総合印刷会社「佐川印刷」(京都府向日市)の子会社の資金約4億円を不正流用したとして、京都地検が電子計算機使用詐欺容疑で逮捕状を取っていた佐川印刷元役員の男(63)が15日午後、逃亡先のフィリピンから日本に強制送還されることが、関係者への取材で分かった。元役員は地検に対し「(佐川印刷の)会長の裏金づくりのためだった」などと主張しているといい、地検は帰国次第、逮捕して裏付けを進める。
元役員は、財務や経理を担当していた2014年9月24日、子会社「エスピータック」(同府亀岡市)の銀行口座からインターネットバンキングで約4億円を不正に引き出し、だまし取った疑いが持たれている。
佐川印刷によると、元役員は2007~14年、取締役会の決議を経ないまま、エス社の印鑑を無断で使用するなどの手口で、総額約90億円を流用。シンガポールでのサーキット場建設(約54億円)などに流用したとされる。
元役員は社内調査に「自分の将来の資金を確保するためにやった」などと不正を認め、昨年1月末に依願退職。その後に出国していた。
地検は佐川印刷による告訴を受け、元役員の自宅などを家宅捜索し、昨年8月に逮捕状を取った。外務省は昨年10月にパスポートの返納命令を出したが元役員は応じず、フィリピン当局が今年10月に身柄を拘束していた。
関係者によると、元役員は今月2日付で地検に書面を提出。「頑張って(金の)回収を目指して動いていたのに、なぜ私が1人でやったことになるのか理解できない」などと記した。
佐川印刷とエス社の代理人弁護士は、元役員の主張について「(そのような)事実は一切ない」とのコメントを発表した。【花澤葵、鈴木理之】