どうも、papaTECHのKYOです。
前回、自分の市場価値が計れるMIIDASに登録してみたという記事を公開しましたが、今回は、何故わたしが大手SIerから転職をしようと考えているか、自己整理も含めて書いてみようと思います。同じSIerの中では、一次受けであるために、給与面、労働環境面等々で恵まれているにも関わらず、わたしは転職します。
SIerへの就職を考えている学生さんに少しでも参考になればという思いと同時に、思考が偏っている可能性もあるため、諸先輩方はご指摘等頂けますと非常に幸いです。
大手SIer年収750万円のSEが転職すると年収がいくらになるか - papaTECH
<目次>
まずは、何故わたしが大手SIerに入社しようと考えたのか、その背景から振り返ります。
大手SIerに入社した理由
IT業界には、GoogleやAmazon、Yahoo!、楽天のようなWebサービス業界や任天堂などのゲーム業界、企業向けシステムを開発するSI業界、企業の経営課題をITを軸に解決策を提示するITコンサル業界、ネットメディア、Web制作などに分かれます。今では当たり前にあるスマートフォンやアプリ、facebook, twitter, Instagramなどもまだ日本で普及していない、もしくはこの世にに存在していませんでした。
その中で、何故SIerを選んだのか。
大学1,2年生のころ、情報工学を専攻していたわたしは、電気回路などのコンピュータ・サイエンスと言われるIT基礎知識や効率的に情報を探索するアルゴリズムを学び、それをC言語でプログラミングして、提出するなど、クソつまらない授業を受けていました。カッコよくて楽しいと思っていたITが、つまらい。本当につまらない。思っていたのと違う。プログラミングは向いていない。そう感じていたわたしは、IT業界への興味が失せ始めると同時に、何をしたら良いのだろうと将来への不安を抱えていました。
大学3年生になり、就活を意識し始めたころ、既にプログラミングに嫌気がさしていたわたしは、システム開発における要件定義という上流工程を経験できる中堅SIerのインターンシップを見つけ、申し込むことにしました。今思うと、別の業界のインターンを受けていれば、その後の人生が変わっていたかもしれません。
2週間のインターンであったのですが、そこでは、顧客(インターン会社社員が顧客役を演じている)が感じている課題に対してSEとして要件をヒアリングし、最適なシステムを要件定義書としてまとめて、提案するものでした。
その間は、毎日朝9時から18時まで、資料の読み込みやヒアリング、要件定義書として画面イメージや帳票イメージを作成、顧客へプレゼンするなど、今考えても中々リアルなプログラムになっていました。
このインターンは、想像以上にやり甲斐を感じることができた楽しい2週間でした。大学では、パソコンに向かってプログラミングするばかりだった中で、SIerでは打合せやヒアリング、プレゼン、チームワークなどコミュニケーションを主体とする業務であったのです。
これを機に、わたしは上流工程を強みとした大手SIerを目指すことを決めました。
転職したいネガティブな理由
SIerで上流工程を中心としたシステム開発に従事し、いずれはPMになりたいと考えて入社したわたしですが、7年間のキャリアを経ていく中で、転職をしたいという気持ちが大きくなってきました。
顧客の事業パートナーにはなれない
大手SIerの多くは、「顧客の事業パートナーになる」ということを言います。わたしが入社する前から言っていましたが、今も言っています。事業パートナーとは、供にビジネスを考え、供にリスクを取ることだと、わたしは捉えており、事業パートナーになるには、SIのビジネスモデルでは限界があると考えています。
SIは、顧客が求めるシステム開発するのですが、そのためにかかる工数(期間×人数)を事前に見積り、完了後にそれを対価として頂くのが、基本的なモデルです。成果の価値に対してお金を頂くのではなく、開発にかかる人の時間に対してお金を頂くのです。つまり、最初の見積に不備がなく、開発プロジェクトを順調に遂行することが出来れば、基本的に利益は出るのです。(実際には、顧客からの無理な要件追加など様々なリスクはあるので、契約面でリスクヘッジをしたり、PMがリスク管理を行います)
しかし、顧客にとっては、システムを活用して、収益を上げることや業務を効率化することが目的であるため、システムが完成した後がスタートになります。
もちろん、顧客の成長がなければ、システム開発案件もないわけで、その意味ではSIerも顧客の成長を考えますが、各プロジェクトやシステムにおける目的が一致しないのは致命的です。
SIerがSIというビジネスモデルから脱却しない限り、事業パートナーになることはありえません。
顧客のシステム部門に依存する
業種にもよりますが、顧客の中には、営業部や企画部、商品部、製造部など様々な部署があります。その中でも、一部の企業を除いてシステム部門は特に受け身の方が多いと感じています。(もちろん、やり甲斐を持って取り組んでいる方もいます)これは、その会社での役割や位置づけなどによるものだと考えています。多くのシステム部門は、売上を上げるミッションや機能を持っておらず、コストセンターとして位置づけられており、他部門からの依頼に基づいてシステム開発等を行います。そして、SIerの多くは、そのシステム部門を窓口として仕事をすることになります。
SIerは、自ら必要とするサービスやシステムを自由に開発することが許されません。あくまで顧客が求めるシステムやサービスを開発することがミッションです。もし顧客が気づいていない事業課題とそのソリューションとしてのシステムを提案したとしても、顧客のシステム部門にやる気がない場合は、実現するのは難しいでしょう。
顧客のためを思って行った提案も、「仕事を増やしてほしくない」というスタンスを感じ取れてしまうと、何のためにやっているのか、わからなくなります。そしてこの問題は、そのシステム部門の位置付けや個人の仕事に対する意識やモチベーション等に大きく依存するため、非常に根深いものです。
技術的なスキルを積み重ねられない
SIでは、ある程度成熟しており、標準化・分業体制が基本となり、機能別、役割別に分けられたチームで業務を遂行し、各チームが開発した機能を段々と結合していくことで、1つのシステムが完成します。
大手SIerでは、入社1,2年目の若手であったとしても、協力会社(BP)という外部の委託会社の方々を束ねるリーダー的な役割を任せられる事が多くあります。具体的には、進捗管理や課題管理、品質管理などです。部署によっては、プログラムを一切書くことも見ることも無いところもあります。
良く言えば、若くからマネジメント経験を積むことができ、マネジメントスキルに特化することが出来るわけですが、技術的な経験、スキルが浅い中では、エンジニアとして危うさを抱えていると言えます。仕様がわからず丸投げする、BPの言いなりになる(ミスや手抜きを見抜けない)、障害時の切り分けや調査が出来ない、など、プロジェクトの中で様々な問題が出てきてしまいます。
また、業界構造上の問題もあります。基本的にはBPのエンジニアやプログラマーの方が単金(1ヶ月一人あたりの料金)が安く、プログラミング経験、スキルがあるため、大手SIerはBPに委託することで価格を抑えようとします。この構造は建築業界とよく似ていると言われています。そのため、大手SIerのSEが同領域で価値を発揮するは、スーパーエンジニアを除いて非常に困難です。
転職したいポジティブな理由
ネガティブな理由ばかり色々と書いてしまいましたが、ポジティブな理由ももちろんあります。
自社サービスにコミットしたい
エンドユーザに直接提供するtoCサービスにコミットし、そのサービスを通してユーザの生活に価値を提供したいと考えています。なぜなら、どうすればその価値を最大化出来るか、ユーザ視点、事業視点で考え、そのための仕組みとしてシステムを開発することに全力を注げる環境に身を置くことで、圧倒的なやり甲斐と誇りを得られると思うからです。
特に最近ではシェアリングエコノミーやFintech、Edtech,VR, AI, ドローンなど様々なサービスやテクノロジーが台頭してきています。これらの新しい技術を取り入れ、自社サービスの拡大、成長を実現できればエンジニアとして非常に面白いのではないでしょうか。
エンジニアとしてスキルアップしたい
プログラミング学生時代の考えとは逆のようにも思えるのですが、エンドユーザ向けの目に見えるサービスを開発するためのプログラミングは、全く苦ではないのです。個人としてWebサイトやWebサービス作ったこともあるのですが、その時は食事や睡眠を忘れて没頭し、布団に入っても実装方法を頭の中でシミュレーションして、起きたらすぐに開発したくなる、そんな状態でした。
また、大手企業であっても倒産やリストラが珍しくない世の中です。SIer業界では大手が中堅を買収していますが、今後はデザイン会社や広告代理店、コンサルティングファームによるSI領域進出により、大手の淘汰が進むことになるでしょう。そんな中で生き抜くには、個人としてのスキルを確固たるものとし、起業家やフリーランスとしても生活できるようになることが非常に重要だと思います。
そこで、企画、UI/UXデザイン、フロントサイド、サーバサイド、インフラ全てを担うことが出来るフルスタックエンジニアを目指し、企業に依存しないエンジニアになりたいと考えています。
まとめ
転職したい理由を言語化する中で、改めて自分の気持ちを整理、再認識することができました。現実はかなり厳しいとは思いますが、これらを踏まえて転職活動をし、新たなキャリアを築いていきたいと思います。
SIerで生きる道
このままだとSIer Disに聞こえ、SIを目指す学生さんが不安しか持てない可能性があると思いますので、最後にフォローを少し付け加えておきたいと思います。
今後のSI市場は、減少していくと言われていますが、一部の先進的企業や官公庁、医療業界向けなどは残るでしょう。クラウドやSaaS等によってIT技術がコモディティ化していっても、事業としてオリジナリティが必要な業務や機能、サービスについては個別開発が必要になり、その際にSIが求められます。
その中で生き残る道は、2つあると思っています。1つは、その時代その時代に最先端の技術に特化したエンジニアになる道。今で言えば、AIやロボティクスなどでしょうか。もう一つは、特定業界の業務に精通し、プロジェクトマネジメント技術を極めつつ、海外への展開を目指す道です。アメリカではユーザ企業にいるエンジニアが内製で開発をすすめることが主流であったりはしますが、ヨーロッパ圏、中南米などSIのニーズはまだまだあります。
これらが出来る方は、 SI業界に限らず、必要とさせるエンジニアとして生きる事が出来るでしょう。
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