財務省は11月10日、国債と国の借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」が、9月末時点で1062兆円と、過去最多になったと発表した。
これを受けて大手メディアは「『国の借金』9月末で1062兆円 国民1人あたり837万円」(日本経済新聞)、「『国の借金』1062兆円 過去最大、1人837万円」(共同通信)などと報じた。
「国の借金」は3ヵ月ごとに発表されており、そのたびに「また借金が増えた」「日本国の財政はこのままでは破綻する」などと危機感が煽られ、あたかも雪だるま式に借金が増えているかのような情報が流されている。
もちろん、日本の財政赤字が問題ないと言うつもりはないし、借金の一方で資産があるので、まだまだ借金を増やしても問題はない、という意見に乗るつもりもない。データを出す財務省も、ただ危機感を煽るだけでなく、正確な分析を示して、どうすれば「国の借金」を増やさずに済ませることができるのか、正直ベースの議論を喚起すべきだ、と感じる。
まずは財務省が常套手段としている「情報誘導」を指摘しておこう。共同通信の記事の後半にはこんなくだりがある。
「経済対策の財源として建設国債などを発行するため、2016年度末には1119兆円台を超えると財務省は見込んでいる」
統計の発表と共に財務省は「補足説明」という資料を配っているが、そこには28年度末(2017年3月末)の見込みとして1119.3兆円という数字が書かれている。9月末の実績が1062.6兆円なので、半年で56兆円余り増加を見込んでいることになる。本当に50兆円以上も半年で増えるのか。
答えを先に言えば、まず、あり得ない。
2006年度以降、「国の借金」の年間の増加率は5%を超えた例はない。
第二次安倍晋三内閣が発足した2012年末以降でみれば、12年度3.3%増→13年度3.4%増→14年度2.8%増と推移、今年3月末で終わった15年度はマイナス0.4%と、わずかながら減少に転じた。仮に来年の3月末に1119兆円になったとしたら、年率で6.6%増である。これまでの財政運営を変えて、よほどタガを緩めない限り、6.6%増という数字にはならない。
四半期ごとに発表している残高と、それぞれを1年前の残高と比べた増加率をグラフにしてみると、第二次安倍内閣以降、増加率は着実に低下している。今年3月末と6月末はそれぞれ前年同月比で0.4%のマイナスになった。9月末は増加したものの、1年前と比べて0.8%増である。
これを年率で6%を超す増加にするには、よほどの大盤振る舞いによる国債の大増発が必要になる。そんな財政運営を許すようだと、麻生太郎財務相や佐藤慎一財務次官は「無能」ということになってしまう。
実は、毎回、補足説明として公表している「見込み」がまともに当たった例はない。14年度の間は15年3月末の「見込み」を1143兆円としていたが、実際の数字は1053兆円だった。90兆円もズレたのだ。
15年度に入ると、性懲りもなく16年3月末は1167兆円になるという「見込み」を公表し続けたが、結果は1049兆円になった。ズレは何と118兆円である。
まともな見込みが作れずに予算が組めるはずはないのだが、毎年同じ事が繰り返されている。そして今は1119兆円という「見込み」が独り歩きしている。
日本のメディアは過去の実数よりも、将来どうなるのかという「見込み」を記事にしたがるので、財務省が作る過大な数字にすっかり捉われ、「借金が増え続けて大変だ」という記事を書くことになる。