私的な旅行で長野県に滞在中の天皇、皇后両陛下は17日、同県阿智村にある「満蒙開拓平和記念館」を訪れ、現地での体験を語り継いでいる80~90代の引き揚げ者らと懇談した。

 戦前、中国東北部(旧満州)に27万人とされる日本人が開拓団として渡ったが、敗戦後に多くが捕虜となり、収容所で飢えや疫病などで犠牲になった。長野県は全国最多の約3万3千人を送り出したという。

 終戦後に苦労しながら帰国したという男性に、皇后さまは「よくお苦しみに耐えてくださいましたね」と声をかけた。天皇陛下は「こういう歴史があったことを、経験がない人たちに伝えることが大切だと思います。そういうことを経て今の日本が作られたわけですから」と語りかけた。

 その後、同県飯田市の「りんご並木」を訪れ、地元の中学生が収穫する様子を見守った。天皇陛下は中学生たちに「これからの未来を有意義に過ごされますように」と話しかけていた。

 両陛下はかねて旧満州などからの引き揚げ者に心を寄せ、開拓団が戦後に入植した長野・軽井沢の大日向地区、栃木・千振地区を訪れたことがある。(島康彦