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子宮頸がんワクチンデータ捏造疑惑「科学的議論不足」…信大に研究再実験要求
子宮 頸 がんワクチンの副作用などを研究する厚生労働省研究班代表、池田修一・信州大学教授の発表にデータ 捏造 の疑いが指摘された問題で、同大の調査委員会は15日、証明されていない実験結果を証明されたかのように伝え、誤った情報が広まったとする調査結果を発表し、実験のやり直しとその結果の公表を求めた。
ただ、意図的なデータの捏造や改ざんなど不正行為はなかったと結論づけた。これを受けて、同大の浜田 州博 学長は同日、池田教授と、研究に携わった別の男性教授、男性特任教授の計3人を口頭で厳重注意した。
子宮頸がんワクチンをめぐっては、健康被害を訴える女性63人が7月、国と製薬会社2社に総額約9億4500万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京、大阪など全国4地裁に起こした。こうした中、池田教授の研究は同ワクチンが副作用を起こす仕組みを解明し、治療法の開発にもつながると大きく注目されていた。
池田教授の発表は今年3月、厚労省内で行われた。マウスに子宮頸がんなど3種のワクチンと生理食塩水を接種した結果、子宮頸がんワクチンのマウスの脳にだけ異常が起きたと説明した。
しかし、月刊誌が実験手法やデータに疑問を投げかける記事を掲載。同大は9月、外部有識者5人で構成する調査委員会を設置し、調査を行ってきた。
調査結果によると、実験は各ワクチンをマウス1匹ずつにしか接種しておらず、そのマウスの脳を調べる実験でもなかった。これは予備的な実験だったが、公表段階では証明された結果のように伝えられた。
男性特任教授から男性教授、池田教授へと報告され、公表される過程で「科学的な議論と意思疎通をはかる努力をしていれば不正の疑いは生じなかった」とした。
池田教授は、名誉を傷つけられたとして月刊誌の発行元と執筆したジャーナリストに損害賠償などを求める訴訟を起こしており、弁護士を通じ「捏造も不正もなかったことを実証していただき、たいへん 安堵 した」などのコメントを発表したが、反省や謝罪の言葉はなかった。
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【子宮頸がんワクチン】 「サーバリックス」と「ガーダシル」の2種類がある。定期接種の対象は小6~高1の女子。国は2010年11月に接種費用の補助事業を始め、13年4月に定期接種化したが、接種後の被害の訴えが相次ぎ、同年6月に積極勧奨を中止した。