平成11年9月11日新規作成





【質問】

 法令等において、「及び」と「並びに」、「又は」と「並びに」はどのように区別して使われているのですか。






【回答】

 「及び」と「並びに」は、法令用語としては厳格に区別して使われています。地方公共団体向けの法令の書き方・読み方などを解説した本もありますし、公用文書の書き方に関する本などにも解説があると思います。
 とりあえず、手元にある司法研修所「8訂版 刑事判決書起案の手引き」法曹会から引用しておきます。

「併合的接続詞の『及び』、『並びに』と選択的接続詞の『又は』、『若しくは』については、法文中における用法と同様の扱いをするのが通例である。すなわち、名詞等を併合的に並列する場合において、これらが二個であるときは、常に『及び』を用い、三個以上で同一の段階における並列であるときは、初めの方は読点でつなぎ、最後の語句とその直前のものを『及び』で接続させ、三個以上でその概念に大小があるときは、小さい方の連結には『及び』を、大きい方の連結には『並びに』を用いている。また、名詞等を選択的に並列する場合において、これらが二個であるときは、常に『又は』で結び、三個以上で同一の段階における並列であるときは、初めの方は読点でつなぎ、最後の語句とその直前のものを『又は』で接続させ、三個以上でその概念に大小があるときは、小さい方の連結には『若しくは』を、大きい方の連結には『又は』を用いている。」

 何とも面倒な話で、どうでもいいようなことですが、1×(2+3)をどういう順序で計算するかは決まった型があり、その型を正確に理解しておかないと答が間違ってしまうのと同様、「及び」「並びに」も正確に理解しておかないと間違った法令の読み方になる場合があります。


 「又は」「若しくは」の一例として、刑事訴訟法321条1項2号前段を見てみましょう。

「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神【若しくは】身体の故障、所在不明【若しくは】国外にいるため公判準備【若しくは】公判期日において供述することができないとき、【又は】公判準備【若しくは】公判期日において前の供述と相反するか【若しくは】実質的に異なった供述をしたとき」

 「又は」が大きな連結を示すわけですから、
(A)「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」
(B)「検察官の面前における供述を録取した書面については、公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述をしたとき」 という2つの文章が、「又は」によって連結されているわけです。

 今度は、(A)の中の「その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため」という部分を分析すると、「・・、・・、・・若しくは・・・」のパターンですから、
「その供述者が
(A1a)死亡
(A1b)精神若しくは身体の故障
(A1c)所在不明
(A1d)国外にいる
ため」
と分けられます。
 なお、(A1b)にも更に「若しくは」が使われていますが、これも分析すると、
(A1bア)精神の故障
(A1bイ)身体の故障
のいずれか、という意味です。
 結局、
(A1a)死亡
(A1bア)精神の故障
(A1bイ)身体の故障
(A1c)所在不明
(A1d)国外にいる
の5つの要件の少なくとも一つを満たし、その結果、「公判準備若しくは公判期日において供述することができない」場合に初めて、検察官調書が証拠となる、というわけです。

 非常に面倒な分析をして初めて、法文の意味が分かります。
 こうした理由もあり、法令は悪文だと言い切る人もあるでしょう。
 しかし、例えば、(A)「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」を、「又は」「若しくは」を使わずに正確に表現すると、次のように記載するしかなくなります。

 このように非常に膨大な量の文章を「又は」と「若しくは」を使って凝縮した結果、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」という法文の文章になったのですから、法文の文章が読みにくいのもある意味では仕方のないことと言わなければならないでしょう。




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