理化学研究所や米ソーク生物学研究所などのグループは、神経細胞など分裂が止まったマウスやラットの細胞に、狙ったとおりの遺伝子を組み込むゲノム編集技術を世界で初めて開発したと発表した。従来の手法では、分裂する細胞しか組み込めなかった。生物学研究所の鈴木啓一郎研究員(分子生物学)は「脳や心臓、目などの分裂しない細胞が関係する遺伝病の治療に応用できる可能性がある」と話している。
成果は16日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載される。
細胞は分裂し増殖するが、神経や心臓などの細胞は途中で分裂をやめる。ゲノム編集技術は、狙った遺伝子を切り取ったり組み込んだりする手法で、医療や農業などのさまざまな分野への応用が期待される。ただ、遺伝子組み込みは、分裂する細胞で起きるDNA修復の現象を利用するため、分裂が止まった細胞には組み込めないのが課題だった。
研究グループは、DNAを修復する別の仕組みを利用してマウスの脳の神経細胞に、狙った遺伝子を組み込むことに成功した。この仕組みは分裂する細胞と分裂しない細胞に共通して起こり、いずれの細胞でも遺伝子組み込みが可能という。【畠山哲郎】