■第1次大戦の不条理、兵士の視点で
第1次世界大戦を描いたフランス人の作品。最初の近代的な戦争といわれるこの大戦は、戦車や飛行機、化学兵器などが広く使われ、過去の戦争とは様相が一変した。前線では長い塹壕(ざんごう)が掘られ、多くの兵士が泥だらけの劣悪な環境でドブネズミのように暮らし、長期戦を続けた。そのありさまを、底辺の兵士たちの視点からとらえている。
自分が経験してもいない昔の戦争を、現代に生きる者はいかに伝えるのか。そんな課題に著者は想像力を駆使することで向き合っている。
ただし、過去を細部まで写真のように再現しようとしたり、人物の演技の細やかさで臨場感を伝えたりするような種類の想像力ではない。むしろ、ざらざらとした手触りのまんが的な描線で、人のたたずまいや状況をシンプルに描き、冷徹なナレーションと組み合わせることで、読者側の想像力を引き出そうとする。
描かれないもの、行間にただようものが、強い説得力を発揮する。そんな含みの多い表現によって、人間同士が殺し殺される戦争の本質的な不条理が浮き彫りにされ、現代の我々の世界にも響き合う。
大判で見応えも十分。1コマ1コマじっくり時間をかけて読みたい作品だ。
◇
[訳]藤原貞朗 共和国 3564円