10日午前、東京の首相官邸は慌ただしい動きを見せていた。
午前7時55分、次期米国大統領に当選した共和党のドナルド・トランプ氏がニューヨークのトランプタワーの事務所で安倍晋三首相からの電話を受け、20分間会談した。この日トランプ氏が外国首脳からの電話を受けたのは安倍首相で4人目だ。しかし環太平洋経済連携協定(TPP)、在日米軍の駐留費負担の見直し、北朝鮮核問題など肝心の懸案事項は話題に上らなかった。それでも安倍首相が「トランプ氏のリーダーシップによって、米国がより一層偉大な国になることを確信する。できる限り早くお会いしたい」と述べると、トランプ氏は「素晴らしい提案」と応じ、17日にニューヨークで会談する方向で話がまとまった。15分後、安倍首相の側近、萩生田光一・官房副長官が記者室に入ってきて「会談することで合意した」と伝えた。
菅義偉官房長官は、記者たちからの「両者は以前、顔を合わせたことはあるのか」との質問に対し「少なくとも安倍首相の就任以降はない」と答えた。これまでは親交がなく、今から関係を築かなければならないというわけだ。電話会談もニューヨークでの首脳会談も、日本側から先に提案した。
一方、日本の外務省は、トランプ氏とのパイプがなく頭を痛めている。日本政府はこれまで「クリントン氏が当選する可能性が高く、その場合はオバマ氏の外交路線を踏襲する」とみていた。国民には「トランプ政権の誕生にも備えたい」と説明していたが、朝日新聞によると「クリントン陣営では誰が何を担当しているのか分かるが、トランプ陣営では誰が何をやっているのか分からない」という声が外務省幹部から漏れていたという。
日本の右翼の一部は、トランプ氏の当選によって、日本が平和憲法の改正など「普通の国」になる道を歩むのではないかと判断しているようだった。産経新聞は「日本はこれから自己防衛能力を強化する覚悟を決めなければならない」として「(トランプ氏が主張する韓国・日本の核武装容認論などに関連して)日本も具体的な防衛力強化案を策定することが不可避だ」と主張した。自民党議員も「これまで日本は米国の保護に満足していた。日本が自己防衛体制の構築に乗り出すチャンス」と述べた。