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ゴトーのブログ

プログラミングを学習したり、スポーツやゲームや漫画などの三度の飯より好きなことを語ったりするブログです。

ブシロードが手がけるキックボクシングイベント「KNOCK OUT」(ノックアウト)とは何か。その期待と不安を語ってみる。

キックボクシング スポーツ
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どうも、ゴトーだ。

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俺は三度の飯よりキックボクシングが好きでな。
K-1や中国のキックボクシングイベントの紹介をこれまで行ってきたが、どうやら12月に大きなうねりがもう一つできそうだということで、今回記事として紹介してみることにした。

それはブシロードが手がける新しいキックボクシングイベントの「KNOCK OUT」(ノックアウト)という団体だ。
このイベントには期待もあるが、それと同時に大きな不安要素もある。それについて書いていきたい。

KNOCK OUTとは

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KNOCK OUT(ノックアウト)というイベントについてまずは紹介していきたい。
最近SEOについてよく考えているせいか「KNOCK OUTだと検索がヒットしづらいけど大丈夫か」という余計なお世話をまず思いついてしまう当たり、大分ブログに毒されてきたようだ。

KNOCK OUTいうイベントはキックボクシングの試合を行う新興格闘技イベントで、あのブシロードが運営しているらしい。
ブシロードといえば、テレビ東京のアニメのCMで流れるヴァンガードなどのトレーディングカードゲームのイメージしかなかったが、新日本プロレスを買収するなど最近は格闘技にも乗り出しているらしい。

格闘技団体を異業種の企業が運営するというのは国内だとあまりイメージはないが、UFCを運営していたズッファ社はカジノホテルの経営が元だし、Bellatorもバイアコムという大企業が運営しているので、海外だと割りと一般的な流れなのかもしれない。
格闘技というと黒い噂がつきない業界だから、ブシロードのような異業種の企業が入ってくるのは望ましいことだとは思う。

ブシロードの資金力がバックにあるからか、有力選手を創立段階から確保していて、なおかつ割りと大きめの会場でイベントを開催する予定ということで、一部では微妙に注目されている。
もっとも一般メディアでは見かけないし、世間的には知られてないというのが現状だろう。

キックボクシングとは

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キックボクシングという競技は日本でも海外でもマイナースポーツだ。
同じ格闘技でいうとボクシングは世界的に行われていてオリンピック種目にもなっているし、総合格闘技はUFCの影響で競技人口がかなり増えてきている。

K-1が日本や韓国で人気を得たが、それによってメジャースポーツになったという実感もないし、身の回りでキックボクシングをやっている人なんて出会ったことはないから、おそらく競技人口は少ないのではないか。K-1もスポーツとして人気が出たというより、イベントとして人気が出たから一過性のものに過ぎない。

というよりK-1が実質的にキックボクシングだったということ自体あまり知られていないんじゃないのかとすら感じる。
俺のオカンくらいの世代だと「真空飛び膝蹴りの沢村忠」のイメージが強くて、毎週よく分からない外国人選手をつれてきては真空飛び膝蹴りでKOするうさんくさい競技という認識があるかもしれない。(別にキックボクシングを揶揄しようという意図はない)

謎の団体乱立と複数のルール

キックボクシングにおいて一番理解が難しくなっている要因は、団体の乱立と複数のルールが混在していることだと考えている。

ボクシングでさえ4つの世界団体が存在していて、どれが強いのかどうかわからないと言われているが、キックボクシングに至っては10や20に飽き足らず、おそらく世界で合計したら100以上の世界王者が存在しているはずだ。
もはや「WPMF世界王者」とか言われてもそれが凄いのか凄くないのか、定期的にチェックしている俺ですらサッパリわからない。

複数のルールとは主に2つの方向性に分かれていて、「肘・首相撲あり」と「肘・首相撲なし」の2つだ。
(首相撲とは相手の首をグローブで掴みながら、膝蹴りなどを腹や顔面に打ち込む技のこと)

おそらく皆さんがよく知っているであろうK-1は後者の「肘・首相撲なし」を採用している。
これは肘は相手の額や目元をカットさせるために使われることで流血が多く、テレビ向きではないと言われており、首相撲に関してもあまり詳しくない人からすると膠着しているよう見えるから、これまたテレビ向けにルールから排除している。

ただ、もともとキックボクシングというのは日本の空手家がムエタイを倒すために生み出した競技ということで、本来は「肘・首相撲あり」が当たり前のものだった。
それがK-1を始めとしたエンターテインメント色の強い団体によって段々と排除され、今では「肘・首相撲なし」がスタンダードになりつつある。

正直この時点で多くの読者が脱落している気がするので、いかにキックボクシングが一般受けしないかが書いていて痛感させられる。

KNOCK OUTは肘・首相撲ありを採用

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そんな中、KNOCK OUTは「肘・首相撲あり」の方のルールを採用している。
最近の潮流からすると見慣れないもので、最初はなぜかと思ったが、その要因は対戦カードを見てすぐに分かった。

後ほど詳しく紹介するが、KNOCK OUTの対戦カードは全て「日本人対決」か「日本人vsタイ人」という構図になっている。
K-1はヨーロッパから多くの選手を呼んでいることを見ると、やはりこれも対照的だ。

先程も説明したように、「肘・首相撲ありルール」の根幹には打倒ムエタイという始まりがある。
ムエタイは肘や首相撲を認めているどころか、それをメインに戦う選手もいるくらい、いかにもなムエタイ感がある。

KNOCK OUTはその打倒ムエタイのルーツを辿る団体で、比較的大きな規模の大会としてはかなり異例な取り組みと言える。
どうしても大衆に見せる時にはわかりやすく削ぎ落とさなければならないが、KNOCK OUTはありのままを届けようとしているのだ。

対戦カードも妥協一切なしの真剣勝負ばかり

対戦カードを一つ一つ見ていくと、「KNOCKOUT凄いじゃねえか!」という風になるのだが、いかんせんほとんどの選手が全く一般的に知られていないので、何が凄いのか伝えるのが大変だったりする。
これが中心選手だけでも認知されるようになれば、メディアとしても紹介しやすくなって状況は変わると思うのだが。

例えばテニスの記事でマレーを紹介するのなら「世界ランキング1位」といえばそれだけで強いのが誰でも分かるが、キックボクシングの場合「WPMF世界王者」みたいな謎の肩書になってしまうのが障壁になっている気がする。

那須川 天心

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こいつは高校生3年生ながらキックボクシング団体RISEの王者だ。
まあキックボクシングは競技人口が少ないからかつては中学生で王者が生まれたりもしていて、ぶっちゃけ最初は眉唾だったんだが、試合を見たら本物だとすぐにわかった。

サウスポースタイルで、左のパンチ、キックのスピードが異常に早い。
それに対戦相手を見るとしっかりと強豪選手にも勝っていて、既にこの階級では日本最強なんじゃないのか?とも言われている。

ただ同じ階級ではK-1のスターである武尊がいて、あちらは女子ファンが大量にいるのに対して、那須川はむしろキックボクシングマニアからの支持が熱い。
大晦日に那須川が武尊戦を志願したが叶わず、「逃げている相手には興味がない」とマイクパフォーマンスで武尊のことを揶揄するなどかなり勝ち気なところも魅力的だ。

梅野 源治

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俺の一押し選手はこの梅野源治。
那須川は実は肘ありのルールを経験したことがなくて未知数なところが多いのだが、梅野は10月にムエタイのメジャー団体であるラジャダムナンスタジアムの王者になっている。

ムエタイのメジャー団体での王者獲得というのは一般に思われるよりもずっと難しくて、タイ人以外だとこれまでに7人しか獲得していない名誉ある称号だ。
戦い方をみていると日本人というよりも、むしろ歴戦のタイ人選手という感じで、タイ人と真っ向ムエタイの勝負をしても全く引けをとらない、もしかしたら日本人では唯一の選手かもしれない。

この二人の対戦相手がヤバイ!

さてようやく本題に入るのだが、この二人の日本人エースの対戦相手がガチでヤバイんだ。
どうせ初回大会だから弱い相手勝たせるんだろ、と思いきや二人とも負けが十分ありえる相手になっている。

梅野源治の対戦相手は…シリモンコン・PKセンチャイジム!
誰だお前、ってなるのが普通の反応だと思うが、こいつは梅野が獲得したラジャダムナンスタジアムの王者を2階級で制覇した強豪だ。
ただし「元王者」となっているからもうピークは過ぎているかもしれない。

そして一番やばいのが、那須川天心の相手で…ワンチャローン・PKセンチャイジム!
同じく誰だお前、となるところだが、なんとこちらは現役のムエタイ王者。

しかも那須川はこれまで肘ありルールを経験したことがなくて、初めてのルールなのに、タイの最強選手をいきなり連れてきちゃうってやばくねえか?

さすがにワンチャローン・PKセンチャイジムという名前はしらなかったが、経歴を見て俺はびびったね。
大事なエースである那須川に対して最強の相手を初戦からぶつけちゃうKNOCK OUTの心意気に俺は感服した。

何気にその他の対戦カードも凄い豪華

KNOCK OUTは全6試合と結構あっさりなボリュームなのだが、その全てが手抜きなしの豪華なカードになっている。
もっとも紹介しても名前を知られていない人ばかりなのでブロガー泣かせではある。

長島☆自演乙☆雄一郎 vs T-98

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唯一知られている選手が、この長島☆自演乙☆雄一郎だ。

「本業はコスプレイヤー、趣味は格闘技」と言い切り、コスプレファイターの異名でK-1を席巻した。
中でも大晦日の青木真也との試合は、漫画のような飛び膝蹴りでKOして、動画サイトで物凄い人気を博した。

実はK-1が崩壊してからは低迷していて、かつてのキレはもう残っていないように見える。
プロレス挑戦もしていたはずだが今はやめたのか、中国のキックボクシング団体などで何気に試合に出ている。

対するT-98は読み方に戸惑うが、タクヤと読む。
ムエタイゴリラというニックネームからしてテクニックはないけどフィジカルモリモリというイメージがあるが、実はかなり強い選手。

梅野源治と並んで日本人の現役ムエタイ王者で、鬼のようなフィジカルが武器。テクニックもしっかりある。
先日の試合では、外国人としては初めてのタイ現地防衛を果たしていて、自演乙よりも遥かに格上の選手。

順当に行けばタクヤの圧勝だろうが、自演乙は一発があるのでもしかしたら番狂わせが起こるかもしれない。

その他の選手たち

その他の試合もこれとほとんど同レベルの試合が組まれている。
ただ強いけれど、恐ろしく知名度のない選手ばかりなので、ここでは紹介しない。(大月晴明はK-1にも出ていたのでそこそこ有名かも)

もし興味がある人がいれば以下のリンクを参照して欲しい。


KNOCK OUTへの期待と不安

そしてようやく本題に入りたいと思う。

もしここまでちゃんと読んでくれているありがたい読者ならお気づきかも知れないが、KNOCK OUTの特徴というのは良くも悪くも大衆に迎合しないでマジな勝負を組むところにある。
ただその点に関してかなり懐疑的な考えを持っている。

実は俺はこれまでずっと陸上をやっていたのだが、それに絡めて話したい。

陸上競技において世間から圧倒的に注目されるのはオリンピックではなく箱根駅伝だ。
2日間にかけて合計12時間以上という異常に長い放送ながら視聴率を28%近く稼ぐモンスターイベントである。

しかし冷静に考えてみると箱根駅伝って別にさほどレベルは高くないんだ。
なぜなら箱根駅伝は「日本一の大学を決める大会」ではなくて、実態は関東学連主催の関東のみが対象の地方大会でしかない。

そして狭き門のように思われるが、20校が出場できて10区間あるので200人も出場できる。
これは武井壮も言っていたが、関東で200人が出場できる大会、と聞くと別に大したことないように感じられるはずだ。

それでも歴史的な経緯やテレビのバックアップもあって箱根駅伝を上回る陸上イベントは、おそらく世界中探してもないだろう。
つまり何が言いたいのかというと、陸上のような一定の競技人口と歴史ある競技であっても、選手のレベルとイベントの人気はほとんど比例しないということだ。

俺が思うにスポーツの楽しさというのは競技のレベルの高さではなくて、そのスポーツを通じてどれだけ周りの人と熱や話題を共有できるかだったり、そのイベントのスケールに非日常を感じられるかであったり、そういった曖昧なところにあるんじゃないかと考えている。

その点でKNOCK OUTというのはコンテクストが大きいイベントで、選手一人紹介するのでも前フリが必要なくらいだ。
俺のような個人ブロガーですら伝えるのにすごく苦労しているくらいで、これが一般メディアなら担当者がいかにKNOCK OUTが好きでも、取り上げてくれる媒体は少ないんじゃないのか?
それでは格闘技ファン以外に広がっていかないし、イベントとしての魅力につながらないように感じる。

実際にメディアのインタビューを見てもこのように語っている。

“強い者しか上がれない”というのが「KNOCK OUT」のコンセプトなので、そのコンセプトがブレないようにやっていきたいです。その上で木谷(高明、ブシロードグループ代表)が言っていましたが上位概念を作ること。上位概念を作るのであれば、やはり“最強”でないとダメだろうと思っています。いろんなところから「あそこのレベルは世界最高だね」「最強だよね」って言われるようにしていきたいです。

引用元: 会場演出にもこだわり独自の世界観を花澤社長、小野寺Pに聞く「KNOCK OUT」の全貌 - スポーツナビ

イベントとしての面白さよりも「選手のクオリティの高さ」に傾倒していて、それ以外の根拠というのを持ち合わせていないように感じた。

一方で期待と応援はしている

壮絶なディスのように見えるかもしれないが、これは世間に受け入れられるかどうかというと難しいと考えているにすぎず、別にKNOCK OUTが嫌いなわけでも失敗して欲しいわけでもない。むしろ猛烈に応援している。

KNOCK OUTがこのコンセプトを貫いたまま既存のキックボクシングファン以外からも受け入れられるようになれば、「やっぱりスポーツは質だよね」という流れになるかもしれないし、競技者にとってもそちらのほうが望ましいのは言うまでもない。

ただ結局のところスポーツイベントは大衆からいかに関心を持ってもらえるかが重要だと思うだけに、どうしても厳しいだろうな…と感じてしまうゴトーであった。