運転開始からまもなく40年となる福井県の関西電力美浜原発3号機について、原子力規制委員会はきのう、最長で20年の運転延長を認可した。

 認可は関電高浜原発1、2号機に続き3基目だ。東京電力福島第一原発事故を機に、原発の運転期間は原則40年とされ、延長は例外だったはずだ。原則がなし崩し的に形骸化することを強く危惧し、改めて反対する。

 40年以上の運転は米国や欧州で例があるものの、取り換えられない原子炉容器の劣化などで、安全性が低下するのでは、との懸念は根強い。

 美浜3号機では04年、11人が死傷する蒸気噴出事故が起きた。長年にわたる点検漏れが一因だった。原発が古くなれば、より慎重な保守管理が求められる。運転延長によって、関電が背負う責務はいっそう重い。

 関電は地震の揺れの想定(基準地震動)を引き上げ、20年春までに耐震工事をほどこすという。ケーブルを燃えにくくするといった対策も講じる。

 運転延長に伴う費用は3基で3800億円を超す。新規制基準で義務化されたテロ対策施設の建設費も別に加わる。事故前なら100万キロワット級の原発の建設費に匹敵する水準だ。

 関電はそれでも「経済性はある」とし、3年後に稼働40年を迎える大飯原発1、2号機も運転延長を目指す構えだ。保有する11基中、廃炉にしたのは最も古かった美浜1、2号機の2基だけだ。3号機存続の背景には、福島の事故前に後継機への建て替えを約束していた地元に対する配慮ものぞく。

 これでは福井県の若狭湾沿いに、古い原発が林立する状態が続く。電力会社の経営論理だけではなく、国全体の事故リスクを下げる観点から、廃炉を選択していくべきではないか。

 規制委の姿勢も疑問だ。

 高浜、美浜の3基とも、運転開始から40年の期限内に認可されないと廃炉になる可能性があった。規制委は他の原発より審査を優先させた上、重要機器の耐震性の最終確認は工事完了後に先送りした。時間切れを回避しようとした感は否めない。

 関電の原発内の使用済み核燃料貯蔵プールは満杯に近い。関電は中間貯蔵施設を福井県外につくるというが、具体化のめどは立っていない。課題を先送りしての運転延長は無責任だ。

 福島の事故を経験し、原発に対する日本社会の視線は変わった。古い原発に頼り続けて、未来が開けるとは思えない。運転延長は本当に必要か。関電には再考を強く求めたい。