国際刑事裁判所から脱退相次ぐ 裁判所の信用低下に懸念

戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所からアフリカ各国の脱退表明が相次ぐなか、加盟国の総会が開かれ、訴訟がアフリカに偏り過ぎているという批判が上がる一方、裁判所の信用が低下することに懸念が広がっています。
オランダのハーグにある国際刑事裁判所は、戦争犯罪や人道に対する罪などを裁く唯一の常設の裁判所で、現在、日本を含む124か国が加盟しています。

ところが、先月、スーダンのバシール大統領の逮捕に応じなかったことで批判を受けた南アフリカに続き、ブルンジも国内の政争に絡む殺人や弾圧について裁判所が捜査に乗り出したことに反発して脱退手続きを始めました。
さらに、ガンビアも脱退を表明しています。

16日からハーグで始まった加盟国の年次総会で、南アフリカのマスサ法相は、裁判所の訴訟案件がアフリカに偏り過ぎていると批判したうえで、「アフリカ各国の不信感を除かないかぎり、公正な裁判所としての信頼を取り戻すことはできない」と述べました。

総会の議長を務めたセネガルのカバ法相は「脱退表明した国には思いとどまってほしい。戦争犯罪が繰り返さないよう1国1国の協力が重要なのだ」と述べて、加盟国の結束を求めました。

脱退表明が相次ぐ背景には、自国が捜査や審理の対象になるのを避ける狙いがあるという指摘もあがっていて、今後、脱退がさらに増えれば、裁判所の信用や影響力が低下しかねないという懸念が広がっています。

ロシアは加盟せず

ロシアのプーチン大統領は16日、ICC=国際刑事裁判所への加盟はしないとする決定を行いました。今後、ロシア外務省が国連の事務総長に必要な通知を行うとしています。
ロシアは、ICCの設立条約に2000年9月に署名をしていますが、国際安全保障の問題については、国連の安全保障理事会を重視する立場から批准には慎重で、加盟はしていませんでした。
さらに、ロシア大統領府のペスコフ報道官は地元メディアに対し、ICCがロシアによるクリミア併合をロシアとウクライナの軍事紛争と位置づけたことについて、「ロシアの立場や現実と相反する。クリミアの住民が住民投票で意思表示をしたものだ」と批判しました。