福岡市のJR博多駅前で起きた巨大な道路陥没事故から1週間が経った。ライフラインの復旧や穴の埋めもどし作業が終わり、きょうにも元のように通行が可能になるという。

 急ぎ対応にあたった関係者の努力は多とするが、事故は、地下空間を利用して快適な生活を享受している日々のくらしを、まさに足元から揺るがした。

 30メートル四方、深さ15メートルの巨大な穴。流れ込む濁った水。そばのビルの基礎がむき出しになった映像に、多くの人が驚き、恐怖を感じたに違いない。

 発生が早朝で、人への被害がなかったのは不幸中の幸いだった。だが、地中の浅い場所に埋められた上下水道管やガス管、NTT・九州電力のケーブルなどが一気に切断、損傷した。

 停電、断水、ガス漏れに加えて、固定電話も使えなくなり、周辺の商業施設やオフィスビルでは、一定期間、休業を強いられる店舗や会社が相次いだ。オンラインシステムが障害を起こし、入出金や振り込みができなくなった銀行もあった。

 事故は、市営地下鉄の延伸工事中に起きた。周囲を補強しながら岩盤を掘り進めていたところ、上部の地層から地下水が流れ込み、そのぶん、道路の直下に空洞ができたらしい。

 見過ごせないのは、同じ地下鉄工事で過去に2度、陥没事故が起きていることだ。うち1度は2年前に発生し、場所も400メートルしか離れていない。

 教訓はどう引き継がれ、その後の工事にいかされたのか。

 一帯はかつて湿地帯で、地下水を多く含む地層が広がっている。今回は遮水効果の高いシールド工法ではなく、工費が比較的安いナトム工法が採用されたが、土地の特性やコストの問題はどう検討されたのか。

 陥没のメカニズムの究明とあわせ、工事全般の検証、そして「次」の事故を絶対に起こさない対策が求められる。

 今回のような大規模なものは珍しいが、陥没事故自体は全国でたびたび発生している。特に多いのが、老朽化した下水道管の破損で起きる事故で、14年度だけで約3300件あった。

 現代社会において地下の活用は欠かせない。狭い地域にヒトとモノがひしめく都市部ではなおさらだ。今回の事故を機に、国や自治体、管理にあたる業者などは地下空間の安全性を総点検してほしい。

 停電の影響を最小限にとどめるバックアップシステムの強化など、企業独自の対策が大切なのも言うまでもない。自然災害への備えにもなる。