」と直感的に感じた。
前に立つ二人の女性の内、長髪の女性を後ろからジロジロ見ていたのだが、髪がとにかく綺麗で、左腕につけていた細いチェーンにピンクの星がゆらゆら揺れているブレスレットが印象的だった。左手の薬指には指輪がなかったので、たぶん独身だと思う。
俺は10階だったが、彼女たちは8階を押していた。8階でエレベーターが止まり、先に年配の女性が降り、次に若い女性も降りた。彼女たちが左に曲がっていく中、エレベーターが閉まる。
と思ったら、なぜかエレベーターが開き、さっきの若い女性が乗ってきた。
「お一人ですよね?」とその女性が訊ねてきたので、俺はすぐに「はい。」と答えた。
今でも不思議なのだが、目が合った時から、全部決まっていたような気がした。俺が辛い時、いつも女性が助けてくれる。今回はこの女性だと根拠のない確信を持っていた。
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そのまま、自己紹介もせず、その女性を俺の部屋に招き入れた。
彼女をベッドに押し倒し、目を合わせ、キスをして……。
俺は自分が中二病だと自覚がある。その時もドラマの主人公みたいになりきって、ことを進めたのだが、そのまま順調に終わってしまった。正直、腕も背中も辛かった。こんなに体力使うものだったかと驚かされ、自分が老いたことを痛感させられた。
彼女がシャワーを浴び、ドライヤーをゴーゴー鳴らして髪を乾かしている間、俺はテレビをつけ布団に入ったままスマホでブログを読んでいた。
冷静を装ってはいたが、内心この後、どうすればいいのだろうか?と動揺していた。彼女の出方を伺っていたのだが、彼女はパンツを拾い上げて穿きだした。そのまま、服を着て黙って部屋を出て行くパターンだなと思ったら、パンツだけ穿いて、ベッドへ上がり、布団に入って俺の横で一緒にテレビを見始めた。なぜだか、俺にもたれかかっている。
正直、この状況を俺は理解できなかった。俺は彼女のことをよく知らない。それどころか名前すら知らない。会話らしい会話もしていない。
このまま、泊まっていくのかと思った瞬間、ベッドの下に落ちていた服の下から何かのドラマの主題歌だと思われる音が聞こえた。彼女のスマホが鳴ったのだ。慌てて彼女はベッドを降りて、スマホに出る。スマホから漏れてくる声は小さかったが女性だった。たぶん、エレベーターで別れた年配女性だと思う。彼女は「うん。うん。」と相槌ばかりで、話の内容はよく分からなかった。
電話が終わると、慌てて着替えだし、何も言わずに一礼して部屋を出て行った。部屋に取り残された俺はただただ唖然するしかなかった。
結局、俺は最後まで彼女の名前を聞けなかったし、電話番号もメアドもLINEも教えてもらっていない。たぶん、二度と会うことはないだろう。
俺の傷心旅行は意外な結果で終わってしまった。こういう非現実的なことが本当に起きてしまうと、現実に帰りたくなる。
実家の件は解決していないが、俺の中では消化できたので、今日はホテルに行かずに家でこれを書いている。
これはフィクション(作り話)である。