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阪大教授を逮捕 210万円、共同研究で見返り

 企業との共同研究に絡んで便宜を図った見返りに賄賂として現金計約210万円を受け取ったとして、大阪府警捜査2課は15日、大阪大大学院工学研究科教授の倉本洋容疑者(57)=兵庫県宝塚市=を収賄容疑で、「東亜建設工業」(本社・東京都)主任研究員の樋渡健(ひわたしたけし)(43)=神奈川県藤沢市=と「飛島建設」(本社・同)担当部長の久保田雅春(57)=さいたま市=の両容疑者を贈賄容疑でそれぞれ逮捕した。

     倉本容疑者の逮捕容疑は、両社と耐震技術の共同研究を進めるにあたり、阪大の設備や学生を使って得た研究成果を不正に両社に提供した見返りとして、2014年10月下旬~今年4月下旬、樋渡容疑者から約120万円、久保田容疑者から約90万円を受け取ったとしている。倉本容疑者が管理する口座に現金が振り込まれていたとされ、ゴルフや先物取引など研究に関係ないものに使ったとみられている。

     共同研究をする場合、大学側と企業が契約を結ぶ必要があるが、倉本容疑者は両社と行う共同研究の申込書を大学側に提出せず、両社と勝手に研究を進めていた。大学と正式に契約を結べば、人件費などの必要経費は両社が大学側に支払うことになる。府警は共同研究の際に契約を結ばなかった点に着目しており、両社から倉本容疑者に渡った資金の流れを追っている。

     東亜建設工業のホームページによると、倉本容疑者の指導を受けながら進めた飛島建設との共同研究には、国土交通省の助成金が出ている。この研究成果は14年2月、一般財団法人「日本建築総合試験所」の建築技術性能証明を受けた。この証明は新規性や独自性のある技術を対象としており、屋内に入らずに耐震補強工事ができる工法として評価された。【池田知広、戸上文恵、宮嶋梓帆】

    日本建築学会賞など受賞

     倉本容疑者は建築耐震工学の第一人者として知られ、国内で最も権威がある建築賞の一つとされる「日本建築学会賞」を受賞。東日本大震災以降は、各地で耐震補強をテーマに一般向けの講演会も開いている。大阪大の関係者は「スペシャリストとして尊敬していたのに信じられない」「同じ研究者として許せない」と驚いた様子だった。

     大阪大のホームページや関係者によると、倉本容疑者はゼネコンの研究所の研究員や大学の助手を経て、1993年から建設省(現・国土交通省)建築研究所で研究員や研究室長などを務めた。2008年に大阪大大学院工学研究科の教授に就任。専門分野に関係する民間企業の取締役も務めている。これまでに日本建築学会賞(論文)や日本コンクリート工学会賞(功労賞)などを受賞した。

     倉本容疑者を知る男性教員は「学生の面倒をよくみる仕事熱心な人。部下や学生からも慕われていた。企業との共同研究に力を入れていたのは知っていたが、まさか汚職に関わるなんて」と驚いた様子。

     別の男性教授は逮捕の知らせに「えっ」と絶句。「(倉本容疑者は)学内の意見調整も献身的にこなす、頼りがいのある人物。信じられない」と話した。【道下寛子】

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