収賄容疑で逮捕の阪大大学院教授 3年前から無断で共同研究

収賄容疑で逮捕の阪大大学院教授 3年前から無断で共同研究
大阪大学大学院の教授が、建設会社との共同研究で会社に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして収賄の疑いで逮捕された事件で、教授は、3年前から大学に無断で共同研究をしていたことが警察への取材でわかりました。警察は、大学院の研究室などを捜索して詳しいいきさつを調べています。
大阪大学大学院・工学研究科の教授の倉本洋容疑者(57)は、正規の手続きを取らずに建設会社2社と共同研究を行い、得られたデータを会社側に提供するなどの便宜を図った見返りに現金およそ210万円を受け取ったとして収賄の疑いで警察に逮捕されました。

倉本教授は、贈賄の疑いで逮捕された建設会社の社員2人とともに、16日、身柄を検察庁に送られました。

警察は、3人が賄賂の授受を認めているかどうか明らかにしていませんが、容疑を裏付けるため、16日午後、大学院の研究室などを捜索しました。

これまでの調べで、倉本教授は大学側に届け出たうえで5年前、贈賄側の会社と共同研究を始めましたが、3年前からはこうした正規の手続きを取らずに無断で研究を進めていたことが警察への取材でわかりました。

無断で共同研究をするようになって以降は、研究の費用などを会社から自分の口座に直接、入金させていたということで、警察が、詳しいいきさつを調べています。

共同研究を大学に無断で進める

大阪大学によりますと、倉本教授は今回の贈収賄事件の舞台とされる共同研究を大学に無断で進めていたということです。

企業と共同研究を行う場合、経費や研究を手伝う学生の人件費などを企業側が負担することになり、金銭的なやり取りが生じるため、大阪大学の規約では公正さや透明性を確保する目的で事前に大学に届け出て、協議をへたうえで企業と契約を結ぶことになっています。

しかし、今回の共同研究は届け出がなく、契約自体も交わされていなかったため、いつ、どのような実験が行われたのかや、経費がいくらかかったか、それに倉本教授と建設会社との間にどんな関わりがあったのかも把握できていないということです。

倉本教授は先週から大学を休み、講義を休講にしていたということで、大学は今後、警察の捜査に協力しながら事実関係を確認していきたいとしています。

大阪大学の鬼澤佳弘理事は、「逮捕されたと聞いて驚き、残念に感じている。自由に研究が行える環境をつくってきたが、同じようなことが起きないよう注意喚起を進めていきたい」と話しています。

一方、大阪大学では、去年、倉本教授とは別の教授ら3人が、10年以上にわたって2億円を超える研究費を不正に経理処理していたことが明らかになっています。

文部科学省の有識者会議は、倉本教授が逮捕された15日、全国に86ある国立大学の昨年度の業務運営などの評価結果を公表しましたが、大阪大学は5段階評価で下から2番目と低く、「法令順守の点で改善すべき課題がある」と厳しい指摘を受けていました。

教授の逮捕に学生は

大阪大学大学院の教授が収賄の疑いで逮捕されたことについて、大学の工学部の男子学生は、「非常に残念です。大学の権威がけがされたと思います。まだ、疑いの段階なのでやっていないことを祈るばかりです」と話していました。

また、教授の講義を受講している工学部の男子学生は、「冗談も交えながら授業を進める、面白くて優しい人でした。ただ、今回のことは、やっていいことと、やってはいけないことの分別がつかない恥ずかしい行為だと思います」と話していました。